カタール訪問に際して知っておくべきこと:ベールは不要、電子タバコは禁止
2022年12月18日まで続くFIFAワールドカップ・カタール大会で各国代表が熱戦を繰り広げている。舞台となったカタールの文化や、物議をかもした今大会のさまざまな規定はどんなものなのだろう。現地を訪ねる際のユニークな注意点をみてみよう。
イスラム国家であるカタールでは、政府も国民もイスラム教を基本とする法律や生活習慣、慣行を遵守している。FIFAワールドカップの開催にあたり、海外から訪れる人々を対象にしたさまざまなルールが設けられた。現地に足を運ぶ際はしっかりチェックしておこう。
海外から訪れる人々もイスラム教に配慮し、服装について一定の配慮が求められる。現地当局が不適切であると判断した場合はスタジアムへの入場が拒否されることもあるので気を付けよう。
例えば、カタールではLGBTQ+(性的マイノリティ)コミュニティへの支持を表すレインボーカラーを身に着けることは避けた方がいいとされている。実際、アメリカ人ジャーナリストのGrant Wahl氏は、レインボーカラーのTシャツを着ていたことを理由にスタジアムへの入場を拒否されてしまった。
隣国サウジアラビアとは異なり、カタールでは女性のヒジャブ(イスラム教のベール)着用を義務付けていない。とはいえ、バスなどの交通機関を含め、公共の場では肩や膝が隠れる控えめな服装を心がけ、地元文化に敬意を払う必要がある。
カタールでは同性愛は違法とされている。ただし、本大会の組織委員会は「だれでも歓迎する」と明言しており友人同士や未婚のカップルがホテルで同じ部屋に宿泊することも可能だ。ただし、同性・異性に関係なく、公の場で親密に触れ合うことは不快な行動とされる可能性があることに注意しよう。
イスラム教はアルコール禁止というイメージがあるが、カタールでは部分的に合法とされている。ただしイスラム教徒の飲酒は禁じられており、21歳以上の非イスラム教徒については、厳しい条件下でアルコール摂取が認められている。また、手荷物や機内持ち込みはもちろん空港の免税店で購入したアルコール類をカタール国内に持ち込むことはできない。
カタールは2022年ワールドカップの公式ビールスポンサーにバドワイザーを迎え、開催期間のスタジアム内および周辺の管理区域でアルコールを提供することを認め、ビールを手にスポーツ観戦をする海外からのファンのための工夫を凝らしていた。
しかし開幕直前になり、カタールの大会組織委員会とFIFAはワールドカップ開催期間中、スタジアム内でのアルコール販売を禁止すると発表して人々を驚かせた。ただし、FIFAは「ノンアルコールのビールはこれまで通り、すべてのワールドカップスタジアム内で販売が可能」とした。
バドワイザーは公式アカウントで「これは厄介だな」とツイートしたが、のちに削除している。この決定によりスタジアム内からアルコール飲料は消えることになるが、大会組織委員が認めたファンゾーンなどの一部エリアではアルコール販売が行われる予定だ。
2014年以降、カタールでは電子タバコの使用も法律で禁じられている。違反すれば最高1万カタールリヤル(約37万円)の罰金、あるいは禁錮の実刑が下される場合もある。
カタールは宿泊施設数が限られているため、11月1日から12月2日にかけて渡航できるのはワールドカップ入場券保持者のみとなっている。グループステージ終了後は、チケット保持者でなくとも入国が可能になる。
Booking.comやAirbnbのことは忘れてしまおう。宿泊施設の予約はワールドカップ組織委員会の公式プラットフォームから行う必要がある。ホテル、アパートメント、別荘、ローカルな宿泊施設など、さまざまなタイプの宿泊施設が見つかる。
渡航時にもっとも重要な書類が「ハイヤカード」。ビザ(査証)のようなもので、カタールへの入国時やスタジアムへの入場(試合のチケットとは別に)に必要になるほか、公共交通機関や公立病院での受信が無料になる。取得するには組織委員会の公式サイトから申請する必要がある。
ハイヤカードがあれば2023年1月23日までカタールに滞在できるほか、サウジアラビアなど近隣諸国を訪ねることもできる。カタールの隣にあるサウジアラビアは、徐々に観光客を受け入れつつあり、ワールドカップをきっかけに中東を訪問するサポーターに門戸を開いている。
カタール公衆衛生省によれば、ハイヤカード保持者はカタール入国時にPCR検査や抗原検査の陰性証明を提示する必要はない。また、カタールに滞在したりスタジアムにアクセスする際に、コロナウイルスのワクチン接種は義務付けられてはいない。
カタール滞在中にコロナウイルス感染症状が出た場合は、すぐに検査を受ける必要がある。検査結果が陽性となった場合、宿泊施設に5日間の隔離滞在をすることや、屋内外でのマスク着用が求められる。
コロナウイルス追跡用スマホアプリ「Ehteraz」への登録については、2022年11月1日以降は義務付けが解除された。ただしこのアプリがあれば、公立・私立を問わず国内医療機関へのアクセスがしやすくなることもある。
カタールでは、スタジアムや公共交通機関でのマスク着用は義務づけられていない。ただし、病院をはじめとする医療機関ではマスク着用が必須となっている。
カタールでは婚外交際が禁止されており、違反すると最高7年の禁固刑に処せられる。しかし、2022年ワールドカップの組織委員会は、ワールドカップ開催中に婚姻関係を問われることはないとしている。現地で医療機関で受診をすることになっても心配はいらないようだ。
米国大使館をはじめとする一部の大使館は、カタール滞在中に医療が必要となった場合にそなえ、妊婦をはじめ医療機関にかかる可能性のある訪問者には結婚証明書を持参するよう勧めている。
大会組織委員会の健康問題に関するスポークスパーソン、ユセフ・アルマスラマニ氏はドーハで開かれた記者会見でこう語った:「既婚者か未婚者かや、性別、国籍、宗教を問われることはない。患者は健康状態について質問を受けるだけで、個人的なことを質問されることはない」
11月から12月にかけてのカタールの気温は摂氏24度前後ときわめて穏やかだ。砂漠の国では灼熱の夏となるが、冬場は快適な気候で大会を楽しむことができる。