イタリア4大都市のひとつナポリ:知られざる観光スポットとは
詩人ゲーテは『イタリア紀行』の中で「ナポリを見てから死ね」という有名な言葉を残した。ナポリはアメリカの『タイム』誌による2023年度版「世界の最も素晴らしい場所50」にも選出されている。
イタリア南部に位置するナポリは、ローマ、ミラノに続くイタリア第3の都市。「太陽の街」と称される、陽光ふりそそぐ温暖な気候も魅力のひとつだ。今回は世界的に有名な観光都市ナポリの知られざる魅力を紹介していこう。
ナポリの人たちが愛してやまないガイオラ島は、橋で結ばれた二つの環礁からなる。一帯はガイオラ海中公園として知られ、海底には古代ローマの町が沈んでおり、その様子は底がガラス張りになった船で見学することができる。また、呪いの島とも呼ばれ、怖いもの好きにも人気が高い。
公式のWEBサイトによれば、今日のガイオラ水中公園は「研究、研修、科学普及、環境教育のために重要な場所」であるという。複雑な海底の地形と海流により多種多彩な海洋生物が生息しているため、ボートでの見学ツアーも人気が高い。
ナポリの珍しい、知る人ぞ知る観光地が「人形病院」だ。中心部のマリリアーノ宮殿内にあり、19世紀末に人形劇の舞台装飾家ルイジ・グラッシが開いた工房が元となっている。
工房では舞台人形をはじめ様々なものを修理し、道行く人々の注目と好奇心を集めていた。ある日、小さな女の子から「直してほしい」と人形を預かり、そこから「人形病院」が本格的にスタートしたという。そんな曽祖父の芸術性をティツィアーナ・グラッシ(写真)が受け継ぎ、現在ではナポリの歴史の一部となっている。
フェルザン・オズペテックが監督した『ナポリ、熟れた情事』(2017年)の冒頭シーンに登場する美しい螺旋階段で、Mannajuolo邸内にある。ナポリを代表するアール・ヌーヴォー建築のひとつで、キアイア地区ガエタノ・フィランジエーリ通りに面している。
画像:Wikipedia
ナポリは2015年頃から街をあげてストリートアートに力をいれている。有名なアーティストの作品に加え、近年はナポリ出身のヨリットの作品群で有名だ。写真はかつてサッカーセリエAのナポリで活躍していたレジェンド、ディエゴ・マラドーナに捧げられた世界最大の壁画。ナポリ東部サン・ジョヴァンニ・ア・テドゥッチョにある集合住宅の東側の壁に描かれている。
ストリートアートを手掛けるヨリット(Jorit Ciro Cerullo)は、1990年にナポリで生まれた。16世紀の画家カラヴァッジョの明暗法とリアリズムを融合させた画風が特徴で、作品を通じて社会的メッセージを発信している。写真はサン・ジョヴァンニ・ア・テドゥッチョの同じ建物の西側に描かれた革命家チェ・ゲバラ。
ナポリ旧市街の中心部にもヨリットの作品がある。フォルチェッラ地区にある集合住宅の外壁に描かれたナポリの守護聖人サン・ジェンナーロで、Vicaria Vecchia通り33番地が一番の鑑賞ポイントだ。
ナポリ・バロック様式を代表する建物で、ナポリ出身の建築家フェルディナンド・サンフェリーチェの作品とされている。この二つの建物があるサニタ地区は、治安があまりよくないので夜に訪れるのは避けよう。
写真:Wikipedia
スパニョーロ宮とサンフェリーチェ宮、いずれも階段で有名だ。とくにスパニョーロ宮の階段は鷹の羽をイメージして作られており、ナポリ・バロック様式の世俗建築を代表するものだ。
写真:Wikipedia
1600年頃までは凝灰岩の発掘場だったが、1656年にナポリで起こったペスト大流行により数多くの犠牲者が出たため、カタコンベ(地下共同墓地)として使用されるようになった。1836年のコレラ流行まで使用されていたナポリで一番大きなカタコンベで、4万人以上の遺骨が葬られているという。
19世紀の終わり頃、フォンタネッレ墓地では不思議な信仰が流行っていた。カタコンベにある好きな頭蓋骨に祈りを捧げ、願いをかなえてもらおうというものだ。また、フォンタネッレという名はイタリア語で「小さな泉」を意味し、古代に水源があったことに由来する。
コレラ大流行後の1885年、大規模なナポリ再開発がはじまった。その時に建てられた屋根付きの商業施設で、ミラノの美しいショッピングアーケード「ガレリア」を参考にしている。
ガッレリア・ウンベルト1世には、カフェ・シャンタン(歌付きのショー)が開催されていた老舗カフェ、サローネ・マルゲリータがある。現在はプライベートなイベントやダンスポールとして使用され、タンゴ教室をはじめ月に2回土曜日にタンゴのダンスパーティーが開催されている。写真はサンタ・ブリージダ通り67番地にあるサローネ・マルゲリータへの入口。
写真:Google Street View
ナポリの街をさらに魅力的にしているのが、旧市街中心部にあるペトライオの坂だ。ヴォメロの丘とヴィットーリオ・エマヌエーレ通りを結ぶ503段の階段で、上部からナポリ湾をバックに風情のある景色が続く。
ペトライオの坂はかなり高低差があるので、ケーブルカーでMorghen駅、または地下鉄L1線のVanvitelli駅まで行き、階段を降りるルートがおすすめ。
街の地下40mのところに紀元前5世紀から存在する地下都市空間(ナポリ・ソッテラネア)がある。時代によって様々な用途に使用され、古代ギリシャでは神殿、その後は地下水路、そして第二次世界大戦では防空壕として使われていた。サン・ガエターノ広場68番、トリブナーリ通りにある入り口からガイド付き見学ツアーがでている。
1853年、当時ナポリを支配していたブルボン家フェルディナンド2世が、民衆蜂起を恐れて造らせたトンネル。前述のナポリ・ソッテラネア同様、古くからある地下空間を活用して造られた。
ナポリ王宮と軍の兵舎があるヴィットーリア広場を結ぶ地下トンネル。非常時の際に王宮から海へと逃げる連絡経路としてつくられ、第二次世界大戦中は軍の病院や防空壕として使用していた。見学はツアーでのみ可能で、所要時間や料金はルートによって異なる。観光都市ナポリには多くの見所があるが、今回紹介したのは穴場ばかり。ナポリのディープな魅力を楽しもう。