泥沼裁判中のアンバー・ハード、36歳を迎える
アンバー・ハードが36歳の誕生日を迎えたが、今年はお祝いどころではない。というのも、元夫ジョニー・デップとスキャンダラスな裁判の真っ最中だからだ。
ジョニー・デップが名誉棄損でアンバー・ハードを訴えたのは、彼女が『ワシントン・ポスト』紙にDV被害に遭っていたことを示唆する記事を投稿したためだ。バージニア州裁判所で行われた裁判でデップは虐待の事実を否定、反対にアンバー・ハードの方が彼に何度も怪我を負わせたと主張した。
演技が評価され、映画賞を獲得して話題になるのではなく、ゴシップ記事でタブロイド紙を賑わせることの方が多いハリウッドスター、アンバー・ハード。ハリウッドでの成功と幸せを求め続けて悪戦苦闘する彼女の素顔に迫ろう。
アンバー・ハードといえば典型的なブロンド美女のイメージだが、実はもともとブルネットだ。 1986年、テキサス州オースティンで中産階級の家庭に生まれ、17歳になるまでカトリックスクールに通っていた。
テキサス州での暮らしに退屈していたティーンエイジャーのアンバーはモデルを目指してニューヨークに進出。20歳を迎えた2004年にはドラマ『Friday Night Lights』に出演し、画面の中でテキサスに帰郷した。
しかし、彼女は大きなトラウマを抱えていた。テキサス州で起きた交通事故で16歳の親友を亡くしていたのだ。アンバーの信仰が揺らいだのはこの時だ。以来、彼女は無宗教を公言している。
自身の恋愛観については、女性と男性のどちらを好きになることもある、と何度も明かしている。
アンバーのハリウッド生活が本格的に始まったのは2006年。共演者のアマンダ・サイフリッドと出演した『アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン』をはじめ、脇役とはいえ映画に抜擢されるようになったのだ。
最初の10年は脇役が多かったアンバー・ハード。『ゾンビランド』をはじめとする映画や『カリフォルニケーション ある小説家のモテすぎる日常』といったドラマに出演した。2009年の『幸せがおカネで買えるワケ』はコケてしまったが、デミ・ムーアやデイヴィッド・ドゥカヴニーといった大物たちと共演を果たしたアンバーを、バラエティ誌は「注目をかっさらった」と評価した。
キャリアにも私生活にも転機が訪れたのは、2011年『ラム・ダイアリー』に出演したときだ。ハンター・S・トンプソンの小説を映画化したこの作品で好演し、カリスマ性と才能を見せつけたのだ。そして、後に重要人物となるジョニー・デップに出会ったのもこのときだ。
ジョニー・デップと付き合い始める前、アンバーは写真家のターシャ・ヴァン・リーと2008年から2012年まで交際していた。
しかし、突然、ジョニー・デップと並んでレッド・カーペットに登場したアンバー。歳の差23歳という驚くべきスターカップルが誕生した。
2015年、ジョニー・デップが所有するプライベートアイランドで結婚した二人。素敵なカップルとして島民たちの話題の的となった。
しかし、南の島にいたその時からトラブルは始まっていた。アンバーはジョニーについて「寛大」で「愛情深い」と回想しているが、二人の関係は波乱に満ちていた。
アンバーの妹は、姉がジョニー・デップと結婚すると知るや「気分が悪くなった」と後に法廷で証言。BBC放送の引用によれば:「私ははじめDVに気づいていませんでした。でも、アンバーが二人の諍いについて話をしたので、私は心配でした」
2015年末にはキャリア絶好調だったアンバー・ハード。ヒット映画『マジック・マイクXXL』、『リリーのすべて』、『サスペクツ・ダイアリー すり替えられた記憶』に出演したほか、トーク番組で笑顔を欠かさず、レッドカーペットでも優美なブロンドと完璧なメイクで人々を魅了した。しかし、笑顔の裏には大問題が隠されていた。
2015年12月のある夜、ロサンゼルスのアパートでエスカレートした二人の争いは、もはや夫婦喧嘩どころではなかった。 5年後、アンバーはその晩のことを「私たちの関係の中で一番乱暴で最悪な夜」だったと証言した。
BBC放送の報道によれば、アンバーは当時夫だったジョニーに「平手打ちされ、髪の毛を掴んでマンションの中を引きずられ、繰り返し頭を殴られた」としている。
「私はわき腹、いや、身体中にあざができるほど殴られました…… 目の周りは黒くなっていたし、鼻と唇にも怪我をしました。本当にひどいあざがおでこにもありました」アンバーはロンドンの裁判所でこう述べている。
翌日の夜、アンバー・ハードはジェームズ・コーデンが司会する『レイト×2ショー」に何事もなかったかのように登場。後に彼女がコメントしたところによると、メイクアップアーティストに怪我をカバーしてもらったが、唇の腫れは隠しきれなかったという。
アンバー・ハードいわく、ジョニー・デップは嫉妬深く、アルコールや薬物を摂取するとそれが一層ひどくなるという。たとえば、2014年に『サスペクツ・ダイアリー すり替えられた記憶』でアンバーがジェームズ・フランコと共演した際、ジョニーは二人が浮気していると非難した。
ジョニーから浮気で告発された人物は他にもいる。アンバー・ハードの友人で、ミリオネアのイーロン・マスクだ。アンバーによれば、結婚生活が危うくなった彼女がイーロンに「毎日24時間」のセキュリティを依頼しただけだという。しかし、離婚が決定的になるや、アンバーとイーロンは1年間付き合っていたと報じられた。
2017年にようやく離婚したアンバー・ハードとジョニー・デップ。アンバーによる離婚申し立てには身体・精神的虐待が理由として挙げられていた。そして、これが法廷とマスコミを舞台にした終わりなき闘いの幕開けとなった。
法廷闘争の焦点になっているのはマスコミによる結婚生活の報道だ。たとえば、アンバーが『ザ・サン』紙でジョニーを「DV夫」と呼んだことに対し、ジョニーは同紙およびアンバーを告訴したが敗訴した。
2020年に行われた『ザ・サン』紙に対するジョニー・デップの名誉棄損裁判の中でアンバー・ハードは元夫が時々「暴力的で狂ったようになる」ことがあったと述べた。BBC放送の報道によれば、アンバーはDVの証拠として写真その他の資料を開示した。
しかし、ジョニー・デップはこれを全否定。2人の結婚生活の中でアルコールが彼の行動に悪影響を与えていたことを認めるにとどまった。
しかし、ジョニー・デップは、実際に家庭で暴力を振るっていたのはアンバー・ハードだったと主張している。バージニア州フェアファックス郡で2022年に行われた名誉毀損裁判で証言台に立ったジョニーは、アンバーが振るったとされる暴力について詳細を明かしたのだ。
複数ある証拠品の中でもジョニー・デップがマスコミに公開したのは「乱暴しない約束なんてできない」と話すアンバー・ハードの録音音声だった。これは『デイリー・メール』紙が掲載した。
しかし、アンバー・ハードを悩ませるスキャンダルはそれだけではない。多くのハリウッドスター同様、2014年にiCloudハッキングの被害に遭ってしまったのだ。その結果、プライベート写真が勝手に出回ることに。
さらに、映画『ロンドン・フィールズ』では制作陣が女優のヌードシーンについて契約違反。その結果、2016年から2018年にかけて、監督、プロデューサー、アンバー本人による裁判があちこちで繰り広げられた。
2017年、アンバーのキャリアは下降線を辿っていた。
ここでアンバーに手を差し伸べてくれたのは、DCコミックスの『ジャスティス・リーグ』シリーズだった。2018年の『アクアマン』では海のスーパーヒロイン、メラを演じ、脚光を浴びることができたのだ。
スクリーンの外では性的マイノリティおよびDV被害者の代弁者となったアンバー。自身の困難な経験を活かして人々をサポートしようとしている。
しかし、ハードにとって最大の事件はジョニー・デップとの法廷闘争だ。ロンドンでの名誉毀損訴訟はジョニー・デップの元パートナーたちが敵味方に分かれて証言を行うショーと化した。また、バージニア州で行われた裁判では両者が名だたるセレブたちを証人として召喚、こちらも劇場の様相を呈している。
ロンドンでの裁判に敗訴し、評判を落としたジョニー・デップは『ファンタスティック・ビースト』シリーズから追放。では、アンバー・ハードに分があるかというとそうでもなさそうだ。というのも、2022年の名誉毀損裁判では、ジョニー・デップが求める慰謝料5,000万ドルを支払う羽目になるかも知れないのだ。
『インデペンデント』紙の報道によれば、ジョニー・デップのファンたちはアンバーを『アクアマン』シリーズから追放しようと試みたという。その目論見は不成功に終わり『アクアマン2』プロジェクトはアンバーの起用で着々と進んでいる。しかし、ハリウッド女優として成功を収めるという夢はまだ道半ばだ。