独裁政権のリーダーと付き合いのあるセレブたち：仕事仲間？それともソウルメイト？

一瞬、不思議に見える独裁者とセレブという取り合わせ。だが、独裁者といえばたいてい追従者に囲まれて見栄っ張りでわがままなものだが、これはセレブにも当てはまりそう…… 要するにかなり似ているわけだ。では、今回は独裁者とセレブの交友関係について見てゆこう。

「ヨーロッパ最後の独裁者」と揶揄されるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領。彼に会うため、2016年にベラルーシを訪れたのが90年代のハリウッドを代表するアクションスター、スティーヴン・セガールだ。

長いことベラルーシの首領に会ってみたかったというスティーヴン・セガール。ミンスク郊外にあるルカシェンコ大統領の自宅でとれたニンジン等の野菜を贈られた。

さらに、セガールとルカシェンコには共通の友人がいる。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。『沈黙の戦艦』のスターは2018年にロシア市民権を付与され、在米ロシア特使に任命された。

信じがたい国の大使を買って出たセレブもいる：デニス・ロッドマンだ。この元NBAプレーヤーは2013年以来、北朝鮮の金正恩総書記と親交を結んでおり、北朝鮮の非公式な平和大使と見なされている。

ロッドマン自身は大使などではないと述べているが、北朝鮮に拘留されていた韓国系アメリカ人宣教師の釈放に手を貸し、成功させたようだ。ロッドマンは実はCIAの極秘エージェントなのではという憶測すら流れている。

ただのコンサートのつもりが、思いがけず独裁者支持とみなされてしまうこともある。2013年、当時、トルクメニスタンに君臨していたグルバングル・ベルディムハメドフ元大統領に「ハッピーバースデー」を歌って批判を浴びたジェニファー・ロペスがこのケースだ。写真は軍事パレードで馬に乗るグルバングル・ベルディムハメドフ元大統領。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが「世界有数の抑圧的な政権」と非難するトルクメニスタン。この国を訪れた欧米のセレブはジェニファー・ロペスが初めてだ。

同じような目に遭ったのが、2015年にアンゴラを訪れたニッキー・ミナージュ。彼女いわく、コンサートを主催したエンターテイメント会社が、同国で独裁的な権力を振るっていたジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス元大統領の家族と深い関わりにあることを知らなかったという。

写真：アンゴラの国旗に身を包むニッキー・ミナージュ（Instagram）。

ドス・サントス元大統領は1979年に就任し、前国防相に大統領の座を譲る2017年までアンゴラに君臨した。在任期間はアフリカで2番目の長さとなった。

アンゴラではマライア・キャリーも2013年のコンサートでスキャンダルを巻き起こしている。しかし、彼女は以前にも、2011年に政権から転落、殺害されたリビアの元最高指導者カダフィ大佐の家族主催のパーティーで歌を披露したとして非難されたことがある。

カダフィ家のためにコンサートを開いたのはマライア・キャリーだけではない：ネリー・ファータドと50セントだ。しかし、激しい批判を受けた彼らはコンサート収入を寄付する羽目になった。

「イェ（Ye）」に改名したラッパー、カニエ・ウェストなら独裁者と親交があると聞いても驚くことではないだろう。キム・カーダシアンの元パートナーはカザフスタンの元独裁者ヌルスルタン・ナザルバエフのためにコンサートを行ったのだ。

ヌルスルタン・ナザルバエフ元大統領の孫の結婚式でコンサートを行ったカニエ・ウェストの報酬は300万ドル。ナザルバエフは1991年から2019年にかけてカザフスタンに君臨していた。

これまでに触れたセレブの大半は仕事で独裁者のわがままに付き合っただけだが、政治的信念に基づく場合もある。たとえば、ミュージシャンのロジャー・ウォーターズは、ベネズエラで独裁色を強めるニコラス・マドゥロ大統領を支持すると公言している。

マドゥロ大統領にサイン入りのクアトロ（ベネズエラの伝統的な弦楽器）を贈られたウォーターズは大喜びしたという。

マドゥロ大統領の前任者、ウゴ・チャベスが独裁者にあたるかどうかについては議論があるだろう。いずれにせよ、一筋縄ではいかない人物だったのは確かだ。しかし、チャベス前大統領は民衆に人気があったばかりか、セレブとの親交もあった。

写真：2010年、ショーン・ペンと握手するチャベス前大統領

2009年にはオリバー・ストーン監督とともにヴェネツィア国際映画祭に登場したチャベス前大統領。ストーン監督は彼についてのドキュメンタリー映画を撮影したのだ。数年後、ストーン監督はウラジーミル・プーチン露大統領にもインタビュー取材を行った。

さらに一部では、スーパーモデル、ナオミ・キャンベルとの関係まで囁かれたチャベス前大統領。ナオミ・キャンベルは2008年に『GQ』誌の記事でチャベス前大統領にインタビューを行っていた。そこへ『ABC』紙や『El País』紙をはじめとするメディアが、二人の関係について憶測を書き立てたのだ。

二人の関係について本当のところはわからない。しかし、権力者が魅力的なのは事実だろう。それが独裁者であればなおのこと？