せっかくの作品から降板させられてしまった俳優たち
映画の完成版を観ているだけでは気づかないかもしれないが、撮影途中にメインキャストが降板させられることもある。たとえば、大女優ジュリアン・ムーアにもそんな経験の持ち主だ。
『トランスフォーマー』(2007年)のヒロインを演じたミーガン・フォックスは、続編の『トランスフォーマー/リベンジ』(2009年)にも出演したが、マイケル・ベイ監督とそりが合わなかったようで、第3弾の『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』には出ていない。
ライアン・ゴズリングはピーター・ジャクソン監督の『ラブリー・ボーン』に出演が決まっていたが、役作りで体重を増やしたことが裏目に出て、監督のイメージとずれてしまった。ゴズリングは降板し、マーク・ウォールバーグがその役を演じた。
『地獄の黙示録』のウィラード大尉役にはハーヴェイ・カイテルが据えられていた。しかし、撮影が始まって2週間後、フランシス・フォード・コッポラ監督はハーヴェイ・カイテルの降板を決め、かわりにマーティン・シーンを起用する。撮影はそこからさらに難航していくのだが、それはまた別の話だ。
ホアキン・フェニックス主演の映画『her/世界でひとつの彼女』に出てくる人工知能型OSサマンサの声は、撮影中はサマンサ・モートンが吹き込んでいた。しかし、ポストプロダクションの段階で、サマンサの声はスカーレット・ヨハンソンのものに変えられた。
『ビバリーヒルズ・コップ』は当初、シルヴェスター・スタローンが主演をつとめる予定で、彼も加わって脚本がシリアスな方向へ書き改められたという。しかし結局、コミカルな演出も捨てがたいと感じたマーティン・ブレスト監督は、スタローンを外してエディ・マーフィーを起用することにした。このときスタローンが持ち帰った脚本は、のちにアクション映画『コブラ』として日の目を見ることになる。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマイケル・J・フォックスが演じている役は、当初エリック・ストルツが演じることになっていた。だが、ロバート・ゼメキス監督の判断で、彼は降板させられる。まじめすぎて役とは合わなかったのだ。
マーベル映画『マイティ・ソー』にひきつづき、続編の『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』でもナタリー・ポートマンがジェーン・フォスター役を演じている。だが、ポストクレジットのおまけシーンでクリス・ヘムズワースにキスしているのは、ウィッグをつけたエルサ・パタキー(クリス・ヘムズワースの妻)である。ナタリー・ポートマンはそのとき別の事情があり、都合がつかなかったもよう。
チャーリー・ハナムは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のクリスチャン・グレイ役に抜擢されたが、サム・テイラー=ジョンソン監督とのあいだに一悶着あり、降板となる。グレイ役はジェイミー・ドーナンが演じることになった。
ピーター・ジャクソン監督が『ロード・オブ・ザ・リング』のアラルゴン役からスチュアート・タウンゼントを降ろした経緯については、よく分かっていないところもあるが、どうやらタウンゼントはその役にとって若すぎたようだ。かわりにヴィゴ・モーテンセンが演じることになった。
2004年から2012年にかけて放送されたテレビドラマ『デスパレートな妻たち』のニコレット・シェリダンは、原案者のマーク・チェリーと仲が険悪になり、2009年以降は出番が無くなる。彼女はこれを不当だとして訴訟を起こした。
ジェームズ・マクティーグ監督『Vフォー・ヴェンデッタ』のV役にはジェームズ・ピュアフォイが抜擢されたが、途中で降板。そのまま使われたシーンもあるが、残りのほとんどはヒューゴ・ウィーヴィングが演じている。
アン・ハサウェイは、出産シーンを演じなければならないと知り、ジャド・アパトー監督『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』を降板する。代わりにキャサリン・ハイグルが起用された。
ピーター・ウィアー監督は『トゥルーマンショー』のクリストフ役をデニス・ホッパーに任せるつもりでいたが、結局はエド・ハリスが演じることになった。デニス・ホッパーはセリフを覚えてこなかったし、態度も横柄だったからだ。
『マトリックス』のタンク役で知られるマーカス・チャン。彼は続編の『マトリックス リローデッド』、『マトリックス レヴォリューションズ』の出演もオファーされていたが、出演料をめぐっていざこざがあり、結局「タンク」は物語から退場することになった。その後マーカス・チャンはウォシャウスキー姉妹に脅迫の電話をかけた疑いで2000年に逮捕されている。
カリスマ・カーペンターは、テレビドラマ『エンジェル』をシーズン4の途中で降板した。彼女がのちに告発したところでは、制作者ジョス・ウェドンは当時、彼女の人格を攻撃し、宗教的信条をあざわらい、その他ハラスメントと受け取れる言葉をカリスマ・カーペンターにかけたという。
『ゼロ・グラビティ』でジョージ・クルーニーが演じた役は、はじめロバート・ダウニー・Jrが演じることになっていた。しかしアルフォンソ・キュアロン監督は、役が求める抑制された動きとロバート・ダウニー・Jrの持ち味がしっくりこないことを見てとり、これではうまくいかないと考えたのであった。
『アメリカン・サイコ』のパトリック・ベイトマンの役は、はじめレオナルド・ディカプリオにオファーされていた。しかしディカプリオはオファーを断り、クリスチャン・ベールにチャンスが回ってきた。
テレビドラマ『フレンズ』でおなじみのリサ・クドロー。彼女は『そりゃないぜ!? フレイジャー』の出演も決まっていたのだが、パイロット版の撮影段階で役を降ろされてしまった。
1987年公開の映画『プレデター』。「ジャングルハンタープレデター」のスーツアクターはケヴィン・ピーター・ホールである。ところで、「ジャングルハンタープレデター」のスーツにはボツになったバージョンがあることはご存知だろうか。その中に入っていたのが、ジャン=クロード・ヴァン・ダムだった。
『エイリアン2』の撮影期間中、ジェームズ・レマーは禁止薬物所持の疑いで逮捕され、急遽マイケル・ビーンが代役をつとめた。
アシュトン・カッチャーは、オーディションで『エリザベスタウン』の主役に選ばれた。しかし、演技のリハーサルに立ち会ったキャメロン・クロウ監督は、彼を役から降ろしてしまう。この役はオーランド・ブルームが演じることになった。
作家リー・イスラエルの自伝を原作とする伝記映画『ある女流作家の罪と罰』。主演はジュリアン・ムーアになるはずだったが、脚本を担当するニコール・ホロフセナーの強い反対にあい、代わりにメリッサ・マッカーシーが配役された。
実はトビー・マグワイアは、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のなかでカナダ人小説家の役を演じていた。しかし、トビー・マグワイアは他のキャストと比べて知名度が高すぎるため、物語から浮いてしまうのではとアン・リー監督は考え、彼の出演シーンを削り、代わりにレイフ・スポールをカナダ人小説家の役に起用したという。
ウディ・アレン監督の『カイロの紫のバラ』には当初、マイケル・キートンがキャスティングされていた。だが、1930年代のアメリカが舞台となるこの映画にマイケル・キートンの現代的なたたずまいはそぐわないのではとウディ・アレンは考え始め、結局この役をジェフ・ダニエルズに任せることになった。
『ゲティ家の身代金』、その公開まであと1ヶ月というタイミングで、ジャン・ポール・ゲティを演じたケヴィン・スペイシーの過去のセクハラ疑惑が報道された。これはまずいと感じたリドリー・スコット監督とプロデューサー陣はケヴィン・スペイシーの出演シーンを全て撮り直すことに決め、クリストファー・プラマーに声をかけたのだった。
そのケヴィン・スペイシーと同じようなことが、クリス・デリアについても持ち上がった。クリス・デリアは未成年者に対する性的搾取を告発されたが、その告発の少し前にザック・スナイダー監督作『アーミー・オブ・ザ・デッド』の撮影を終えたところだった。出演シーンは映画からすべて削除され、代役のティグ・ノタロの演技やCGなどがその穴を埋め合わせたという。