バレンタインに観たい名作:『プリティ・ウーマン』の秘話をいくつ知ってる?
リチャード・ギアとジュリア・ロバーツ主演で空前のヒットを記録した『プリティ・ウーマン』。1990年3月23日に公開されてから30年以上が経過した。本作でジュリア・ロバーツはオスカー主演女優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞では主演女優賞(コメディ部門)を受賞した。
この名作の舞台裏には意外な事実が隠されている。例えば、当初ジュリア・ロバーツとリチャード・ギアはキャストに挙がっていなかったという。プロデューサーは、二人の代わりにアル・パチーノやデンゼル・ワシントン、メグ・ライアンやミシェル・ファイファー等を考えていた。
プロデューサーは『ゴッドファーザー』で大成功を収めたアル・パチーノを主役のエドワードに、ダリル・ハンナをやはり主役のビビアンに考えていたと言われる。しかし両者に出演を断られてしまった。一方、主役の男優オーディションにはジョン・トラボルタが、女優オーディションにはウィノナ・ライダーが参加したものの決定に至らなかった。
リチャード・ギアもオファーを辞退しようと考えていた。それを電話でプロデューサーに伝えようとした時、ジュリア・ロバーツが「イエスと言って」と書いたメモを渡したと言われている。
(リチャード・ギアと当時のパートナーでスーパーモデルのシンディ・クロフォード)
制作当時、ジュリア・ロバーツは23歳でリチャード・ギアは41歳だった。
もともと映画のタイトルは『プリティ・ウーマン』ではなかった。ビジネスマン(リチャード・ギア)がコールガール(ジュリア・ロバーツ)を1週間のあいだエスコートとして雇うために支払う金額である「3,000」が予定されていた。
映画のタイトル曲には、最終的にロイ・オービソンの名曲『プリティ・ウーマン』が採用された。
映画の中でコールガールの「ビビアン」(ジュリア・ロバーツ)が住んでいたアパートメントホテルは、ロサンゼルスのハリウッドにあるパルマス通りに実在する。現在は1泊85ドル(ツイン)で一泊することができ、映画ファンの聖地として人気を集めている。
リッチなエグゼクティブ「エドウィン」が滞在したホテル、「リージェント・ビバリー・ウィルシャー」は、現在「ビバリーウィルシャー フォーシーズンズホテル」となっている。数多くの名シーンが撮影されたプレジデンシャル・スイート、現在の宿泊料金は1泊1万ドル。この最高級ホテルではロールスロイスでの送迎、スパ、オペラのチケット手配などを提供する「プリティ・ウーマン」エクスペリエンスも用意されている。
キャストの顔が見えない親密なシーンでは、ジュリア・ロバーツよりもグラマラスな体形の「代わりの女優」がビビアン役を演じている。当時のジュリア・ロバーツはかなりやせていたらしい。
映画のポスターの身体もジュリア・ロバーツのものではなく、モデルのシェリー・ミッシェルである。
リチャード・ギアがピアノを弾くシーンの撮影にエキストラは必要なかった。ギアは実際にピアノを弾けたばかりか作曲の才もあり、このシーンのためにみずから作曲までしている。
二人がサンフランシスコに観に行ったオペラは『椿姫』。身寄りのない若い女性が、金持ちの男と恋に落ちるというストーリーである。
差し出されたネックレスにビビアンが触れようとした瞬間、エドワードがケースを閉じる仕草で彼女を驚かせる。あまりにも有名なこのシーンは、実は脚本にはなかったそう。リチャード・ギアがジョークで彼女を笑わせたのだが、そのリアクションがあまりにも魅力的だったため本編で採用することになった。
二人がオペラに行くシーンで実際に使われたネックレスは、時価25万ドルという高級ジュエリーだった。そのため撮影中はつねに警備の目が光っていた。
衣装デザイナーのマリリン・ヴァンスによると、ジュリア・ロバーツがオペラに出かけるシーンではさまざまな色のドレスを用意したそうだ。ヴァンスは最終的に赤か黒で迷った挙句、赤のドレスを選んだ。
製作当時、フェラーリとポルシェのどちらも『プリティ・ウーマン』に自社の車を登場させることを断ったそう。最終的に、ビジネスマン役のリチャード・ギアが運転する車は1989年製のロータスエスプリSEとなった。
この映画の製作費は当初1,400万ドルと高額だったが、劇場公開が終了した時点で興行収入は4億6,300万ドルを記録、軽々と予算を上回った。
しかし、公開から数年後のコメントを見ると、リチャード・ギアもジュリア・ロバーツもこの映画についてあまり良い印象を持っていないようだ。ギアはあるインタビューの中で「ばかげたロマンチックコメディだった」と告白し、「ウォール街のビジネスマンたちを必要以上に魅力的に見せてしまった」と悔いを見せている。
『プリティ・ウーマン』から7年を経て、リチャード・ギアとジュリア・ロバーツが再共演を果たした。それが『プリティ・ブライド』だ。
当初、作品にはまったく異なる結末が用意されていた。『プリティ・ウーマン』ではエドワードとビビアンはリムジンでホテルを一緒に出発するが、オリジナルの脚本では、エドワードは彼女をビバリーヒルズの街角で降ろし単身でニューヨークへ帰ることになっていたのである。
J.F.ロートンが書いた最初の脚本は今よりもずっと暗くて重たいものだった。実は「ビビアン」という役柄は身体を壊し、オリジナルストーリーでは道端で最期を迎えることになっていた。本作の脚本は、少なくとも6回は書き直されたと言われている。
制作プロセスは深刻な危機に陥ることもあった。撮影を担当していたプロダクションは資金不足で作業を中止せざるを得なくなり、ディズニーが本企画を引き受けることを申し出た。ただし、元のストーリーではなくハッピーエンドに変えることが条件だった。こうして『プリティ・ウーマン』が誕生した。
撮影中、ジュリア・ロバーツは笑うシーンの演技にかなり苦労したそう。そのため監督は、彼女の足の裏を羽でくすぐるなど、自然な笑顔を引き出すために思いつく限りの工夫をしたそう。
ジュリア・ロバーツがバスタブにつかるシーンのメイキングオフはYoutubeで見ることができる。制作スタッフは主演女優をジョークにはめようと、彼女がバスタブに頭を沈めている間に全員が大急ぎで姿を隠したのだ。
ビビアンがバスタブでウォークマンを聴きながらプリンスの「Kiss」という曲を歌うシーン。ロバーツは同じフレーズを2回リピートして歌っている。原曲では1回だけなのだが、誰も気づかなかった。
エドワードがガールフレンドと電話で話している冒頭のシーンの一つでは、制作スタッフの姿がガラスに映りこんでいる。
この映画の監督であるギャリー・マーシャルは、通りでゴミ箱をあさる浮浪者役でカメオ出演をしている。
衣装デザイナーは、「ビビアン」がポロへ出かけるときの白い水玉模様のブラウンのドレスは、実はロング丈でシャネルのヒールと合わせるつもりだったと告白している。しかし生地が足りなかったためドレスを膝丈にし、残りの生地で帽子を仕立てのだ。
最後に、『プリティ・ウーマン』は2月14日のバレンタインデーに最も多く放送される映画の1つとなっている。あなたは名作秘話をいくつ知っていただろう?