『トップガン』の出演俳優たちは今どうしている?
パラマウントピクチャーズは1986年の春、映画史に永遠に刻まれる作品、『トップガン』を公開した。カリスマ性のあるキャラクター、豪華なキャスト、アクション、ロマンス、そしてもちろん空中スペクタクルと成功に必要なあらゆる要素をそなえた本作は、文字通り圧倒的な成功を収めた。
『トップガン』は3億5千6百万ドルにのぼる興行収入を挙げたばかりか、米国人の愛国心のシンボルとなり社会に大きな影響をもたらした。というのも、本作公開後に米軍のパイロット志願者が500%増えたというのだ。(都市伝説に聞こえるかもしれないが、数多くのプレスで何度も伝えられた内容で一定の信ぴょう性があるといえるだろう)
『トップガン』の影響はそれだけにとどまらなかった。トム・クルーズが撮影で着用したサングラス、RayBan の「アビエーター」モデルは売上が40%も急増したのだ。
世代を超えたメガヒット作『トップガン』には当然続編がつくられるものと思われていた。しかし、第2弾公開までに36年以上の月日がかかるとは、だれも想像していなかっただろう。『トップガン』主人公たちがこの間にどのような変化を経たかを振り返ってみよう。
『トップガン』の主人公ピート・ミッチェル(コールサインはマーヴェリック)に抜擢されたとき、トム・クルーズは23歳だった。それより前には『アウトサイダー』(1983年)、『卒業白書』(1983年)等に出演した新進スターだった。
年月の経過とともに俳優トム・クルーズの評価は高まっていく一方だ。魅力的な笑顔で世界各国の人々に愛されつづけ、ついにハリウッドの伝説となった。
トム・クルーズはこれまでに3度アカデミー賞にノミネートされたが、受賞には至っていない。
マーヴェリックの教官で、彼と恋愛関係になる"チャーリー"ことシャーロット・ブラックウッドを演じたケリー・マクギリス。彼女は当時28歳で、『トップガン』の成功により80年代で最も魅力的とされる女性の一人になった。
ケリー・マクギリスはハリソン・フォード主演の『刑事ジョン・ブック/目撃者』(1985年)、『メイド・イン・ヘブン』(1987年)、ジョディ・フォスターと共演した『告発の行方』(1988年)などで活躍した。しかし、ハリウッドの男性上位主義の影響そして自身の判断も加わり、華やかなハリウッドスターとしての地位に長くはとどまらなかった。ただし女優活動を止めたわけではなく、ドラマシリーズやマイナー作品等への出演を行っている。
ケリー・マクギリスは有名スターになってから整形を受けないことを明言し、その約束を貫いてきた。女性としてナチュラルに、そして堂々と年を重ねてきた。
トム・カザンスキー"アイスマン"に命を吹き込んだヴァル・キルマーは、当時26歳。『トップガン』以前にはコメディ作品の『トップシークレット』に出演しており、80年代から90年代にかけて高い人気を博した。
『トップガン』のヒットに続き、『ウィロー』(1988年)、『ドアーズ』(1991年)、『バットマン フォーエヴァー』(1995年)、『ヒート』(1995年)などに出演した。
21世紀はヴァル・キルマーにとりそれ以前の20年間ほど明るいものではなかった。とはいえ仕事に困ることはなかった様子。2015年に喉頭がんが見つかったが見事、克服に成功した。
ニック・ブラッドショー"グース"を務めたのはアンソニー・エドワーズ。当時23歳の若さで一躍ハリウッドスターの一人となった。『トップガン』以前には『初体験/リッジモント・ハイ』(1982年)や、人気を博したコメディ映画『ナーズの復讐』(1984年)に出演している。
キャリアにおける名声をさらに高めた作品は、テレビドラマシリーズ『ER緊急救命室』だ。181エピソードにわたりマーク・グリーン医師を演じ、テレビドラマ出演で最も稼いだ俳優の一人となった。
シリーズ出演のギャラは推定3,500万ドルとされ、経済的余裕を手にした彼は、2000年以降も俳優としてのキャリアに落ち着いて取り組むことができた。
『トップガン』でグースの妻キャロル・ブラッドショー役を務めたメグ・ライアン。当時24歳の彼女はすでに大物の雰囲気を身にまとっていたが、映画の大役を務めるのは初めての経験だった。
その後15年間、『恋人たちの予感』(1989)、『めぐり逢えたら』(1993)、『シティ・オブ・エンジェル』(1998)、『ニューヨークの恋人』(2001)など数多くの作品で大きな成功を収める。「アメリカの恋人」と呼ばれ、ジュリア・ロバーツと人気を分け合った。
その後、デニス・クエイドとの離婚騒動、続いてマスコミが彼女の顔について執拗に取りざたしたこと(整形のしすぎ?)で話題になった。いまのメグ・ライアンが必要としているのは、彼女が依然として素晴らしい女優であることを示せるような魅力的な役を手に入れることだ。
訓練生を指導するメット・カルフ"ヴァイパー"教官に扮したトム・スケリット。当時の年齢は53歳だった。
トム・スケリットのキャリアは55年以上に及び、米国テレビドラマ『チアーズ』(1987年)、映画『マグノリアの花たち』(1989年)、SF映画『コンタクト』(1997年)など優れた作品に出演。何より素晴らしいのは88歳の今も現役で活躍していることだ。
27歳のときに『トップガン』のマーリンを演じたティム・ロビンス。白髪を除けば今とほとんど変わらず、俳優として素晴らしいキャリアを切り拓いた。
ティム・ロビンスは『ミスティック・リバー』(2003年)でアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した。さらに歴史上最も人気のある映画の1つである『ショーシャンクの空に』(1994年)で主演、主人公アンディ・デュフレーンの姿が多くの人々の記憶に残る。
映画一筋のティム・ロビンスだったが、最近10年間はテレビ界に身を置いている。『The Brink』(2015年)、『Here and Now』(2018年)、『Castle Rock』(2019年)などのシリーズに参加。
マイケル・アイアンサイドが扮した『トップガン』の"ジェスター"は老けてみえたが、当時の彼は35歳だった。
マイケル・アイアンサイドが俳優として関わった作品は映画とテレビを合わせ300本近くに上る。ギネス世界記録とはいかなくても、前例を見ないほどのフィルモグラフィーを誇る。
代表作には、『V』(1984年)や『VEGAS/ベガス』(2013年)といったテレビシリーズのほか、『トータル・リコール』(1990年)、『パーフェクト・ストーム』(2000年)、『マシニスト』(2004年)など記憶に残る作品が多い。