2023年「世界のベストレストラン50」:日本の名店もランキング入り
今年6月20日、スペインのバレンシアで「世界のベストレストラン50(The World's 50 best restaurant)」が発表された。英国の「ウィリアム・リード・ビジネス・メディア」社が作成するこのリストでは、料理はもちろん革新性や美食体験の点でも評価を行い、世界最高のレストラン50店を選出している。
第1位は、2008年にペルーの首都リマにオープンした「セントラル」。オーナーシェフのビルヒリオ・マルティネスはペルーの伝統料理をベースにユニークな美食体験を追求している。テイスティングメニューは標高の高さに応じた15品からなり、太平洋の海抜マイナス15メートルからアンデス山脈の標高4,200メートルまでペルーを巡る旅へと人々を誘う。
写真:Instagram@centralrest
「世界のベストレストラン50」の評によれば、「セントラル」では「バジェス・セコス」(乾燥した高地)で採れるエビやロチェカボチャ、アボカド から、アマゾン水系のパクー魚、スイカ、コカの葉まで各地方の食材がつかわれている。続いてベストレストランの2位から25位までをみてみよう。
写真:Instagram@centralrest
3人のシェフ、オリオール・カストロ、エドゥアルド・シャトルック、マテウ・カサニャスがオーナーシェフの「ディスフルタール」。伝統をベースにあらゆる最新技術を導入し、バリエーション豊かな料理を通じて驚きと楽しさを生み出している。年に数回変更されるコースメニューには、チャイナブレッドのキャビア詰め、ピスタチオとウナギのつぶつぶクリーム、ビネガーの香りを添えたガスパチョのサンドイッチ、マテ貝の塩漬けなど、イマジネーション豊かな料理が並ぶ。
写真:Instagram@disfrutarbcn
「世界のベストレストラン50」が「享楽的で創造的、かつ予測不可能」と評するマドリードの「ディベルショ」。ダヴィッド・ムニョスの手による12品のテイスティングメニューには、生ハムのエッセンスを添えたタコのグリルからドゥルセ・デ・レーチェのタイ風ボンボンまで革新的な料理が勢ぞろい。アジア各国の料理にインスパイアされたシェフの豊かな創造性が最大限に発揮されている。
写真:Instagram@dabizdiverxo
スペイン北部、バスク地方の山奥にある「アサドール・エチェバリ」。オーナーシェフのビクトル・アルギンソニスの揺るぎない存在、そしてスーシェフを務める日本人の前田哲郎氏の活躍でも知られる。前菜のアンチョビからビーツのアイスクリームまで料理はすべてアルギンソニス本人が設計したグリルを通過。テイスティング・メニューは自家製チョリソ、季節の料理、アングラ(シラスウナギ)、バスク産エンドウ豆など14品で構成されている。
写真:インスタグラム@asadoretxebarrioficial
「アルケミスト」のコースメニューでは、舞台芸術のように仕掛けられたいくつもの「幕」を通じてさまざまな地方、アートや伝統工芸へと思いを馳せることができる。オーナーシェフ、ラスムス・ムンクはクラシックな調理技法に現代的要素を加え、食べられる「プラスチック」を使ったタラの一皿で海洋汚染について警鐘を鳴らし、棺の形をしたチョコデザートを通じてチョコレート産業における児童労働を告発している。
写真: Instagram @restaurantalchemist
日系ペルー人のシェフ、ミツハル・ツムラの「まいど」ではペルーの豊富な食材と日本の洗練された調理技術を組み合わせた「ニッケイ」料理が味わえる。テイスティングメニューは季節の食材や新鮮な魚介類をつかった10~14品で構成されている。
写真:Instagram@mitsuharu_maido
北イタリアのガルダ湖畔に位置する、リッカルド・カマニーニ率いるレストラン。カマニーニの料理はつねに進化を続けており、テイスティングメニューもシェフの美食体験にともない変化していく。代表料理はイタリアのパスタ文化にオマージュを捧げた「リガトーニ・カチョ・エ・ペペ」。
写真:Instagram@ristorantelido84
ニューヨークの韓国料理店「アトミックス」では12品からなるテイスティングメニューを通じ、パク・ジョンヒョンがさまざまな風味と食感を組み合わせた独創的かつ世界最高レベルの韓国料理を味わうことができる。発酵技術をつかった料理、古来の調理技法によるウニ料理、さらに和牛のグリルや麺類までそろっている。
写真:Instagram@atomixnyc
「キントニル」のオーナーシェフ、ホルヘ・バジェホは新鮮な素材、地元の料理、伝統的な調理技法をベースにしつつ、モダンなメキシコ料理を展開。テイスティングメニューではセントージャ(カニ)のグリーン・モーレソース添え、青トウモロコシのトースト、サボテンのシャーベットを味わえるほか、オックステールの煮込み、アボカドのエスカモル添え、メキシコハーブのチップスなどもある。野菜やハーブの多くは自家菜園のものだ。
写真:Instagram@rest_quintonil
オープンキッチンにカウンターをそなえた「ターブル」では、繊細な料理が仕上げられる様子を目にすることができる。各品にストーリーがあり、オーナーシェフのブルーノ・ヴェルジュに尋ねれば快く語ってくれることだろう。スペシャリテは自家製マドレーヌ、チョコレートタルトのケッパーとキャビアクリーム添えなど。
ヒマンシュ・サイニ率いるインド料理店「トレシンド・スタジオ」ではインド各地方の料理に出会うことができる。たとえば西インドからはカボチャにタマリンドやヨーグルト、さまざまなスパイスを加えた料理、海の幸に恵まれた南インドからはシナモンなどのスパイスで仕上げた蟹のカレーなど。さまざまなスパイスをつかい色彩豊かに仕上げたテイスティングメニューはインドへの旅そのものだ。
「豚肉ハウス」という店名のとおり豚のあらゆる部位をつかい、さまざまな調理法で洗練された料理に仕上げている。豚肉のテイスティングメニューが有名だが、独創的にアレンジされたベジタリアンメニューも隠れた人気。ジェフェルソン・ルエダとジャナイナ・ルエダ夫妻が運営している。
写真:Instagram@acasadoporcobar
エンリケ・オルベラの「プジョル」でテイスティングメニューの主役を担うのはタコス。アグアチレ(エビのライムマリネ)のタコス、マチャソースをかけたロブスターのタコス、マカダミアナッツとフレッシュチーズのタコスなど、色彩豊かで洗練された品が並ぶ。デザートにはサボテンのシャーベット、イチジクのエスカベチェ、イチジクの葉のアイスクリームなども楽しめる。
写真:Instagram@pujolrestaurant
2023年「アジアのベストレストラン50」でトップに輝いた「オデット」は、ジュリアン・ロワイエが腕を振るうモダンフレンチの名店。フレンス料理にアジア各国料理のエッセンスを加えたフュージョンで、5~7品からなるテイスティングメニューではハトの「カンポット・ペッパー」焼きやアンディーブの京都味噌和えなども味わえる。
ティティッド・タッサナカジョンの「ル・ドゥ」はタイ産の食材だけを使い、伝統料理に独自の解釈を加えたモダンタイレストラン。スペシャリテは「カオ・クルック・カピ」で、タイ南部のタピ川でとれた海老のグリルに、タイ北部産の2種類の米をつかったリゾット、海老ペーストやさまざまなスパイスを合わせている。
写真:インスタグラム@ledubkk
口に運ぶたびに驚きや感動をもたらす料理をめざす、北イタリアの「レアーレ」。各料理の名称は「ニンジン」、「カリフラワー」、「ズッキーニ」ときわめてシンプルだが、ミニマムで洗練された仕上げと複雑な味わいが特徴だ。シェフのニコ・ロミートは地元産のハーブや野菜、果物をつかって色の濃淡が美しく、コントラストとインパクトに富んだ味わいを生み出している。
写真:Instagram@ristorantereale
オーナーシェフの名を冠し、2019年にオープンした「ガガン・アナンド」では五感を刺激する美食の冒険とジェットコースターのような感動体験をめざしている。洗練されたモダンインド料理のテイスティングメニューでは「絵文字」をつかったり、料理を手で食べたりお皿をなめたりさせるなど、高級料理の世界に革命をもたらしている。
写真:Instagram@gaggan_anand
シェフのハインツ・ライトバウアーは伝統性と現代性の融合を追求し、さまざまな肉類や魚介類、果物や野菜、自家製ハーブの組み合わせに挑戦している。テイスティングメニューにはアスパラガス、ケシの実、アプリコット、子羊のレタス添え、ナマズのいんげん豆添え、ビワ、豚ロースにエンドウ豆など幅広い食材が並ぶ。
写真:Instagram@sreirereck
牛のあらゆる部位をサーブする「ドン・フリオ」ではパブロ・リベロとグイード・タッシが厨房に立つ。人気メニューはランプステーキやハラミ料理だが、トウモロコシ、カボチャ、チーズのエンパナーダ、チョリソや血詰めソーセージ、グリルソーセージなどの自家製腸詰類も評判だ。
写真:Instagram@donjulioparrilla
シェフの名を冠し、スペインのバレンシア郊外にオープンした「キケ・ダコスタ」は最新の調理技法でスペイン伝統のタパスを革新的な高級料理に昇華している。テイスティングメニューには白い花びらを散らしたサフランとマテ貝のフィデウア(お米の代わりにパスタを使ったパエリャ)、エスカルゴの殻からビスク(クリーミィな魚介スープ)を注ぐロブスターの卵のサラダがあるほか、クロマグロ、鴨肉、スモークウナギのローズマリー添え、伝統的なパエージャにオマージュを捧げた料理なども人気。
写真:Instagram@qiqedacosta
長谷川在祐料理長が腕を振るう外苑前の「傳」では、伝統を大切にしながらも五感を刺激する革新的な料理を展開している。おまかせコースでは『畑の様子』や『傳タッキー』といったスペシャリテを堪能できる。
写真:Instagram@zaiyuhaseがわ
スペインのカンタブリア沿岸地方に伝わる料理をベースに、炭火焼き料理を究極の美食にまで高めた「エルカノ」。テイスティングメニューでは、希少食材であるココチャ(タラのあご肉)を炭火焼き、グリーンソース仕立てなど4つの調理技法で仕上げた逸品のほか、ゼラチン質たっぷりのヒラメを丸ごと炭火焼にしたスペシャリテを試すことができる。
写真:Instagram@elkano_jatetxea
メキシコ出身のシェフ、サンティアゴ・ラストラ率いるが運営する「コル」ではイギリスの食材を使ったメキシコ料理という新境地を開拓。テイスティングメニューにはサンドイッチスタイルの料理につづき、シェフのスペシャリテである海老のタコスなどが供される。紫ニンジンのモーレに発酵カシス添え、海藻バターと松の実を添えたオヒョウ(カレイに似た魚)の蒸し煮なども有名だ。
写真:Instagram@kol.restaurant
フランス料理をベースに、旬の食材を生かしたオリジナリティ豊かな料理で知られる「セプティム」。生イカそうめんが入った海藻とカルダモンのスープにウズラの卵添え、アスパラガスと自家製ラードにニンニクの芽とピスタチオのバター添えなど、各国料理にインスパイアされた逸品を気取らない雰囲気の店内で味わうことができる。
写真:Instagram@septimeparis
ホセ・アヴィレス率いる「ベルカント」では、ポルトガルの伝統料理に現代的解釈を加えた料理にである。2種のテイスティングメニューにはテンダーロインステーキのアーティチョーク・ミルフィーユとトリュフソース添え、赤海老のカレー風味、青リンゴのジェル、アスパラガスとコリアンダーなど、革新的な料理が並んでいる。
写真:Instagram@belcanto_joseavillez