世界でもっとも寒い都市、シベリアのヤクーツクの暮らしとは
世界でもっとも寒い都市をご存じだろうか。その答えはシベリアの「ヤクーツク」だ。夏はわりあいに温暖だが、冬は地球上でどこよりも寒い場所となる。極寒の世界を覗いてみよう!
猛暑が続く場所もつらいが、寒い国での暮らしも楽ではない。吹雪や氷雨、氷点下の気温が何日も続けば、体力もかなり消耗することになる。
世界で最も寒い都市とされる、ロシア極東にあるサハ共和国の首都ヤクーツク。そこでの暮らしはどんなものだろう?
2023年1月19日、ロシア極東の都市ヤクーツクで気温が零下62.7度を記録したとCNNが報じた。今年のシベリアは例年よりも厳しい寒波に襲われていた。
しかし、地元の人々は記録的な寒さを前にしても動じることはなかった。過去にもこの街は、零下50度を大きく下回ったことがあるのだ。
BBCの記事によれば、2010年にもヤクーツクでは零下60度を記録したという。一部の住民は、実際の気温はこうした観測記録以上の低気温に達していたとしている。
BBCの取材に応じた地元住民によれば、人々がもっている温度計は零下63度までしか表示できないため実際の気温を測ることができなかったという。
こうした寒さ厳しいシベリアの都市に住む人はほとんどいないと思われるかもしれない。しかし、2021年のロシア国勢調査によれば、ヤクーツクの人口はなんと35万5443人にのぼるという。
写真:By Степанов Слава - geliovostok.ru, CC BY 4.0, Wikimedia commons
サハ共和国の首都ヤクーツクは北極圏の南わずか450kmに位置し、名実ともに「世界で最も寒い都市」となっている。
『Live Science』誌の記事によれば、ヤクーツクの記録的な寒さには、緯度だけではなく地形が大きく関係しているという。
写真: James St. John - Lena River (near Yakutsk, Siberia, Russia) 5, CC BY 2.0, Wikimedia Commons
フィンランドのヘルシンキ大学大気地球システム研究所(INAR)の上級講師ヨウニ・ライサネンは、『Live Science』誌にこう語っている。「ここは高台に囲まれた窪地にあります。そのため、たとえ比較穏やかな気候条件下にあったとしても冷気がたまり、いわゆる「冷気湖」が現れやすくなります」
ウィキペディアによれば、ヤクーツクは世界で最も人口密度が低い都市の一つとされている。しかし、現在ロシアで最も急速に成長している地方都市の一つだ。
なぜ、このような厳しい環境に人が住み続け、ヤクーツクの場合移住者が増え続けているのだろう?
『The Independent』誌によれば、2008年当時のヤクーツクは先住民族のヤクート人が人口の40%を占めていた。
先住民族のヤクートの人々にとっては、このような過酷な環境での生活が当たり前であり、故郷の美しい自然を誇りにしている。しかし、それ以外の新たな住民たちはなぜこの土地を選んだのだろうか。
答えは簡単で、就職の機会があるからだ。この地域には金、ダイヤモンド、石炭が豊富にあり、世界最大のダイヤモンド採掘会社アルロサの本拠地でもある。実は、多くの住民がこの地域にある鉱山で働いているのだ。写真は、ヤクーツクの東にある露天掘りの金鉱。
『The Independent』誌によれば、アルロサはロシアにおけるダイヤモンド市場を独占し、世界のダイヤモンド原石の20%を生産しているという。
写真: Ptukhina Natasha - Own work, CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons
つまり、ロシアの人々は高収入を得るためなら、モスクワから8000km以上の距離を移動し、地球上で最も厳しい寒さに耐えることもいとわないようだ。
ヤクーツクは地球上で最も寒い都市として知られているが、「地球上で最も寒い場所」ではない。
『ナショナルジオグラフィック』によれば、地球上で最も寒い定住地はヤクーツクの東925kmに位置する田舎町オイミャコンだ。
2012年にオーストラリアのテレビ局が作成したドキュメンタリー『60 Minutes』で、町の広場にある、この村が記録した最も寒い温度を示す記念碑が紹介された。非公式ではあるが、1924年1月に零下71.2度を記録している。
北半球は一年でもっとも寒い時期にさしかかっており、今年1月のヤクーツクでは最高気温が零下30度前後となっている。