世界各国のブレックファースト:チュロスにコココナツライスから羊肉まで
一日の食事の中でも特に重要だと言われることが多い朝食。それがどれくらい正しいのかはともかく、国ごとにさまざまな朝食のスタイルが存在することは確かだ。
朝食のなかには世界の料理界から注目されるような影響力のあるものすらあるほど。そんなお国ごとの朝食事情をチェックしてみよう。かなり意外なものもあるかもしれない。
いまでこそ世界中で見られるスタイルかもしれないが、オーストリアではアヴォカドトーストとコーヒーというのが定番となっていた。バタートーストやベジマイト(濃茶色の発酵スプレッド。塩味と旨味が強い)も一般的だ。
ケニアなどの東アフリカでよく食べられているのが、三角ドーナツのような「マンダジ」だ。これにチャイを合わせるのが定番の組み合わせとなっている。
スペインの朝食スタイルは国の中でも地方ごとに大きく異なる。とはいえ、地中海式の食事習慣が基調となっていることは共通で、コーヒーとオレンジジュース、それにオリーブオイルをかけたトーストはどこでも欠かせない。そこにニンニクとトマト、イベリコ豚のハムを加えれば完璧だ。ちなみに、地中海式のヘルシーな食生活とは言えないが、チュロスとココアという組み合わせもよく見られる。
ドイツと言えばソーセージというイメージが強いが、そこは期待を裏切らず、朝食でも定番の食材となっている。そこにパンと卵、各種チーズを合わせるのが一般的だ。また、肉とヨーグルト、チーズという組み合わせも存在する。
フランスの朝食に欠かせないのはなんといってもコーヒーとクロワッサン。アイコニックなのはこの組み合わせだが、トーストしたバゲットにバターを付けた「タルティーヌ」や、最近では日本でも見るようになった「パン・オ・ショコラ」も定番のひとつ。
イタリアでは朝食は軽めにすませることが多い。欠かせない存在のコーヒー(カプチーノ)にイタリア版クロワッサンこと「コルネット」という組み合わせが定番だ。
イギリスの朝食は「イングリッシュ・ブレックファスト」として世界でも有数の知名度を誇る。卵にソーセージ、ベーコン、ベイクドビーンズ、焼きトマト、マッシュルームにバタートーストなど、とにかく具だくさんなのでお腹を空かせて臨もう。もちろんそこはイギリス、合わせる飲み物はとうぜん紅茶だ。
オランダの朝食の定番は、バターやクリームを塗ったトーストに「ハーゲルスラッハ」と呼ばれる小さな粒状のチョコをかけたもの。
ハンガリーの朝食では、「ポガーチャ」と呼ばれるパンが定番となっている。バターやサワークリームなどいろいろなものが中に入ったバージョンがあるが、一番ポピュラーなのはチーズ入りのもの。
ブルガリアでは、「バニッツァ」と呼ばれるパイが朝食などでよく食べられている。パイ生地に地元産の山羊乳チーズを入れてオーブンで焼いたもので、作り方を聞くだけでもおいしそうな感じが伝わってくる。
「モルゲンマート」(デンマーク語で朝食の意味)のメインは自家製パン。食事の中心となるだけに、おいしく焼くことは重要だ。そこにゆで卵やチーズ、バター、ジャム、シリアルなどを加えていくとデンマーク式朝食の完成となる。
寒冷な気候に耐える必要もあって、アイスランドの朝食では朝から熱々の食事が供される。定番となっているのはオーツ麦のおかゆ(ポリッジ)で、そこにフルーツやジャム、「リシ」(タラの肝油)を添えて食べる。
アメリカやカナダの映画を見ているとよく出てくるように、北米での朝食にはパンケーキが定番だ。甘くすることも塩味にすることもあるが、何も考えずにメープルシロップをたっぷりかけるだけでも極上のおいしさが味わえる。
メキシコでも朝食はしっかり食べることが多い。定番メニューとなっているのは「ウエボス・ランチェロス」(牧場風卵料理)で、トルティーヤと卵をサルサで煮込んだ滋養たっぷりの一品。二日酔いにも効果てきめんだ。
コロンビアやベネズエラでは、トウモロコシから作った薄焼きパン「アレパ」がよく食べられている。中にチーズやお肉などさまざまな食材を挟んで食べるのが一般的だ。いつ食べてもおいしくおやつにもぴったりだが、朝食の場で見ることが最も多い。
フランス発祥のクロワッサンはアルゼンチンでも「メディアルナ」(半月の意味)と呼ばれて朝食の定番となっている。もちろん、お供はコーヒーだ。
画像:Montatip Lilitsanong / Unsplash
ペルーの伝統的な食べ物「タカチョ」は、バナナの一種を茹でて、調味料を混ぜて潰したもの。チョリソーのような肉類などとともに食べるのが一般的で、特産のフルーツ「ココナ」を使ったソースを添えることも多い。ペルーのアマゾン地域ではコーヒーやフルーツジュースと合わせて朝食の定番だ。
「ガジョピント」はコスタリカの料理で、お米に豆を混ぜたもの。いつ食べてもいいのだが、朝食に出されることが多い。ここに卵やアボカド、チーズ、揚げバナナなどを加えることもある。
ブラジルの朝食は軽めでヘルシーなことが多い。メインとなるのはパンで、そこにコーヒーとフルーツ(バナナやパパイヤ)というのが一般的なスタイルだ。チーズや卵、ジュースが添えられることもある。
カリブ海の島国ジャマイカでは朝食はたっぷり食べるもの。特産の栄養豊富な葉物野菜「カラルー」に、揚げバナナやたらのほぐし身、「アキー」というフルーツという組み合わせが定番だ。
中国の朝ごはんではおかゆが定番となっている。動物性のだしをたっぷり使った中華がゆは日本のおかゆとはまた違い、食べ応えも十分。具材などのバリエーションも豊富だ。また、油条という揚げパンのようなものを豆乳と一緒に食べることもある。
シンガポールの朝食で定番となっているのが、カヤトースト。サクッと焼いたトーストにカヤジャム(ココナッツミルクや砂糖で作ったペーストにパンダンリーフというハーブを加えたもの)を塗り、薄く切ったバターを挟んで完成だ。そこに練乳入りの甘いコーヒー「コピ」と、黄身がとろとろのポーチドエッグを添えれば完璧だ。
発祥の地マレーシアだけでなく、ブルネイやシンガポールなど東南アジア各国で親しまれているのがナシレマッ(ココナッツミルクで炊いたご飯)だ。鰯や鶏肉、固ゆで卵、キュウリ、ピーナッツなどのおかずを添えて定食のようにして食べることが多い。
ベトナム料理として有名なフォーは、日本では昼食や夕食に食べることが多いかもしれないが、現地では朝食メニューにもなっている。牛だしのフォー・ボーや鶏だしのフォー・ガーのほかに、蟹を使ったブンリュウもある。
インドで朝ごはんとして食べられているのが、平たくしたお米を野菜やナッツと炊いた「ポハ」。ベジタリアンミールとしてもおすすめだ。
パキスタンの伝統的な朝食は「ハルワ・プリ」と呼ばれる。セモリナを使った甘いプディングである「ハルワ」と揚げパン「プリ」の組み合わせで、そこに種々のおかずを添えて食べる。
フィリピンの朝ごはんは甘くするのが一般的。スペイン語で「塩のパン」という意味である「パンデサル」はその名に反して(?)甘めになっており、それを中心に甘味や塩味のおかずを組み合わせる。
イスラエルで定番の朝ごはんは「シャクシュカ」(なんでも混ぜたもの、という意味)。トマトやピーマン、タマネギ、各種スパイスを入れたソースの中に半熟卵を落とすという作り方が一般的だ。そこにトーストを添えることもある。イスラエルでは朝ごはんが特に重視されており、シャクシュカもそれなりにボリュームのあるものになっている。
イランの伝統的な朝食では「ハリーム」が食べられる。羊肉や鶏肉を麦や豆、スパイスなどとともに煮込んだもので、温かいままでも、冷製にしても食べられる。
「カフヴァルトゥ」(トルコ語で朝食の意味)の定番はフェタや「カシュカバル」などのフレッシュチーズ、オリーブ、焼きたてのパンとバターにドライフルーツ、たっぷりのお茶といったメニューだ。
モロッコなどの北アフリカ地域で定番となっているのがマグレブ版パンケーキ「バグリール」だ。小麦粉に塩やベーキングパウダーを混ぜて焼き上げ、蜂蜜やオリーブオイル、アーモンドペーストなどとともにいただこう。
エジプトの朝食の定番は「フール・ミダミス」という空豆の煮込み。クミンやパセリ、各種スパイスで味付けされており、ピタパンやひよこ豆、ゆで卵とともに食べるのが一般的だ。