NASAの最新宇宙船がソーラーセイルを広げることに成功
人類が長時間にわたる宇宙を旅することができるようになるためには、きわめて革新的な航行技術が必要になる。ソーラーセイルの最新技術はその第一歩になるかもしれない。
「宇宙ヨット」と呼ばれることもあるソーラーセイルはこれまで、「SFに描かれる未来の技術」とされてきた。宇宙に到達してから帆を広げ、太陽光を受けてそれを推進力にする仕組みだという。
写真:Wiki Commons By NASA/Marshall Space Flight Center, Public Domain
2010年に日本のJAXAが小型ソーラーセイル実証機「IKAROS」を打ち上げ、史上初の宇宙航行に成功。今回はNASAの最新型ソーラーセイル宇宙船が飛び立ち、わずか4か月で帆を広げることに成功。人類はまた一歩、宇宙旅行の実現にまた一歩近づいたことになる。
残念ながら、現段階ではソーラーセイル宇宙船で人間を他の惑星まで運ぶことはまだできない。しかし、この技術は宇宙でのさまざまなミッションに応用できる可能性を秘めている。ここで、真空の宇宙空間でも航行可能なソーラーセイルの仕組みを見ていこう。
写真:Wiki Commons By Andrzej Mirecki, Own Work, CC BY-SA 3.0
宇宙技術専門メディア「Space.com」によると、ソーラーセイルはヨットが航海するのと近い原理で宇宙空間を動くという。ヨットの動力となるのは風だが、ソーラーセイルは太陽エネルギー(光子)を利用して宇宙空間を航行する。
同サイトによれば、「宇宙でソーラーセイルを動かすには、ほんのわずかな太陽光しか必要としない」という。「光子には質量はないが、物体にぶつかるとエネルギーを発生させることができる」とされ、それが宇宙空間でのソーラーセイルの動力になるという。
4月24日、ロケットラボ社が開発した小型ロケット「エレクトロン」に搭載され、先進複合ソーラーセイルシステム宇宙船(ACS3)が宇宙に出発。8月29日にはACS3が初めてとなる宇宙でのソーラーセイルの展開に成功。その様子がセイルに取り付けられたカメラで撮影された。
写真:Wiki Commons By Scott Andrews, Public Domain
NASAは9月5日に、ACS3が帆を展開した画像を公開。帆の向きがわかりづらいものの、NASAによれば宇宙空間で無事ソーラーセイルが展開されたという。
写真:NASA
「ソーラーセイル技術は理論の上でも実践の上でも先進的なプロジェクト。このミッションが現在まで成功を収めているのは本当に素晴らしい」と科学専門メディア「Live Science」のモニシャ・ラヴィセッティは語った。しかし、NASAのACS3チームにとって本当に重要なミッションは始まったばかりだ。
写真:Wiki Commons By NASA Ames Research Center / NASA/Aero Animation/Ben Schweighart
「Space.com」のメレディス・ガロファロによると、NASAは今後数週間にわたってソーラーセイルをテストし、システムの操縦性を検証して改善点を模索するようだ。
写真:NASA/Aero Animation/Ben Schweighart
NASAの発表によればガロファロは、「先進複合ソーラーセイルシステム宇宙船の軌道を上昇・下降させることで、将来ソーラーセイルを運用するための指針となる貴重なデータを収集することができる」と指摘した。
写真:Wiki Commons By NASA, Public Domain
NASAによると、ACS3は国際宇宙ステーションのほぼ2倍の高度で地球を周回しており、帆を広げたときには約80平方メートルで、テニスコートの半分ほどの大きさだという。
NASAの発表によれば、「帆が完全に展開されたことでソーラーセイルは、タイミングによっては肉眼でも観測できるかもしれない」という。その際は、ダイヤモンドのように輝いて見えるようだ。次に夜空を見上げるときには、ぜひソーラーセイルを探してみよう。
写真:NASA/Bill Ingalls