訴えを起こされた世界初の「AI」弁護士
「DoNotPay」は、世界初のロボット弁護士というふれこみで華々しくデビューした。
創設者はジョシュア・ブラウダー氏。法律界のロビン・フッドよろしく(弱きを助け、強きをくじく義賊のイメージ)、AIが法的な質問に答えるチャットボットであると「DoNotPay」のツイッター自己紹介欄にある。大企業に立ち向かう個人の消費者の味方になり、法的問題の解決を助けるということだ。
画像:「DoNotPay」のウェブサイト
このチャットボットは、はじめ、駐車違反の罰金に対する不服申し立てのツールとして開発された。それがみるみる成長し、驚くほど広範囲の法的サービスをカバーするにいたったのである。
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「DoNotPay」が提供するサービスには、保険の請求だったり、奨学金の申請だったり、離婚手続きやその他行政手続きなどがあり、生身の弁護士に頼むよりもそれらの業務をずっと安く引き受けてくれる。
画像:「DoNotPay」のウェブサイト
当然、このベンチャーは法曹界から不信の目を向けられている。『ビジネスインサイダー』が取り上げているように、「DoNotPay」は、エデルソン弁護士事務所から集団訴訟を起こされている。
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訴状では、このAI弁護士なるものが法学の学位なしで弁護士業務を行っているということが弾劾されている。とうぜん学位は法律知識の保証となり、弁護士として活動する資格を与えるものだ。
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この訴訟は、米カリフォルニア州サンフランシスコ郡上級裁判所で起こされている。原告の主張によると、この人工知能は法律の知識もなく、弁護士として活動するために必要なしかるべき監修も受けていない。
「利用者にとって不幸なことに、実際のところDoNotPayは、ロボットでも、弁護士でも、はたまた弁護士事務所でもない。DoNotPayは法学の学位も持たず、いかなる法廷組織に属してもおらず、弁護士によるいかなる監修も受けていない」と原告は訴えている。この訴状は同裁判所がウェブで公開している。
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原告のバックについているのは、ジェイ・エデルソンが創業したエデルソン弁護士事務所であるが、原告の代表者となっているのはジョナサン・ファリディアン弁護士である。ファリディアン弁護士はこのアプリケーションを実際に使ってみて、法的文書をいくつか作成してみた。たとえば催告書、少額訴訟の訴状、労働上の差別についての告訴など。
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その出来ばえは、標準を下回っていたという。
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ジョシュア・ブラウダーはツイッターで、ジェイ・エデルソンを非難している。「エデルソンさんは、大企業相手の訴訟でしこたま稼いだ弁護士ですが、そんな人がいま私たちの活動を『非弁行為』だとして攻撃しています。あらゆるAI製品の息の根を止めるような裁判所命令を要求しています」
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ジョシュア・ブラウダーはツイートを連ね、エデルソンは最近Facebookとの和解によって9750万ドルを勝ち取ったが、Facebookユーザーのごく一部が375ドルの和解金を受け取っただけで、複雑きわまりない請求フォームに嫌気が差した多くのユーザーたちは、びた一文受け取れなかったことに注意を促している。
画像:Twitter - Joshua Browder
ジェイ・エデルソンは、グーグル、アマゾン、アップルを相手に集団訴訟を起こし、ドルを億単位で勝ち取っている。『ニューヨーク・タイムズ』はそんな彼を、「シリコンバレーの嫌われ者」と伝えている。だがジョシュア・ブラウダーは、この金持ち弁護士と戦う覚悟でいるようだ。
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ところで、アメリカ法曹協会の会計官たちも、DoNotPayへの訴訟を起こしている。
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AI弁護士が法律業務に踏み込むことは(それこそDoNotPayがやろうとしていることだ)、いわゆる非弁行為(無許可の法律業務)にあたり、禁錮6ヶ月の軽犯罪に問われる可能性があるというのが、こちらの訴状の内容である。
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ジョシュア・ブラウダーはこれらの訴えをどう受け止めているのだろうか。「場合によっては、僕らのロボット弁護士を裁判で使うかもしれない」と、DoNotPayの創業者はどこまでも強気で通す。
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