ウクライナ軍のドローンがロシアのヘリを撃墜していた? 事実なら世界初の戦果
ウクライナ軍が2024年8月にドローンを飛ばし、飛行中だったロシア軍ヘリコプターを撃墜したという情報が出されている。事実だとすれば、世界初の事例となる可能性がある。
撃墜時のものとされる動画はインターネットで公開されており、ウクライナ当局が宣伝に活用している。だが、その動画からだけでは実際にヘリコプターが撃墜されたのかどうかは判断しがたい。
ドローンによる攻撃が行われたのは8月6日、ロシア、クルスク州の国境付近だ。また、ドローンを操作していたのはウクライナ保安庁の特殊部隊「アルファ」所属のオペレーターだという。同庁関係者が匿名で明かしている。
『キーウ・インディペンデント』紙は8月7日にその関係者に取材しており、今回の攻撃は「軍事史上、類例の無い特殊作戦」だったというコメントを得ている。
ウクライナのドローンがロシアのヘリコプター「Mi-28」に体当たりする動画は8月6日にはすでにSNS上で流通しており、翌日にはウクライナの活動家セルヒイ・ステルネンコ氏がテレグラム上に全編をアップロードしている。
画像:Wiki Commons By Artem Katranzhi, CC BY-SA 2.0
動画は画質が粗いが、ドローンの視点から撮影されたものだとわかる。オペレーターはあらかじめ敵ヘリコプターの位置を把握していたらしく、動画はドローンが素早く目標に接近していくところから始まっている。
画像:Telegram @ssternenko
目標の「Mi-28」ヘリコプターに近づくと、オペレーターはドローンをヘリの左側面に寄せていく。
画像:Telegram @ssternenko
動画ではそこでカットが入り、同じドローンらしきものがヘリコプターのテールローターに突っ込むところが映されている。だが、この動画からだけでは攻撃を受けたヘリコプターが撃墜されたかどうかは明らかではない。
画像:Telegram @ssternenko
『キーウ・インディペンデント』紙の取材に応えた匿名関係者いわく、攻撃を受けた「Mi-28」は墜落したという。ただし、同紙側はその主張について裏付けは取れなかったとしている。
画像:Telegram @ssternenko
動画はドローンがヘリコプターにぶつかる直前でカットされており、攻撃の成果を示す証拠はない。動画内の別カットでは、同じような状況だがドローンの位置が違い、ヘリコプターの上側から撮った映像も見られる。
画像:Telegram @ssternenko
匿名関係者はこう語っている:「(ウクライナ保安庁は)またしても高いレベルのプロ意識、創造性、イノベーションを発揮して、敵を攻撃することに成功した。これからもロシアの意表を突くような作戦を続けていく」
親ロシア派の軍事ブロガーで、テレグラムチャンネル「Voevoda Veshchaet」の管理人でもあるアレクセイ・ゼムツォフ氏は8月6日、ロシア軍のヘリコプターがドローン攻撃を受けて不時着を余儀なくされたと報告しており、ウクライナ側の主張を裏付ける形となっている。
ゼムツォフ氏はヘリコプターの機種や乗員の安否については述べていない。この攻撃を報じた『ニューズウィーク』誌も「ドローン攻撃を受けたヘリコプターが再起不能となったのかは不明」としている。
画像:Telegram @ssternenko
同紙のエリー・クック記者は「ウクライナはこれまでも継続的に、ロシアの高価値目標を狙っていた。ドローンやミサイルを使って、ヘリコプターのような、ウクライナに対する攻撃に用いられている装備を攻撃してきたのだ」と語り、今回の攻撃の価値を説明している。
クック記者によると、今回の攻撃はFPVドローンが飛行中のヘリコプターに損害を与えた初の事例となる可能性があるという。これはウクライナ当局も主張していることだ。
8月7日にはウクライナ軍戦略コミュニケーションセンターも動画を公開し、この攻撃は「ドローンがヘリコプターを攻撃した恐らく世界初の事例」だとしている。
7月31日には『フォーブス』誌がドネツク州でドローンによるヘリ攻撃があったと報じている。ただし、この攻撃には映像による証拠がなく、撃墜されたヘリの写真からおそらくドローン攻撃だったのではないかとされているに過ぎない。
画像:X @lost_warinua
また、この報道については別の見解もある。軍事ブロガーでヘリコプターパイロットでもあるアレクセイ・ヴォエヴォダ氏は8月2日に、このヘリはウクライナ軍が地上から発射した対空ロケット弾によって撃墜されたものだいう見方を示した。