日本はどのくらい?:2023年の「ビッグマック指数」で各国経済力を測定
1986年にイギリスの経済専門誌『エコノミスト』が考案した「ビッグマック指数」は、各国の為替レートなどの分析を可能にするきわめて実用的な経済指標である。 米ドルを基準にして各国にあるマクドナルドの「ビッグマック」価格を調べることで、どの通貨がドルに対して過小評価あるいは過大評価されているかを明らかにするいう仕組みだ。
ビッグマック指数を一人当たりのGDP(国内総生産)で調整するとPPP(購買力平価)が示されるほか、世界的な経済格差について実社会に基づく分かりやすい観察が行えるとされている。身近な商品を通して比較することで、難解な経済指標の理解を容易にするユニークな方法だ。それでは、2023年7月のデータおよび2023年11月の為替レートに基づいた世界のビッグマック価格を見ていこう。
まずは「お膝元」のハンバーガー価格をチェックしてみよう。アメリカのビッグマックの平均価格は5,58ドル。少し高く思われるが、その原因のひとつに近年のインフレによる値上がりがある。ちなみに2019年7月のビッグマック平均価格は4,71ドルで、2000年は2,24ドルだった。
世界一ビッグマックの値段が高い国はスイス。平均価格は6,70スイスフランで、約7,54ドルに相当する。これはスイスフランが38,5%割高であることを示し、GDPを加味しても世界で2番目に高いビッグマックとなる。
ノルウェーのビッグマックは70クローネで、世界で2番目に高い。クローネが24%割高であることが示され、GDPを考慮しても高額であり、アメリカと比較すると1,4%上となっている。
ウルグアイでビッグマックを買うのは考えものだ。259ペソは実質的にきわめて高額であるだけではなく、GDPを加味すれば地元住民にとって世界で一番高額なビッグマックとなる。アメリカより16%下の価格に設定されるはずが、22,9%上となっている。
『エコノミスト』誌によれば、アルゼンチンのビッグマックは1650ペソでアメリカより7,4%上の価格だが、同国の通貨はこの数ヶ月で急速に切り下げられ、インフレも急上昇しているため数値にするのは難しいという。経済危機の影響で、GDPを計算に入れると現在最も高価なハンバーガーのひとつだ。
ユーロ圏でビッグマックを買うと、国によって価格は異なるが、一般的にアメリカより若干高めとなる。GDPを加味するとユーロ圏は15,5%高く、実質ベースでは4,3%の割高となる。
スカンジナビア諸国のスウェーデンとデンマークでは、ビッグマックの価格はアメリカよりも上だ。GDPを加味するとスウェーデンよりもデンマークのビッグマックの方がお手頃価格となる。
イギリスのビッグマックは4,19ポンドでアメリカより3,4%安い。しかし一人当たりのGDPを考慮すると地元住民にとって4,5%割高となる。
メキシコでビッグマックの平均価格は約89ペソ。アメリカにおける価格をわずかに下回るが、GDPを加味すると地元住民にとってかなり高い買い物であり、約15,2%割高となる。
カナダのビッグマックの平均価格は7,05カナダドル。『エコノミスト』誌の為替レートによれば、アメリカより4%ほど安いが、GDPを考慮するとほんの少し割高になるという。
アラブ首長国連邦のビッグマックは約18ディルハムで、アメリカよりかなり格安だ。ドバイやアブダビを擁するアラブ首長国連邦はオイルマネーで潤っているが、GDPを加味してもアメリカより7,6%低めの設定だ。
オーストラリアのビッグマックは7,45豪ドル。ただし、為替レートを考慮するとアメリカよりも10%ほど安い価格設定だ(隣国のニュージーランドよりも少し安価)。GDPを加味しても、オーストラリアの方がお得といえる。
シンガポールも裕福な国だが、ビッグマックの値段はアメリカより13%ほど安く設定され、6,45シンガポールドルだ。GDPを計算に入れても低めであり、地元住民にとって約18%割安となる。
アルゼンチンとウルグアイをのぞけば、南米のビッグマックは手頃な価格設定となっている。ペルーの平均価格は14,90ソルで、アメリカで買うより26%ほど安い。GDPを加味してもペルーの方が割安だ。
2018年の調べによれば、中国で最も人気のあるマクドナルドのハンバーガーはビッグマックだという。2023年の価格は25元で、米国より約37%低い。GDPを加味してももかなり格安で、2022年1月以降はさらに安価になっている。
トルコでビッグマックを食べると95リラ程でアメリカより37%ほど安い。GDPを考慮しても約23%下回る数字だ。興味深いことに、2013年7月のビッグマックはアメリカより44.1%高い価格設定であり、近年のトルコの通貨変動とインフレをみてとることができる。
ヨーロッパで一番安くビッグマックを買える国はルーマニアだ。14,50レイでアメリカより約42%格安。GDPを加味しても33%ほど安価となる。
世界的に物価高のイメージができあがっている日本だが、ビッグマックの価格は低め。日本円で450円で、アメリカより43,2%安価だ。2011年は日本のビッグマックの方がアメリカよりも若干高額設定であったが、それ以降は価格が下がり続けている。
香港のビッグマックは、アメリカより約47%安い価格となっている。香港の1人当たりGDPはかなり高いので、購買力という点でも2番目に割安だ。
ウクライナのビッグマックは105フリヴニャで、アメリカのほぼ半額。戦時下にあるがハンバーガーの価格は比較的手頃となっている。ちなみにロシアではウクライナ侵攻により2022年5月にマクドナルドが撤退している。
南アフリカのビッグマックは49,9ランドで、アメリカよりはるかに安い。これは現地通貨がきわめて過小評価されていることを示唆している。GDPを加味してもアメリカより約39%安い。
牛が神聖な生き物とされるインドでは、牛肉の代わりにチキンを使用した「マハラジャ・マック」が食されている。そのため一概にはいえないが、209ルピーでアメリカより55%ほど安価となる。
ハンバーガーに38,000ルピアは高いと思われるかもしれないが、アメリカに比べればかなり低い値段だ。世界で2番目に安いビッグマックであることに加え、近年さらに価格が低下している。
世界で最もビッグマック価格が低いのは台湾。わずか75台湾ドルで、アメリカに比べて57%も格安だ。GDPを加味しても世界最安値となった。