2023年にもっとも食糧不足に苦しんだ国はどこか
国連世界食糧計画(WFP)の試算によると、2023年に食糧不足に陥った人の数は少なくとも3億4,500万人に上るという。世界人口の約4%が十分な食糧が得られなかったことになる。
国民一人当たりのGDPの低い国が多いこともあって、食糧危機の影響をもっとも強く受けたのはアフリカ大陸の国々だった。十分な食糧が得られなかった人の割合が多かった国9か国のうち、6か国がアフリカに位置している。以下、WFPの発表をもとにその9か国をチェックしてみよう。
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相次ぐ武力衝突や食糧危機に見舞われた結果、ソマリアはなんと人口の91%が食糧不足に苦しむこととなってしまった。
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ソマリアに続いたのはアフガニスタンで、人口の87%が食糧不足に陥った。同国では2021年にタリバンが政権を取り戻して以降、経済状況の悪化が続いている。
アフリカ西部にあるニジェールは一人当たりGDPが大変低く、昨年は人口の79%が食糧不足に苦しんだ。
ニジェールの隣国マリも長年政治的に不安定な状況が続いており、国民の71%の食糧が不足した。
ハイチも一人当たりGDPが最低水準であり、経済はほとんどを外国からの援助に依存している。その結果、人口の63%が十分な食糧を確保できないという事態に陥ってしまった。
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10年以上内戦が続いており、アサド政権による弾圧も受けているシリアも影響が深刻で、国民の59%が十分な食糧を得られなかった。
アフリカ西部のブルキナファソでも国民の57%が食糧不足に苦しんだ。
ニジェールの隣国チャドも、56%の人口が十分な食糧を得られなかった。
西アフリカのシエラレオネも人口の半分近く(48%)の食糧が不足した。同国では1991年から2001年まで長い内戦があり、いまでも一人当たりGDPは最低水準となってしまっている。
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国連によれば、これらの国以外にも食糧不足に苦しんだ国は多いとされ、中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国、エチオピア、ミャンマー、パキスタンなどが挙げられている。
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また、国連は食糧不足の危険が高まっている「ホットスポット」も指摘しており、レバノンやマラウイ、中米諸国(グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア)などが挙げられている。
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ロシアによる侵攻が続いているウクライナでも食糧事情が悪化していることが指摘されている。侵攻の結果食糧生産が減っているうえ、数百万人の避難民が生じていることが事態を悪化させているようだ。
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とはいえ、長期的に見れば食糧不足は解消される見込みだということは述べておこう。スイス紙『ル・タン』が指摘するように、1995年から2015年にかけて、世界人口は20億人増加したが食糧不足に苦しむ人の数は2億人減少している。
食糧不足がもっとも劇的に解消された国は中国とブラジルだ。この2か国は多くの人口を擁しているが、1995年から2015年にかけて、食糧不足に苦しむ人の数は中国で1億5,500万人、ブラジルで2,200万人減少した。
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地球上から食糧不足が一掃される日は来るのだろうか? 国連は「17の持続可能な目標」の2番目に「飢餓を終わらせ」ることを掲げており、2030年までの実現を目指している。立派な目標だが、現在の経済的・地政学的国際情勢に鑑みると道のりは険しいかもしれない。