16億年以上前に存在した微生物の痕跡が発見される:すべての生物の祖先である可能性も
『ディスカバー』誌によれば、オーストラリア国立大学の研究者グループが未知の微生物を発見したことを伝えた。「プロトステロール生物相」と命名されたそれは、オーストラリアの古代の海に覆われていた地域の岩石から採取されたという。
これは古代の微生物の痕跡であり、今から16億4,000万年以上前の地球に生息していたと科学者たちは結論付けた。太古の昔に絶滅した種やヒトを含めたすべての生物の祖先で、地球最初の捕食者であった可能性がある。
この古代の海は、現在オーストラリアのノーザンテリトリー州の一部にあたる。科学者たちは、この地域の先史時代の岩石から真核生物のつくりだした脂質の一種「ステロール」の痕跡を見つけだし、プロトステロール生物相の存在と、複雑な太古の生命の世界を発見したというのだ。
『マイアミ・タイムズ』紙によれば、プロトステロール生物相は微小な真核生物の一種である。真核生物とは細胞の中に核を持つ生物を指し、真菌類、動植物、ヒトを含めたほとんどの生物がこれに分類されるという。
この発見の立役者の一人であるベンジャミン・ネッターシェイム博士は最近のプレスリリースを通じ、プロトステロール生物相とは、ヒトを含めたすべての真核生物の最古の祖先であるようだと説明した。
写真:Twitter @marum_de
同博士は「これらの微生物は、世界中の海洋生態系に豊富に存在し、おそらく地球の歴史の大部分にわたって生態系を形成してきたのでしょう」とした。そして、科学者たちが長い間、初期の真核生物が残した痕跡を探し続けていたことにも言及した。
同博士によれば、初期の真核生物の物的証拠は極めて少なかったという。今回の発見は、真核生物と、初期の地球生物の進化に関するこれまでの見解を大きく変える可能性がある。
ネッターシェイム博士は、長い間科学者たちは真核生物が10億年以上前から古代の海を支配していたと考えていたが、その説を裏付ける証拠がほとんどなかったとした。
同博士はこう続けた:『科学者たちは「きわめて高い能力をもつ初期の真核生物が、なぜ古代世界のあらゆる水域に存在しなかったのだろう?」という初期進化における最大の謎のひとつを解明しようとしてきました』
さらにこう続けた:「私たちの研究はこの謎の答えとなります。プロトステロール生物相は見落とされていただけで、実際には世界中の古代の海や湖の底に豊富に存在していたことを示しています......科学者たちは、それを探す方法を知らなかっただけなのです」
ヒトを含む、現在生きている地球上のすべての真核生物は、古代の真核生物共通祖先(LECA)から進化してきた。そして、この全生物の古代の共通祖先の痕跡は、8億年前頃のものが最古とされていた。
ネッターシェイム博士は、今回発見された真核生物の一種であるプロトステロール生物相は、私たちの祖先がどのように進化してきたかについて多くのことを教えてくれるだろうとした。さらに、プロトステロール生物相は、地球上で最初の捕食者であった可能性があるという。
研究主任のヨッヘン・ブロックスはこう説明した:「私たちは、プロトステロール生物相が地球上で最初の捕食者で、バクテリアを狩り貪り食べていたのではないかと考えています」では、研究者たちはどのようにしてプロトステロール生物相を発見したのだろうか?これは、ノーベル賞を受賞した生化学者コンラート・ブロッホの研究に帰するところが大きい。
ドキュメンタリーサイト「Vice News」によれば、ブロッホは1990年代に、最古の真核生物はステロイド化合物の一種であるステロールの「原始バージョン」を生成していた可能性があるとしていた。そして、研究者たちが初期の真核生物の痕跡を見つけるために探していたのは、まさにこのバイオマーカー(指標)だった。
ブロックスはプレスリリースでこう語った:「私たちはまず、多くの技術を組み合わせて、現代の様々なステロイドを化石化しました。そうしなければ、何を探せばいいのかさえわからなかったでしょう」こうして、真核生物が残した科学的痕跡であるステロールが発見されたのだ。
さらにこう続けた:「探すべきものが特定できた後、これまで世界中の水路で採取されてきた十数億年前の岩石サンプルを調べたところ、同様の化石化したステロール分子が大量に見つかったのです」こうしてこの発見は、世界の進化に関する私たちの知識を変えることになったのだ。