メキシコ社会に深い影を落とすアボカド栽培:背後に広がる森林伐採、麻薬カルテル……

世界で人気のアボガド
「グリーンゴールド」
環境問題、麻薬カルテル、違法開発……
世界最大のアボカド生産地
大量の水を消費するアボカド栽培
事実に反する売り文句
脅威に直面する生産農家
アボカドの陰に隠された血なまぐさい事件
暗躍する犯罪組織
280平方キロメートルにおよぶ伐採地
開発許可は過去30年間、発行されていない
雨季が半減
公共貯水池の水を違法に利用する生産農家
干上がる地下水と湖
アボカド需要の高まり
情報公開を求める声
ロイター通信の調査
回答したのは1社のみ
米国・メキシコ当局は無策
世界で人気のアボガド

アボガドはヘルシーで美容にも良い食材として、世界各国で人気が高まっている。しかし、その需要を一手に引き受けるメキシコでは、アボカド生産がさまざまな問題を引き起こしているようだ。

 

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「グリーンゴールド」

生産地メキシコでは、健康効果よりもその経済効果から「グリーンゴールド」と呼ばれている。ワカモレをはじめ、アボカドを使った料理が一般化するにつれて各地で需要が高まっており、メキシコから米国に輸出されるアボカドの量は2019年以降、48%も増加したほどだ。

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環境問題、麻薬カルテル、違法開発……

ご存じの通りアボカドは栄養豊富な果物だが、原産地のミチョアカン州(メキシコ)では、アボカド栽培がもたらす環境への負荷が懸念されているほか、麻薬カルテルがアボカド農家にみかじめ料を要求したり、違法な開発によって地元住民の住処が奪われたりといった問題が起きているのだ。

 

世界最大のアボカド生産地

ミチョアカン州は世界最大のアボカド生産地であり、全世界のアボカド需要の3分の1をまかなっているほか、米国で消費されるアボカドはその5分の4がミチョアカン州産となっている。

大量の水を消費するアボカド栽培

アボカド栽培には広大な土地が必要となる上、トマト栽培の12倍という大量の水を消費する。しかし、持続可能性に関する配慮がなされているとは言い難く、米国ではアボカド輸入業者が訴えられる事態となってしまった。

事実に反する売り文句

メキシコ産アボカドの販売に際して、「持続可能性に配慮しています」や「責任をもって仕入れました」といったラベルを付したウェスト・パック・アボカド社とフレッシュ・デルモンテ・プロデュース社に対し、ラベルの内容が事実に反するとして、米国のNPO「Organic Consumers Association (OCA)」が訴訟を起こしたのだ。

 

 

脅威に直面する生産農家

訴訟に当たってOCAは環境保護・人権団体の「Climate Rights International (CRI)」から情報提供を受けたが、それによれば、メキシコではアボカド栽培に関連して地元住民が脅迫されるケースが30件あまりも記録されており、そのうち4件は誘拐事件、5件は殺人事件だという。

アボカドの陰に隠された血なまぐさい事件

ロイター通信は森林伐採に反対したために誘拐を経験したアボカド生産者のコメントとして、「米国の人々が口にするアボカドの陰には、血なまぐさい事件や犠牲者、行方不明者がいるということを知ってほしい」という言葉を伝えている。

暗躍する犯罪組織

また、スペイン紙『El País』によれば、ミチョアカン州ウルアパン市では2019年に、アボカド取引をめぐって対立した犯罪組織の仕業と見られる遺体19人分が発見されたという。一部の遺体は橋に吊るされていたほか、残りの遺体はバラバラに切断された状態で発見されたそうだ。

 

 

280平方キロメートルにおよぶ伐採地

メキシコの環境保護NPO「Guardián Forestal」と前出のCRIはアボカド栽培のために森林伐採された土地の面積について、ミチョアカン州とハリスコ州をあわせて7万エーカー(およそ280平方キロメートル)に上ると発表。

開発許可は過去30年間、発行されていない

メキシコでは森林を農地として利用する場合、当局の許可が必用となるが、ミチョアカン州の環境政策を担当するアレハンドロ・メンデス氏がロイター通信に語ったところによれば、そのような許可は過去30年間にわたって発行されていないそうだ。

雨季が半減

アボカド農園を作るために松林が伐採された結果、一体では雨期が6ヵ月から3ヵ月に半減。これが水源に悪影響を与え、小規模な地震が頻発するようになってしまった。

公共貯水池の水を違法に利用する生産農家

また、水不足が多発するようになると、アボカド生産者は共同貯水池から勝手に水を引くようになってしまった。ミチョアカン州の地元住民がロイター通信に語ったところによれば、一部の住民はアボカド農家が違法に設置したポンプを破壊して対抗しているという。

 

干上がる地下水と湖

さらに、『ガーディアン』紙によれば、ミチョアカン州の地下水は量が減る一方で、貯水池や湖も干上がるようになってしまったそうだ。専門家たちはメキシコ第2位の規模を誇るクイツェオ湖も10年以内に消滅してしまうおそれがあると警告している。

 

アボカド需要の高まり

しかし、米国では原産地の苦悩をよそに、アボカド需要が高まり続けている。2003年にはおよそ80万トンだったミチョアカン州のアボカド生産量は2022年に180万トンを突破し、米国での消費量も4倍に増加。取引額は30億ドルに達した。

情報公開を求める声

このような状況を問題視したOCAはアボカド輸入業者に対する訴訟という形で、アボカド生産が原産地の環境や住民に与える影響について情報公開を義務付けるよう求めている。

 

ロイター通信の調査

また、ロイター通信はメキシコ産のアボカドを取り扱っている米国の大手スーパーマーケット・外食チェーン9社に対し、生産・流通の過程で違法な森林伐採や暴力的な搾取が行われていないかどうかアンケートを行った。

回答したのは1社のみ

ところが、アンケートに回答したのはAmazon系列のスーパーマーケット「Whole Foods Market」のみだったという。同社は仕入れ先と協力し、「フェアトレード認証つきのアボカドをはじめ、きちんと生産・入荷されたものを優先的に販売している」と回答したそうだ。

 

米国・メキシコ当局は無策

ロイター通信によれば、在メキシコ米大使のケン・サラザール氏は今年2月に、違法な農園で栽培されたアボカドを米国市場に流通させるべきではないと宣言したというが、米国政府もメキシコ当局も対策を打ち出しておらず、野放しになっているのが実情だ。

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