辞職を禁じられたロシアの高級公務員たち:果たして抜け道は?
ロシアではウクライナとの戦争が継続する間、高級公務員は自身のポストを辞することを禁じられているという。ロシアの「iStories」を始め、複数の独立系メディアなどを通じて伝えられた。
iStoriesの記事の中で、ロシアの内部情報に通じる匿名の情報提供者4名の談話が引用されている。4人の内訳は、ロシア連邦保安局の元役人1名、政府戦略担当者1名、残り2名が政権高官の知人である。
オンラインサイト「ビジネスインサイダー」によれば、情報提供者の1人は次のようにiStoriesに語った。「長官がその職を辞そうとしたケースを、私は少なくとも2件知っています。彼らは辞職を禁じられたのみならず、その行為が罪に問われる可能性もほのめかされました」
情報提供者のひとり、政府高官の知人によると、ウクライナ戦争開始後には多くの役人が辞職の道を探ったが、その試みは阻止されたという。「仮に皆が辞めてしまえば、統制がとれなくなりますから」と、阻止の理由について情報提供者は解説する。
しかしながらiStoriesの報道によると、抜け道はある。具体的には健康上の理由をたてにするか、汚職に及ぶことだという。いずれかの方法で高官らはその職から解放されることができる。
『ニューズウィーク』誌もiStoriesの記事から情報提供者のコメントを引用している。「今は多くの役人が、高いお金を払ってでも、人目につかず、こっそりと離職する機会を求めている」
ウクライナ戦争に関して毎日情報更新を行なっている英国防省は、2023年5月の時点でロシアの高官は辞職を禁止されている模様だ、と述べた。
「ロシア連邦はどうやら現在、高官の辞職を実質的に禁止しており、“特別軍事作戦”が続く間、この措置も続く模様である」と、英国防省は2023年5月のウクライナ戦争関連の日報に書き込んでいる。
「この措置は、少なくとも地方支部の指導者、国防関係の役人、政権の構成員あたりまで適用されていると考えられる」と、英国防省は付け加える。
「多くの役人たちは内心、おそらく戦争に対して非常に懐疑的になりつつあり、また、“戦時下の機能不全状態”で指揮をとることに、しばしばストレスを経験しているだろう」と英国防省は分析する。
「離職者が出ることによって仕事が回らなくなることへの懸念はもちろん、ロシア当局の目的は、戦況悪化の印象を防ぐこと、そして戦争に対し連帯責任感を高めることだと思われる」と、英国防省は分析を続ける。
ロシア大統領府ドミトリー・ペスコフ報道官が述べるには、ロシアが高官らの辞任を禁止しているとする申し立ては事実に反しており、根も葉もない流言だという。「ビジネスインサイダー」はこのコメントをロシアのメディア「RBC Group」の記事から引用している。
ロシア政府のこの動き(役人の辞職を禁止しようとしていること)が報道されるのは、これが初めてではない。英『フィナンシャル・タイムズ』紙の報道によると、高官らの国外脱出を防ぐため、ロシア連邦保安局がパスポートを没収しているとのことだった。
『フィナンシャル・タイムズ』はさらに、ロシア連邦の企業重役にもこの措置が及んでいると論じていた。ドミトリー・ペスコフ報道官は当時、このパスポート押収措置は、“国家機密にかかわる”分野の政府高官、ロシア領内の労働者のみに適用される、と述べたという。