韓国史上最大の離婚劇? トップの浮気が原因で揺れる財閥SKグループ
1998年、韓国4大財閥のひとつSKグループ(旧鮮京グループ)の現会長、崔泰源(チェ・テウォン)と盧泰愚(ノ・テウ)元韓国大統領の娘である盧素英(ノ・ソヨン)が結婚。政財界の大物ふたりによる世紀の結婚と目された。
ふたりが出会ったのはアメリカのシカゴ大学。ともに経済学部の博士課程にいたときだった。結婚以来、一家とSKグループの資産はいや増すばかり。崔泰源は1998年にはSKグループの会長に就任、グループ全体の資産総額は327兆ウォン(約36兆円)以上に達している。
SKグループの代表的な構成企業には、韓国最大の通信業者SKテレコムや世界第二位(一位はサムスン)の半導体製造会社SKハイニックスが存在する。
写真:Web SK Group
だが、同グループが政財界で力をつけていく一方、夫婦の仲は危機に陥っていた。2015年、経済犯罪の罪を問われて数ヶ月間収監されていた崔泰源が不倫を告白、おまけに相手との間に子供までいたのだという。
そこから離婚紛争が始まったのだが、財閥の力があまりに大きい韓国のこと、家庭の問題では済まされない事態になってしまった。
というのも、日経アジア版が伝えているように、夫婦二人の間で財産が分割されるとSKグループにも大きな影響が出ることが避けられないからだ。昨年12月にはソウル家庭裁判所が離婚を認め、盧素英に665億ウォン(約69億円)払うよう崔泰源側に命じたが、SKグループの株式については分与を認めなかった。
崔泰源はSKグループ全体の17.5%にあたる株式を保有しており、盧素英(現在の保有株式割合は0.01%)はその半分を要求していた。『フォーブス』誌は崔泰源の個人資産を14億ドル(約2100億円)相当と推計している。
当然、盧素英側は控訴。韓国史上最大の離婚裁判となっただけでなく、今後の韓国における女性の立場を決める重要な裁判と位置づけてもいるようだ。
さらに、家庭裁判所の判決は財閥における崔泰源の影響力を保持しようとする配慮が感じられたものだったため、盧素英側はその点も批判。長年財閥に染み付いてきた男性優位の価値観により、女性には従属的な役割しか与えられていないと指摘している。
今回の裁判が特異なのは、これほど巨大な会社の行方が離婚裁判の結果に左右されるという点だ。しかも、盧素英は元大統領の娘として政治的にも強い影響力を持つのだからなおさらだ。
さらに、韓国の法律では、家事労働は夫婦の資産形成への寄与と見なされており、財産分与において正当に評価される必要がある。盧素英側はこの点も積極的に主張しており、生涯を家庭に尽くし、崔泰源との間の3人の子供も育てたことをアピールしている。
盧素英側の弁護士はさらに、盧素英の父親である盧泰愚元大統領(任期1988年~1993年)の政治的な影響力も夫婦の資産形成に寄与したと主張している。ただし、SKグループ側はこれを否定している。
ソウル家庭裁判所が命じた支払いは崔一族の資産のわずか1.2%にしかなっていない。韓国の専門家たちは、前述の事情を勘案すれば盧素英の取り分は30~40%はあってしかるべきだと首を傾げている。裁判は高等裁判所に持ち込まれて継続することになった以上、韓国財閥を揺るがす離婚問題はまだまだ続くことになりそうだ。