戦いを拒否したロシア兵への過酷な懲罰:極寒の中、立ち木に縛られ放置された兵士の映像が伝えられる
ロシア軍がウクライナ侵攻を開始してからというもの、各地でその残虐行為が明らかにされている。だが、その犠牲者はウクライナ人ばかりではないようだ。
一部のロシア兵たちが身内から苛烈な扱いを受けているというニュースは、開戦以来たびたび伝えられてきた。とりわけ、戦場で後退した者が罰として処刑されるというケースは、メディアによって盛んに取り上げられるようになっている。
米国当局は2023年10月、ロシア軍の司令官たちはウクライナ東部アウディイウカにおける戦闘の中で後退した自軍の兵士を処刑していると明かしたが、それは個別の兵士に対する処遇などというなまやさしいものではなかったようだ。
ロイター通信によれば、米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報担当調整官は記者団に対し、「ロシア軍は命令に従わない兵士を本当に処刑しているという情報がもたらされています」と発言。
同調整官は「さらに、ロシア軍の司令官は、ウクライナ軍の砲撃を受けて後退する素振りを見せようものなら部隊全体を処刑すると述べて、兵士たちを脅しているようです」と付け加えた。
このように、ロシア兵が身内の手によって処刑されるケースはたびたびメディアに取り上げられ、人々の注目を集めてきた。しかし、動員によって戦場に送られた人々が直面する問題はそれだけではないようだ。
実際、ロシアのNGO「良心的兵役拒否者の運動(MCO)」がTelegramチャンネルで公表したニュースでは、動員兵ゲンナジー・キスコロフ(27)が上官から受けた仕打ちが詳細に語られていた。
写真:Telegram @astrapress
キスコロフはドネツク州での戦闘に加わるのを拒否したとして、上官の命令で立木に縛り付けられ、「雨と寒さの中」一晩中そのまま放置されたという。
写真:Semyon Kiskorov via Telegram @astrapress
ゲンナジー・キスコロフに対する拷問の様子は、兄のセミョンが動画として撮影。セミョンもまた、弟とともに民間人として戦闘以外の任務を希望していたが、結局戦場に送られてしまっていた。
写真:Semyon Kiskorov via Telegram @astrapress
『デイリー・スター』紙の報道によれば、セミョンは弟のゲンナジーが良心的兵役拒否(信仰や信条のために従軍や戦闘を拒否すること)の姿勢をメモに記して上官に伝えた、と説明しているという。
写真:Semyon Kiskorov via Telegram @astrapress
一方、セミョンの身にも危険が迫っている。兄に対する拷問の様子をSNS上で拡散したためだ。『デイリー・スター』紙によれば、セミョンはTelegram投稿の中で、公の場で自らがとった言動が原因で最前線に送られることになると述べたようだ。
写真:Semyon Kiskorov via Telegram @astrapress
セミョンは投稿の中で、「私の処遇はこれから決定されます。立木に縛り付けるのか、”ストームトルーパー”として前線に送られるのか、それとも命令違反で刑事訴追されるのでしょうか。いずれにしても、兵役は私の信仰に反するものだと断言できます」と書いている。
セミョンはさらに、「聖書は敵を殺すのではなく愛しなさい、と説いています。武器を利用して敵を打ち砕くというのは私の信仰に反するため、ロシア連邦軍で兵役義務を果たすことはできません」と書き加えた。
MCOの報告によれば、ゲンナジーは拷問によって良心的兵役拒否の表明を撤回し、最終的には最前線で戦闘に従事することに同意したという。
一方、ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」はこの件について、キスコロフ兄弟の妻らがロシア軍検察当局に上官の蛮行を訴えたと報道。MCOのコーディネーターを務めるエレナ・ポポワ氏もロシア軍検察当局と連絡を取ったという。
写真:Telegram @stoparmy
しかし、ゲンナジー・キスコロフに対する仕打ちが国際的な注目を集めるようになると、彼の上官はキスコロフ兄弟に発言を取り消すよう圧力をかけ始め、ゲンナジーを立木に縛り付けたのはウクライナ軍だと訂正するよう求めたらしい。
MCOによれば、この圧力を受けてセミョンは妻と電話で連絡を取り、この件に関する彼女の言動も撤回するよう求めたそうだ。『ニューズウィーク』誌は、MCOが報告書の中でセミョンの「生命と健康状態について非常に懸念している」と伝えている。