「生まれ変わり」は実在する:50年にわたり輪廻転生の事例を追った米研究者たちの報告
輪廻転生はアジアの宗教において一般的な考え方で、ヒンドゥー教や仏教でも受け入れられている。しかし、西洋文化ではあまり受け入れられないことも多い。その輪廻転生を50年近く研究している専門家グループが意外なことにアメリカにある。ヴァージニア大学精神医学・神経行動学部の知覚研究科だ。
この研究グループは精神科医だった故イアン・スティーヴンソン氏の主導でできたもので、現在は小児精神科医のジム・タッカー氏が引き継いでいる。ヴァージニア大学によると、グループはこれまで「転生」を訴える症例を世界中から2,500以上も収集してきたという。
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大学のウェブページに掲載されているタッカー博士の説明によると、子供が2~5歳の時に前世の記憶について語るというのが一般的で、それ以降はその記憶は薄れていくのが普通だという。
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それくらいの年齢の子供はいろいろと想像しがちなことも確かだが、前世の記憶を語る子供に特徴的なのは「前の両親が懐かしい」という発言をすることだという。心理学者のトヴァ・クラインによると、これは幼児の発言としては非常に珍しいとされている。『ワシントン・ポスト』紙が伝えている。
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タッカー博士いわく、前世の記憶について語る子供はほかには次のようなことを言いがちだという:「大きくなったとき、前はこうだった(眼が青かった、町で働いていた……など)」「妻・夫・子供がいたことがある」「死因はこうだった(交通事故、転落……)」「こんな記憶がある(あの家に住んでいたことがある、あなたの父親だったことがある……)」
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また、小児精神科医としてタッカー博士が言うことには、子供は時に、それまでの経験や家庭環境からだけでは説明できない不自然な好みや恐怖症を抱くことがあるのだという。
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タッカー博士は自著『Return to Lifge(原題)』で子供が抱えるそういった恐怖感を「PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準にもなる、回避的行動と同様のもの」としている。たとえば、溺れた記憶を持つ子供はしばしば水を怖がるとされる。
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タッカー博士が記録している症例の中でもとりわけ興味深いのがジェームズ・ライニンガーのものだ。ルイジアナに住んでいたジェームズ少年は2000年、2歳のときから飛行機が墜落するという悪夢を見るようになった。
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ジェームズ少年はのちに、自分は第二次世界大戦時の米軍戦闘機パイロットで、日本軍に撃ち落とされた、と説明するようになった。そして、発艦した空母の名前や戦友のフルネーム、最期に撃ち落とされた場所まで語ったという。
ジェームズ少年の証言を調査していたタッカー博士はやがて、実際に第二次世界大戦で戦死したパイロット、ジェームズ・ヒューストン(写真)に行き当たる。この症例の調査結果は先述の博士の自著や、Netflixのドキュメンタリー『Files of the Unexplained』などで扱われている。
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ジェームズ少年の例のように、タッカー博士率いる知覚研究科のチームが集めた症例には、かつて実在した人物の人生と一致する証言が子供から得られることも少なくない。
しかも博士によると、そういった過去の人物の検視記録などを検証すると、その人の傷やあざなどと一致する特徴を持っている子供もいるのだという。
タッカー博士によると症例の7割は殺人や自殺、事故など暴力的な不慮の死を記憶しているとされ、35%以上が死因に関連したものに強い恐怖を覚えているのだという。また、そのようにして思い出されるのは若くして亡くなった人物の記憶であることが多いともされる。
アメリカの作家、バーバラ・グラハムはこういった症例に基づいた小説を書いているうえ、自身も第二次世界大戦中にホロコーストで殺された記憶を思い出したと語っている:「不慮の死を迎えた人の方が、95歳で寝ているうちに大往生した人よりも強い記憶を残すというのは理にかなっています」
『サイコロジー・トゥデイ』誌のインタビューを受けたグラハムは、彼女の治療に当たったセラピストから、1940年代末から50年代初頭にかけて生まれた人にはグラハムのようにホロコーストの記憶を持っている人が多いと聞かされたと語っている。
『ワシントン・ポスト』紙はそのような事例をひとつ取り上げて検証してみている。ある夫婦の2歳の娘がニーナという女の子について話し始め、その子は「腕に番号がついて」おり、「そのせいで悲しそうにしている」と語ったのだという。
やがて夫妻はタッカー博士のことを知り、博士は夫妻や娘と面会した。その結果博士は、夫妻の話は説得的ではあるが、具体的な詳細には不明な点も多く調査は続けられなかったとしている。「またひとつ、真相の分からないアメリカでの症例が増えました」と博士は『ワシントン・ポスト』紙に語っている。
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詳細を追い切れなかった事例以外にも、親によってただの妄想だとして片付けられたり、より強圧的に抑圧された例が多くあるはずだとタッカー博士は考えている。輪廻転生と言う考え方はとくに西洋では忌避の対象となりやすいからだ。
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かつてハリウッド俳優だったという記憶を持っていたと主張したライアン・ハモンズが良い例だ。ライアンの母親によると、この主張が公になった際、周りの人は母親にライアンは「イエスを見いだすべき」だと述べ、親を責めたという。『ワシントン・ポスト』紙が伝えている。
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従って、タッカー博士が収集した症例の多くが輪廻転生を受け入れる文化が存在する地域のものであるのも驚くに値しない。とはいえ、実際に転生などということがあり得るのか、あるいはまったく不可能なのかを証明する科学的証拠は、どちらも確実なものが存在するわけではない。
転生研究を創始したイアン・スティーヴンソン氏は1999年に『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューを受けており、そこではこう語っている:「科学は既存の認識を発展させるものであって、それにそぐわないデータを科学者に直視させ、既存の概念に挑戦させるのは大変難しい」