米軍車両が欧州内をロシア方面へ移動:NATOによるロシア牽制へ
最近、米国はドイツに配備されていた戦車や戦闘車両をポーランドのポドヴィツに移動させたが、ロシアはこの動きに苛立ちを募らせているようだ。
ポーランド局「ラジオZET」は、米軍の車列がドイツのマンハイムにある基地からポドヴィツに向かう様子を公開。なお、車両の移送は今年9月いっぱい行われることになっているとのこと。
ポドヴィツにはNATOの事前配備集積(APS)施設があり、飛行場にも隣接しているため、有事には装備品を迅速に前線に送り出すことができるのだ。
『ニューズウィーク』誌いわく、移送される装備品は最終的に戦車87台、歩兵戦闘車150台あまり、自走榴弾砲18台に達する見込み。また、今年6月には、M1エイブラムス戦車14台がすでに到着したという。
同月にはさらに、M88装甲回収車もポドヴィツに到着。米陸軍の元大佐で現在は欧州政策分析センター(CEPA)のシニア研究員を務めるレイ・ヴォイチク氏はこのAPS施設について、最終的には装甲車両を備えた一個旅団を展開することができる規模になる、と『ニューズウィーク』誌上で解説している。
『キーウ・ポスト』紙によれば、このようなユニットは「旅団戦闘団」と呼ばれており、「米軍が展開する包括的な機動編成としては基本単位」になるものだという。また、専属の「戦闘支援・後方支援部隊や柔軟な砲兵部隊」も付属するとのこと。
『ニューズウィーク』誌によれば、ポドヴィツに集結した旅団を派遣するのにかかる時間はわずか数日。このような旅団を、艦船を用いて展開すれば1ヵ月はかかるため、圧倒的な時間の短縮となる。同時に、ロシア政府に対する強い抑止力になるだろう。
前出のヴォイチク氏いわく:「NATOの東端を『鉄壁化』するために同盟国が協力して行う取り組みとして、意義深いものです。負担の分担、抑止力、防衛協力の好例だと言えます」
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同氏はさらに、「2014年以来、私たちは(NATOの)東部地域でプレゼンスを強化してきましたが、戦闘能力は限定的でした。今では当時より充実していますが、それでも、米国とNATOの前線防衛にはさらに多くの取り組みが必要です」と付け加えている。
NATOは今年7月に、東部地域の強化に乗り出すという目標を改めて表明。公式ウェブサイトはこれについて、「NATOの抑止力と防衛態勢にとって不可欠な要素」としたが、実際にはロシアに対する毅然とした姿勢を見せるのが狙いだろう。
同サイトはまた、「NATOはロシアがとった行動に対する直接的な帰結として、域内の東部における軍事プレゼンスを強化した。ロシアは近隣諸国や環大西洋地域に対し、攻撃的な姿勢をとり続けている」と指摘。
さらに、「ロシアは加盟国の安全や、欧州大西洋地域の平和と安定をおびやかすもっとも重大かつ直接的な脅威だ」と結論づけた。
ポドヴィツへの車両輸送が開始されたのは、シフィエントシュフ(ポーランド)に1,000人規模の米軍部隊を収容できる新基地が完成してからわずか1ヵ月後のことだった。『キーウ・ポスト』紙によれば、この基地はNATO軍の訓練施設としても利用されるとのこと。
シフィエントシュフの基地には即応態勢にある部隊が交代で駐留することになっており、一帯で戦闘が発生した場合には、この基地から米軍が出動する可能性が高い。
NATO投資部門のディレクターを務めるダリウシュ・メンドララ氏いわく:「この基地は集積地に移送する補給品を迅速に受け取ったり、戦闘部隊の編制を行ったりするためにも利用されます」
『ニューズウィーク』誌は米軍が行った車両移送について、「ウクライナへの全面侵攻をめぐって、ロシアとの緊張が高まる中で行われたものだ」とした。
実際、ロシア側はエストニアおよびフィンランドとの国境からおよそ160キロメートルの地点に、最新式の戦車部隊を移動させている。
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