核戦争に備えて米国政府が国民のために作成した「防衛マニュアル」とは
2022年にロシアがウクライナに侵攻を開始して以来、世界はふたたび緊張感に包まれている。さらに核を保有しているとされるイスラエルとイランが対立を深めたことで、核戦争に発展する可能性が取り沙汰されている。しかし、こうした事態は冷戦期を経験した人々にとっては見覚えのある状況なのではないだろうか。
とはいえ、たいていの人は核兵器が万が一使用されてしまった場合、どのような対応をとればよいかわからないはずだ。そこで今回は、米国政府が最悪の事態を想定して作成したマニュアルを取り上げ、危機に備えることにしよう。
米国政府のウェブサイトready.govは「核爆発の数分前にアラートが発令される場合とされない場合がある」としている。したがって、対処法を確認して心の準備をしておくに越したことはない。
爆心地付近にいる人々については生き残る見込みはほとんどないが、離れている場合には、適切な準備と知識があれば生き延びることができるかもしれない。
放射性降下物は非常に危険だ。そのため、米国政府は市民に対し、核爆発が発生したり間もなく発生することがわかっている場合には直ちに屋内に避難するよう推奨している。最も安全なのはレンガやコンクリート造りの建物だという。
次に、汚染された衣服を脱ごう。衣服に覆われていなかった部分の皮膚には、放射性降下物が付着している可能性があるので洗い流すこと。ただし、汚染の拡大を防ぐため目や鼻、口には触れてはならない。
屋内でもっとも避難場所に適しているのは建物中央だ。地下室があればなおよい。米国政府はさらに、家族以外の人とは2メートル以上の距離を保ち、可能であればマスクを着用するよう推奨している。
ひとたび屋内に避難したら、屋外に出ないこと。米国政府のガイドラインでは、自治体から特別な指示がない限り、最低72時間は屋内に留まらなくてはならないとされている。
また、ペットの出入りによって放射性物質が屋内に持ち込まれてしまう可能性があるので、ペットも屋内に留まらなくてはならない。
避難中はニュースを逐一追いかけるようにしよう。米国政府は市民に対し、アクセスできるメディアをすべて利用して、外出できるようになる時期や安全な行き先といった情報を集めるよう推奨している。
核爆発によってテレビや携帯電話の電波が途絶えてしまう可能性も高いため、手回しラジオや電池式ラジオが有効な情報収集の手段になるはずだ。
写真: James Case from Philadelphia, Mississippi, U.S.A., Wikicommons
核爆発の発生後、少なくとも72時間は屋内に留まらなくてはならないとされている。しかし、専門家の指摘によれば、2週間屋内で生活できればさらに安全性が高まるという。
避難中は飲食物にも注意が必要だ。米国政府のガイドラインでは、包装された製品や屋内にある製品以外は口にしないことが推奨されている。
屋外に置かれていた飲食物は放射性降下物によって汚染されている可能性が高いため、絶対に避けるようにしよう。缶詰や包装された食品のほか、冷蔵庫や冷凍庫の中にあった食品も安心だ。
ボトル入りの水や飲み物が手に入らない場合、トイレのタンクや給湯器内の水なら安全に利用することができる。水道水は最後の手段であり、口にしてよいのは生死に関わる場合のみだ。
怪我人や病人が出た場合、一番よいのは避難場所から出ずに自治体に連絡し、いつどこで医療ケアを受けることができるのか指示を仰ぐことだ。緊急の場合は、緊急医療サービスに連絡しよう。
生き残るカギは普段から心の準備をしておくこと。日々、長時間を過ごす場所の近くで避難場所を見つけておくとよいだろう。しかし、核戦争が都合のよいタイミングで始まるとは限らない。そこで、通勤ルートなどにも避難できる場所がないか確認しておこう。
避難場所として最適なのは大きな建物の中央部や地下だ。車やトレーラーハウスでは十分に身を守ることはできないので注意が必要だろう。
備えあれば憂いなし。そこで、自宅や職場に防災グッズを準備しおくのがよいだろう。少なくとも、ボトル入りの水と救急箱、レトルト食品は欠かせない。