米国の放射性廃棄物、行き場のないまま施設内で増加の一途をたどる
化石燃料への依存から脱却することが求められる昨今、今後のエネルギー源として原子力にふたたび注目が集まっている。しかし、現在の原子力発電では、数百年にわたって高い放射能を保ち続ける危険な廃棄物が生じてしまうのも事実だ。
原子力発電の一般利用がスタートしてからというもの、米国では原子力の専門家や立法府が放射性廃棄物を安全に保管する方法を模索するため頭を悩ませてきた。というのも、こうした廃棄物はその場で貯蔵や処理が行われているためだ。
原子力エネルギー協会(NEI)によれば、米国には全土で発生する放射性廃棄物を半永久的に埋蔵しておけるような土地はないという。
同協会いわく、米国で発生する放射性廃棄物の行方はすべて追跡されており、「乾式キャスク」と呼ばれる金属製の容器に詰められ、発電所内に保存されているとのこと。
米国エネルギー省は放射性廃棄物の保管プロセスについて、ウェブサイト上で「米国で発生する使用済み核燃料は、まず鋼鉄張りのコンクリート製プールで水中に保管され、その後、2次貯蔵庫へと移されます」と解説している。
同サイトによれば、1次貯蔵庫のプールから取り出された放射性廃棄物は、「鋼鉄とコンクリートでできた乾式キャスク」に格納されるという。また、場合によっては「遮蔽機能」をもつ他の物質でできたシールド内に保管されることもあるそうだ。
放射性廃棄物はそれが生じた発電所の片隅で、半永久的な処理法が確立されるのを静かに待ち続けている。
もちろん、まったく対策がなされなかったわけではない。たとえば、1987年にはネバダ州ユッカマウンテンに放射性廃棄物の最終処分場を建設する計画がなされている。しかし、さまざまな政治的課題により計画は頓挫、放射性廃棄物は行くあてを失ってしまった。
これにより、米国では放射性廃棄物が何十年にもわたって発電所内で増え続けるという事態に陥っている。では、その量は一体どれほどなのだろう?
米国エネルギー省によれば、同国内でこれまでに生じた放射性廃棄物はおよそ9万トン相当だというが、発電量の膨大さを思えばこの量はかなり少ないと言えるだろう。
米国で最終処分を待つ放射性廃棄物は1950年代から増える一方だが、その量はサッカー場に積み上げられるほど少ないのだ。
しかし、量は意外と少ないとはいえ、放射性廃棄物を適切かつ半永久的に保管できる施設は不可欠だ。そして、最終処分場建設をめぐる米国の試みは、今のところことごとく失敗に終わっている。
『サイエンティフィック・アメリカン』誌によれば、米国の第5巡回区控訴裁判所は8月、原子力規制委員会(NRC)がテキサス州内で「原子炉から離れた場所にある」民間の貯蔵施設を認可するのは違法だとの判断を下したという。
これまでにも、地元住民の反対や連邦議会の判断、裁判所の判決によって各地で最終処分場の建設計画が白紙に戻されているが、今回の判決によってテキサス州も「処分場反対組」に加わったこととなる。
『サイエンティフィック・アメリカン』誌のジェフリー・フェタス氏いわく:「我々が置かれている状況は60年前から進歩していません。放射性廃棄物は原子力施設内で地上に放置されており、最終処分場の地下に保管するための長期計画は策定されていないのです」
最終処分場をめぐる一連の反対運動にもかかわらず、フェタス氏は放射性廃棄物の半永久的な保管は不可能ではないという見解を示した。ただし、そのためには米国内の利害関係者すべてが合意に達する必要があり、かなりの時間がかかると見られている。