突如として地球の自転がスピードアップ、一体なぜ?
精度の高い原子時計を用いて地球の自転速度が測定されるようになったのは1960年代のこと。それから半世紀あまりが経った2022年6月29日、異常な値が研究者たちの注目を集めることとなった。24時間より1.59ミリ秒短い周期で地球が一周し、測定開始以来最短の1日を記録したのだ。
さらに、7月26日も通常より1.50ミリ秒短い1日となり、6月29日の記録に迫った。一体なぜ、地球の自転が普段より速くなっているのだろうか?決定的な理由はまだわかっていないが、科学者たちはいくつかの仮説を立てている。
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『ニューヨーク・ポスト』紙によれば、一部の専門家たちは氷冠の融解と再凍結が自転速度の不規則な変動を引き起していると考えているようだ。
また、地震によって1日の長さが短くなることもある。たとえば、2004年に発生したスマトラ島沖地震では、地殻の変動により1日の長さが3マイクロ秒近く短縮された。
「チャンドラー・ウォブル」とは地球自転軸の微小かつ不規則な振動のことであり、その原因については様々な仮説が立てられている。
画像:Chuttersnap / Unsplash
一方 NASAは、エルニーニョ現象のもたらす強風によって地球の自転速度が低下し、1日の長さが数分の1ミリ秒長くなることがあるとしている。エルニーニョ現象とは、数年ごとに発生する海面温度の上昇のことである。
基本的に、質量が地球の中心に向かって移動すると自転速度は加速する。フィギュアスケーターがスピンする際に腕を縮めて加速するのを思い浮かべれば、わかりやすいだろう。逆に、質量を外側に押し出すような地殻変動は自転速度を減速させることになる。
恐竜時代を含むような長期的なタイムスケールで見れば、地球の自転速度は以前より遅くなっているという。
14億年前、地球の1日は19時間未満だった。平均すると地球の1日は短くなるどころか長くなり続けており、毎年およそ7万4,000 分の1秒ずつ伸びているのだ。
この現象の主な原因は月の存在だ。月の重力によって海面が引っ張られ、潮汐摩擦が生じることで地球の自転速度は徐々に遅くなっているのだ。
写真:Anderson Rian / Unsplash
そこで、地球の自転に時計を合わせるため、国際電気通信連合(ITU)は6月または12月にうるう秒を挿入することで微調節を行っており、最近では2016年にこの措置がとられた。
初めてうるう秒が挿入されたのは1972年。次回は2022年12月が予定されているが地球の自転速度が上がっているため、この措置が必要になる可能性は低い。
GPS衛星に用いられる原子時計は自転速度の変動とは無関係に時を刻んでいるため、地球の自転速度が上がるとその影響を受けることになる。
地球の自転速度が上がると地表面が同じ位置に達するのにかかる時間は短くなるが、1日あたり0.5ミリ秒の変化は赤道上で26センチメートルの差に相当するため、GPSの機能に支障をきたすことになるのだ。
さらに、NTP(ネットワーク・タイム・プロトコル)サーバーと同期しているスマートフォンやコンピューター、通信システムにも混乱が生じるおそれもある。
こういった問題を解決するため、このまま1日の長さが短くなり続けた場合には、史上初となる「負のうるう秒」が用いられることになるかもしれない。これは、時刻を1秒飛ばすことで、時計を地球の自転速度に追いつかせるという措置だ。