画像で追う:ブラジル議会襲撃の顛末
1月8日(日)、前ブラジル大統領ジャイル・ボルソナロの支持者たちが首都ブラジリアに集まった。数千人に膨らんだ支持者たちは暴徒と化し、政府庁舎に押し入り略奪行為に及んだのだ。
ブラジル国旗の色である緑と黄色を身にまとった前大統領の支持者たちは、国会議事堂の屋根に上り、窓ガラスを割って建物内に侵入し、庁舎内の家具や美術品を破壊。駆け付けた警察と激しい衝突を繰り広げた。
去年の大統領選挙では左派のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァが当選したが、これを快く思わないボルソナロ前大統領支持派たちは不満を募らせていた。そし1月7日(土)にバスやマイカーで首都ブラジリアに乗り込んでいたのだ。
昨年10月から、国会議事堂、最高裁判所、大統領府が向かい合う首都ブラジリアの中心「三権広場」から約7kmの距離に、こうしたボルソナロ前大統領支持派が集まるキャンプが形成されていた。現政権に反対する過激派の拠点となっていたのだ。
数日前からこうした反乱組織から何人もの逮捕者が出ていたが、首都ブラジリアから送り込まれた警察の数は決して十分ではなかった。
今回の大規模暴動を受けてイバネス・ロシャ知事は、ブラジリア連邦直轄区の公安長官アンデルソン・トーレス(前政権で法相を務めていた)を解任した。
ただし当のアンダーソン・トーレス公安長官は、ボルソナロ前大統領と同じく昨年末から米国に滞在している。ボルソナロ前代大統領は9日(月)、「腹部の痛みを訴え」入院し、ベッドの上から自身の写真を投稿した。
ブラジリアのイバネイス・ロシャ知事もまた、最高裁判所判事アレクサンドル・デ・モラエスにより90日間の停職処分を言い渡された。
最高裁判所のアレクサンドル・デ・モラエス判事は、ブラジリア当局が今回のクーデターおよび略奪行為を黙認したと見ている。
モラエス判事はこうした状況について声明を出し、「当初デモとされていた集まりはSNSを通じて情報が拡散され、規模が拡大した。また、三権広場で行われた襲撃行為は公安当局による同意、さらには実質的な加担があって初めて起こりうるものだ」とブラジリア当局を断じた。
政府庁舎の警備を担うブラジリアの憲兵隊について、襲撃を食い止めなかったことを確認できる映像がいくつも見つかっている。その中には、憲兵が暴徒と一緒に写真を撮ったものさえあるという。
画像は1月8日にボルソナロ派の過激派たちが襲い掛かった場所のひとつ。
暴徒たちは石や材木を手に国会議事堂、最高裁判所そして大統領府に押し入り、破壊行為に及んだ。
大統領府、別名「プラナルト宮殿」を襲った暴徒たちが可能な限りの略奪をするつもりでいたことは明らかだ。
市内にはクーデターを呼びかけるポスターや横断幕があちこちに貼りだされていた。暴徒化した人々は、新大統領ルーラによる統治を阻止すべく軍がクーデターを起こすべきとしていたのだ。
首府を襲うという暴挙に加わった々は「神はすべてにまさる」、「神・祖国・家族」といったスローガンを掲げていた。
暴徒化した人々は警察の封鎖をいとも簡単に突破し、政府庁舎に押し入った。
さらに多くの治安部隊が到着したが、ボルソナロ氏支持者たちは引き下がらなかった。画像は議会前の池に落とされた警察車両。
実際、ソーシャルネットワークやメディアを通じ、馬に乗った警察官が暴徒たちに殴られ、地面に叩きつけられる映像が流布している。
その間にも国会議事堂や最高裁判所は暴徒たちに荒らされていった。しかし1月8日(日)の夜、ついに国軍が暴徒たちを退去させることに成功した。ボルソナロ氏支持派の人々が設置した数多く尾のテントは警察により取り払われつつある。
時間が経つにつれて逮捕者数は増加、ついに1,200人を突破したという。また、資金提供者も特定されていった。フラビオ・ディノ法務大臣によれば、暴動に加わった者は20年の禁固刑に処される可能性もあるという。
連邦最高裁のアレクサンドル・デ・モラエス判事は、「テロリストはもちろん、資金提供者、扇動者、そして元・現職の当局者も民主主義と共和国制度に対するテロの責任を問われることになるだろう」と断じた。
深刻な事態に直面したルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、連邦政府が首都の治安維持に介入することを決定した。
これは「社会秩序に重大なリスク」がある場合に発令可能とされる、1988年憲法に定められた法令だ。連邦政府が州の権力に介入することが認められている。
ルーラ大統領は声明を通じ、首都で行われたテロ行為を強く非難した:「狂信的なナチス、狂信的なファシストと呼べるこうした人々は、この国の歴史においてかつて一度も行われたことのないことを行った」
さらに、「国旗を巻き付け、ブラジル代表のジャージを着て、ナショナリストを気取り、ブラジル人だと自負して今回の暴動のような行為に走る者が出ないよう、暴徒たちをしっかり罰することが必要だ」と続けた。
ルーラ現大統領は、前大統領ジャイル・ボルソナロに対しても強い非難を口にした:「彼は殺戮者として暴動を仕掛け、挑発し、誰もが知っている通りSNSを通じていまだに扇動を続けているのだ」
ジャイル・ボルソナロ前大統領は政権時代に何度も最高裁を攻撃していた。アレクサンドル・デ・モラエス最高裁判事を侮辱していたばかりか軍事介入まで呼び掛けていた。しかも、フェイクニュースの拡散など、さまざまな疑惑に関する司法調査を受け入れようとしなかった。
ボルソナロ前大統領の息子エドゥアルド・ボルソナロは、ジャーナリストのレダ・ナグレのYoutubeチャンネルでのインタビューにおいて、ボルソナロ政権に対して街頭で行われていた抗議行動に対し、「AI-5」(独裁的かつ暴力的な法令)を発令するという脅しまで行っている。
8日(日)にブラジリアで行われた大統領府や国会議事堂への侵略行為について、世界各国の指導者が非難の声を挙げた。その中には、ジョー・バイデン米国大統領も含まれている。
ジョー・バイデン米大統領は、「民主制度に対し暴力を行使することは決して容認できるものではない。我々はルーラ大統領とともに、こうした暴力行為を直ちに停止するよう求める」とした。
イグナシオ・イバネス駐ブラジルEU大使は「ブラジル政府を全面的に支援する」ことを宣言。国連特別報告者クレマン・ヴールもまた、「こうした行為、およびブラジルの民主的選挙を弱体化させるあらゆる試みを非難する」という国際機関の立場を明らかにした。