現在核兵器を保有している国、保有しているとみられる国はいったいどこ?

核兵器を保有する国とは
9ヵ国が公式に保有
ロシア:最大の核武装国
配備数も最多
実験のみ
アメリカ:広島と長崎に投下
実験も継続
二番目の規模
中国:アジア初の核武装国
規模は小さいが拡大傾向
フランス:海空に配備
イギリス:潜水艦主体の運用
インド:長射程のものはなし
パキスタン:核武装する唯一のイスラム教国
北朝鮮:核武装を主張、脅威を振りまく
イスラエル:公然の秘密
核共有
イラン:軍事目的の懸念
サウジアラビア:パキスタンの支援が?
アルメニア:虚勢か事実か
旧ソ連構成国:かつて保有していたが返還
南アフリカ:かつて所有していたが今は放棄
スペイン:核開発を計画、のちに断念
計画していた国は多い
核拡散防止条約(NPT)
新たな枠組みが必要?
核兵器を保有する国とは

ロシアによるウクライナ侵攻が長引くなか、昨年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲したことに端を発する戦闘が激化している。こうした情勢を受けて、全面核戦争の可能性について考えるひとも多いだろう。仮にそうなった時に、核兵器を保有していてそれを使用することができるのはどんな国だろうか?

9ヵ国が公式に保有

現在、核兵器を保有しているのは9ヵ国。だが、公式には認めていないものの保有を疑われている国もある。

ロシア:最大の核武装国

核兵器に関していうならば、ロシアは唯一にして最大の超大国であると言える。ロシアは世界中のあらゆる国に同時に核攻撃を仕掛けることもできるし、自らが攻撃された時には報復することもできるからだ。これはつまり、核戦略の最大の特徴である「相互確証破壊」を最大限活用できているということでもある。

配備数も最多

現在のロシア連邦はソ連時代からの核戦力を引き継ぎ、陸海空を問わず世界最多の弾頭数を誇っている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、ロシアは現在6,257発の核弾頭を配備しているという。ただし、専門家も強調するように、現在のロシアの核兵器の運用はほとんど全て防衛用にとどまっている。

実験のみ

ロシアは核兵器を実戦で使用したことはない。だが、ソ連時代、1949年から1990年にかけて頻繁に核実験を実施。大気圏内や海中、地下など様々な環境で行ってきた。

写真:ソ連初の核実験(1949年8月29日)

アメリカ:広島と長崎に投下

核兵器保有国のうち、実戦で核兵器を使用したのはアメリカだけだ。周知の通り、アメリカは第二次世界大戦末期に日本の広島と長崎に対して原子爆弾を投下。それぞれ1945年8月6日と9日の出来事だった。

実験も継続

冷戦期に入ってもアメリカは核実験を継続。1946年から1963年の間に実施した。63年に部分的核実験禁止条約が締結されると実験は地下に移行、1992年まで継続された。

写真:ビキニ岩礁での核実験(1952年)

二番目の規模

規模の観点から言うと、現在ではアメリカはロシアに次ぐ第二の核戦力保有国となっている。SIPRIによると、アメリカの配備核弾頭は約5600発。ロシアや中国同様、迎撃が困難な極超音速ミサイルへの搭載も可能だが、その点に関しては中露に遅れをとっている。

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中国:アジア初の核武装国

中国もまた核兵器保有国に数えられる。だが、規模の点で言えば、世界の核戦力の9割を保有する米露には大きく劣る。配備核弾頭は推定350発。アジアで核開発を始めた最初の国で、1960年代から開発・実験に乗り出している。

規模は小さいが拡大傾向

近年経済的・軍事的にも成長著しい中国。核戦力についても拡大傾向にある。とりわけ、2022年8月には核弾頭を搭載可能な極超音速ミサイルの実験を実施。アメリカなどに脅威を感じさせている。

フランス:海空に配備

フランスも核保有国だが、地上兵器には核弾頭は搭載されていない。フランスの核戦力は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を主体とし、正確な数は不明ながら航空機搭載のものも備えている。SIPRIのデータによると、フランスの保有核弾頭は合計300ほどで、世界で4番目の規模になるという。

写真:南太平洋のムルロア環礁で行われたフランスによる核実験

イギリス:潜水艦主体の運用

フランス同様、イギリスも地上兵器に核弾頭は搭載しておらず、潜水艦や航空機に搭載用のもののみ保有している。イギリスは核兵器を搭載した原子力潜水艦隊を運用しており、配備中の核弾頭は170発ほど。航空機搭載用も含めた合計は225発となる。

インド:長射程のものはなし

以上の5カ国が核拡散防止条約(NPT)で定められた核保有国だが、同条約を批准していない所有国もある。インドもそのひとつで、SIPRIの推計ではインドには165発の核弾頭が存在する。ただし、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に匹敵する射程を持つ運搬手段はまだ実用化されていない。

パキスタン:核武装する唯一のイスラム教国

パキスタンは明示的に核武装している唯一のイスラム教国だ。その実態については慎重に秘されているが、推計では90から110発の核弾頭を持つとされる。インドとの間に緊張関係があることから、多くの専門家が常にその状況を注視している。

北朝鮮:核武装を主張、脅威を振りまく

北朝鮮も核武装を疑われているが、その閉鎖性から正確な実態に関してはわからないことが多い。だが、2016年には水素爆弾の実験に成功したと発表。自国内にウランの鉱脈があることも開発を可能にしているとみられる。

SIPRIの推計によると、45発の核弾頭が配備されているとみられる。

イスラエル:公然の秘密

イスラエルが核武装していることはほとんど周知の事実だが、いまだ公式に発表されたことはなく公然の秘密となっている。配備中の弾頭数は100から200発とみられているが、400から500発保有しているとみる推計も存在する。

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核共有

NATO構成国の多くは自国では核兵器を開発していない。だが、そういった国にもアメリカが核兵器を共有・配備している。核共有と呼ばれるシステムであり、利用しているのはベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、そしてトルコだ。

イラン:軍事目的の懸念

イランの核武装については多くの議論が交わされ、国際的に懸念されている。アメリカはイランの核開発が軍事目的であると非難しているが、イランは平和利用を目的としていると主張している。

サウジアラビア:パキスタンの支援が?

イラン同様、核武装を目的とした核開発を疑われている国は他にもある。サウジアラビアもその一つで、パキスタンから支援を受けている可能性が指摘されている。

アルメニア:虚勢か事実か

アルメニアが核兵器を保有しているかどうかは判然としない。だが2016年に、いまも続くアゼルバイジャンとの紛争を念頭にフラント・バグラチャン元首相が次のように発言した:「アルメニアはすでに核兵器を生産可能だ。これはアゼルバイジャンへの警告だ。我々にはその技術力があり、核兵器を保有している」別の高官筋はこの発言を否定しており、アルメニアは常に「平和的解決」を模索しているとも語っている。ただ、ジョージア国境でアルメニアに放射性物質を密輸入しようとした人物が逮捕されているのも事実だ。

旧ソ連構成国:かつて保有していたが返還

現在のロシアと共にソビエト連邦を形成していた旧ソ連構成国も、当時の核兵器を継承していることがある。ウクライナやベラルーシ、カザフスタンがそうだったが、そういった兵器はいつまでも使用可能な状態にあったわけではない。フランスやアメリカからの圧力を受けて、ロシアからの要請という形でそういった核兵器は返還され、旧ソ連構成国間での潜在的な核戦争リスクは取り除かれた。

南アフリカ:かつて所有していたが今は放棄

自国で核兵器を開発したにもかかわらず、それを放棄した国もある。その最初の例が南アフリカだ。南アフリカが最初に核実験に成功したのは1977年。濃縮ウランを用いて少なくとも10発の原子爆弾を開発していた。だが、生産された核兵器は解体され、製造計画も白紙に戻された。

スペイン:核開発を計画、のちに断念

フランコ政権下のスペインはイスレロ計画と呼ばれる核兵器開発プロジェクトを構想していた。その目的は核兵器を独自に開発し、セウタやメリリャ、スペイン領サハラ(現西サハラ)などの北アフリカにあるスペイン領を回収しようとするモロッコに対抗すること。兵器用に濃縮度を高めたプルトニウムから一年に23発の核弾頭を作る計画で、アフリカの砂漠地帯で実験を行う予定だった。だが、民主化後の1987年、核不拡散条約調印に伴い、スペイン社会労働党政権のもと計画は破棄された。

計画していた国は多い

スペイン以外にも、核兵器の開発を計画しながら実現に至らなかった国は多い。以下列挙すると、ナチスドイツ、アルジェリア、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、ブラジル、オーストラリア、エジプト、イラク、リビア、ルーマニア、ポーランド、スウェーデン、スイス、ユーゴスラビア、スーダン、シリア、台湾、タイ、韓国などが計画していた。

核拡散防止条約(NPT)

核兵器をめぐって高まっていた緊張を背景に、1960年代から核拡散防止条約(NPT)の制定に向けた議論がなされていた。1968年に最初の62ヵ国が調印し1970年に発効、核兵器の軍拡競争の鎮静化に貢献した。批准国は核保有国と定められた5か国と、それ以外の核非保有国に分けられる。だが、インド、イスラエル、パキスタン、北朝鮮など、批准せずに核武装している国もある。

新たな枠組みが必要?

最近の国際情勢を見ていると、批准国のなかにもこの条約のことをすっかり忘れてしまっている国があるようだ。いまや、核をめぐる国際的秩序を再検討し、新たな枠組みを作るべき時が来ているのかもしれない。なんにせよ、国際社会はこの問題について常に冷静かつ理性的に取り組むべきだ。全面核戦争がもたらすものはただひとつ、我々の文明、ひいては地球全体の終焉だけなのだから。

 

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