中国、両国間で合意した「ロシア領」を自国領に:中国政府作成の世界地図が議論を呼ぶ
『ニューズウィーク』誌が報じたところでは、中国の自然資源部が発表した最新の公式地図は、ロシア領として両国が合意していた地域が「中国領」として記載されていたという。
中国が発表した2023年度版標準地図は領土問題を抱える周辺諸国の反発を招いたが、とりわけロシア当局が問題視したのは極東ハバロフスク近郊の大ウスリー島(中国名、黒瞎子島)だ。
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『Outlook India』誌によれば、ロシアと中国はこの島の帰属を巡って争っていたが、半分ずつ領有することで合意。2005年に領土問題は解消されたはずだったという。
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ところが、中国が公表した最新地図では、島全体が中国領として記載されていたのだ。ジョージ・メイソン大学のシャール政策・政府大学院で教鞭を執るマーク・カッツ教授によれば、この動きは中露関係に影を落とす可能性があるという。
カッツ教授は『ニューズウィーク』誌に対し、ロシアと中国は互いに相手国の公式地図に細心の注意を払っていると説明。
同教授いわく:「クレムリンは、ロシア領が本当は中国に帰属すると主張する中国製の地図、とりわけ公式地図には細心の注意を払っています」
しかし、同教授によれば、プーチン政権が中国のこの対応に業を煮やしたとしても、なす術はないという。というのも、ロシアは今、ウクライナ侵攻の影響で世界経済から締め出され、危うい立場に置かれているためだ。
カッツ教授いわく:「ロシアは西側諸国による制裁の結果、中国経済に大きく依存するようになっており、(プーチン政権は)この件について声高に文句を言える立場にありません」
ロシア大統領府は当初、この地図に関して沈黙を守っていた。しかし、最終的には重い口を開き、紛争はだいぶ以前から解決済みだとした。
『ニューズウィーク』誌によれば、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は声明の中で「ロシアと中国はともに、両国間の領土問題は解決済みだという姿勢を堅持している」と述べたとのこと。
ザハロワ報道官はさらに、「2005年に中露国境東段補充協定が発効したことで領土問題は解消され、大ウスリー島は両国間で分割されることとなった」とコメント。
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また、ザハロワ報道官によれば、両国は2001年以降「互いに領有権主張を行っていない」ほか、2008年には大ウスリー島全域における国境が確定したとのこと。
ところが、『ニューズウィーク』誌によれば、中国の自然資源部による最新地図は中国当局の承認を経て公表されたものだとされる。
『ニューズウィーク』誌の記事によれば、中国当局はこの地図に関して「悪びれるそぶりもない」ばかりか、自然資源部の高官などは「一国の正確な地図は国家主権および領土一体性の象徴である」と言ってのけたそうだ。
中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官はこの地図について、「法に基づき中国の主権を粛々と行使しただけ」であると述べ、「関係各国が客観性と冷静さを保ち、この問題を拡大解釈しないことを望む」と付け加えた。
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NBC放送によれば、フィリピン、マレーシア、ベトナム、台湾、インドが中国の最新地図に反発。これらの国々は中国との間でそれぞれ係争地を抱えている。
NBC放送によれば、フィリピン外務省は「フィリピンの領土と領海に対して中国の主権および管轄権を正当化しようとするこの試みは国際法上の根拠を持たない」と抗議。
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また、インド当局も中国の最新地図に対して激しく抗議。インド外務省のアリンダム・バグチ報道官は声明の中で、自国領に対する地図上での侵害について「外交ルートを通じて抗議を行った。根拠のない主張を我が国が受け入れることはない」とした。
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