水に次ぐ重要な資源「砂」:建設ラッシュで加熱する争奪戦
地球の砂は、公園に敷かれたり、美しい海岸を覆うためだけにあるわけではない。国際労働機関(ILO)が提唱したグリーンイニシアチブは、砂について、人類が水に次いで必要とする枯渇資源だとしている。
国際鉱物学連合によれば、砂はコンクリートの主原料であるほか、テクノロジー分野をはじめさまざまな部門で不可欠とされるシリコンの主成分でもある。さらに、ガラス原料の7割が砂(珪砂)となっているのだ。
写真:Alice Donovan Rouse/Unsplash
国連環境計画(UNEP)の最新報告書によれば、砂の採掘量は過去20年間で3倍に増えたほか、2019年の砂需要は年間500億トンに達したという。
世界自然保護基金(WWF)の地質学者マルク・ゴワショはロイター通信に対し、「川に堆積した砂は、きわめて効果的な気候変動対策となります。河口付近に砂が十分に堆積すれば海面が陸よりも高くなることはなく、洪水の発生を防ぐことができますから」と語った。
世界的な砂不足を受けて、砂の売買を行うマフィア「サンドマフィア」まで現れるようになった。砂の歴史に関する著作があり受賞歴もあるジャーナリスト、ヴィンス・バイザーによれば、貴重な自然資源である砂をめぐって組織犯罪が横行しているという。
サンドマフィアはほかのマフィアと同じく、「ひたすら警察にわいろを贈って懐柔を試みるが、それでもだれかが取引の邪魔を企てようものならその人物を消してしまうでしょう」米ラジオ局NPRが伝えた。
前述のジャーナリスト、ビンス・バイザーによれば、最も被害が深刻な国はインド。さらにケニア、インドネシア、中国、ヴェトナム等の国々でも砂をめぐる裏取引が絶えないという。
天然資源に関する問題に取り組むNGO「SANDRP」によれば、2019年1月から2020年11月までの間にインド全土で少なくとも市民23人、ジャーナリストと活動家5人、政府職員11人が「サンドマフィア」によって殺害された。
各地ですすむ砂の採取を抑えるべく各国政府が規制強化に努める一方、「砂資源の危機」に対処するにはさらなる取り組みが必要だと環境保護活動家たちは声を上げている。
国連環境計画(UNEP)は「想像以上に希少となっている砂」と題された2014年の報告書を通じ、既存の建物やインフラについて最適化することを提言している。
たとえば建材のリサイクルはひとつの有効な選択肢だが、問題がないわけではない。建物は紙やプラスチックのように短期間で使い終わるのではなく、長期の使用を前提につくられる。そのため材料となった砂は半永久的にリサイクルシステムからはじき出されてしまうと、前述のビンス・バイザー記者は指摘する。
世界経済フォーラムは、建材用に採取される砂の税金引き上げにより住宅建設におけるコンクリート依存を断ち切ることは、砂需要を減らす良い方法になるだろうとしている。
写真:Adrian Schwarz/Unsplash
さらに一部の専門家は、建築家やエンジニアのために、コンクリートに代わる木材や藁といった素材について検討できるよう広報活動を行うことも砂不足問題の解決につながると指摘している。