宇宙開発の新時代、民間セクターの台頭へ

宇宙開発が新たなステージへ
アメリカの起業家が主導
スペースX社
初の民間宇宙遊泳
月面着陸以降、地球から最も遠くに到達
大きな成果
ボーイング社の失敗が際立つ結果に
「Starliner」の不具合
無人で帰還
さらなる打撃に
契約を交わしたのは10年前
撤退する公算が高い
敵がいないわけではない
国を挙げて開発に乗り出すところも
中国
日本
宇宙開発が新たなステージへ

米ソが宇宙の覇権をめぐって開発を競った時代は遠い昔だが、いま新たに宇宙開発の波が来ている。だが、今度の主役は宇宙という新たな市場を独占したい私企業だ。

アメリカの起業家が主導

『フォーブス』誌によると、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスといった起業家たちが「スペースX」などのプロジェクトを主導し、新時代の宇宙開発競争を繰り広げているのだという。

スペースX社

その代表的な例がスペースXの最近の成果だ。9月、同社は民間企業による宇宙プロジェクトとしては前例のない規模のミッションを成し遂げた。

初の民間宇宙遊泳

スペースXのミッションでは初の商業的宇宙遊泳も実現した。テック・ビリオネアのジャレド・アイザックマンがこの宇宙飛行に料金を払って参加し、同社の宇宙服に身を包んで宇宙空間に乗り出したのだ。

月面着陸以降、地球から最も遠くに到達

AP通信によると、今回の飛行に参加した3名はカプセル外に出たものの、そこから完全に切り離された遊泳には及んでいないという。それでも、この3人は月面着陸以降地球から最も遠く離れた人間となった。

大きな成果

スペースX社はすでにNASAと継続的な協力関係にあるが、今回の達成はひときわ大きなものだ。同社のロケットはすでに何度も国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届けている。

ボーイング社の失敗が際立つ結果に

また、スペースX社の成功はボーイング社の失敗を際立たせる効果もあった。数日前、ボーイング社の宇宙船が宇宙で不具合を起こし、NASAはクルーを搭載せず船だけを送り返さねばならなかったのだ。

「Starliner」の不具合

その宇宙船「Starliner」はボーイング社がはじめて宇宙産業に参入して作ったものだった。AP通信によると、カプセルはすでに地球からの発射時点で漏れがあったということだが、NASA及びボーイング社はそれでも発射可能だと判断していた。

無人で帰還

ISSに到着した「Starliner」の不具合はさらに悪化していた。この時点でNASAは同船が危険な状態にあると判断、載せてきた乗員2名を置いて無人で帰還した。クルーの回収のためにミッション全体が変更を余儀なくされている。

さらなる打撃に

ボーイング社はいま厳しい状態にあり、今回の失敗も大きく響くものとなった。航空機が機体の不具合で運航停止となり内部告発者も不審死、そのうえ今は従業員によるストライキにも対処せねばならない。

契約を交わしたのは10年前

宇宙産業に詳しいトッド・ハリソンは米放送局「NPR」にこう語っている:「ボーイング社は今回の失敗がもたらす結果をかみしめる必要があるでしょう」また、ハリソンによると、ボーイング社がNASAと契約を交わしたのは10年前であり、その頃から同社は変わってしまったとも述べている。

撤退する公算が高い

ハリソンはこう続けている:「ボーイング社が数週間か数ヶ月以内に撤退を決断する公算は高いでしょう」宇宙産業の開発プログラムはもはや同社のビジネスモデルに沿ったものではなくなっているのだ。

敵がいないわけではない

ボーイング社が撤退すれば、スペースX社が唯一の民間宇宙開発企業となり、あとは有象無象のスタートアップ企業が連なるだけになる。だが、それは必ずしも同社に敵がいないということにはならない。

画像:SpaceX / Unsplash

国を挙げて開発に乗り出すところも

アメリカ以外の国でも多くの民間企業が宇宙産業に乗り出そうとしているし、将来の宇宙におけるプレゼンスを高めるために政府主導でリソースを投入している国も少なくない。

中国

その好例が中国だ。日経新聞によると、中国は習近平指導部主導で「宇宙強国」となることを目標として掲げている。実際、中国は最近世界で初めて月の裏側に無人探査機を送り込んでいる。

日本

また、『フォーブス』誌によると日本も宇宙開発を主導しているという。たとえば、日本は昨年、X線分光撮像衛星「XRISM」と小型月面探査機「SLIM」のふたつを搭載したロケットを打ち上げている。

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