アメリカ国防総省が中国の核軍拡を指摘:2035年までに1,500発の核弾頭を保有する可能性
米国防総省は2023年10月、中国における軍事・安全保障問題に関する議会報告書を発表した。そこから明らかになったのは、積極的に核軍拡を推し進めようとする中国の姿だった。
「中華人民共和国における軍事・安全保障の進展(2023年度)」と題されたそのレポートでは、事実上中国に対向し得る唯一の国であるアメリカにとっても無視できない、不穏な事実も明かされていた。レポートの内容をチェックしてみよう。
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そのレポートによると、中国は2023年5月の時点で約500発の核弾頭を保有しているとされている。
核弾頭の数は前年度より100発増加しており、中国が急速に核軍拡を行う能力を持っていることを示している。その結果、核武装において他国と肩を並べる水準となっている。
国防総省のレポートでは、中国政府は今後も「自国の核戦力を急速に近代化・多様化し、拡大させていく」だろうと述べられている。さらに、中国が打ち出した新たな近代化プログラムは前例がない規模のものなのだという。
ある高官はこう語っている:「中国の軍拡速度は以前までの我々の予測を超えており、2030年までに限れば、当分のあいだ続くと言ってよいだろう」防衛メディア「Defense News」が報じている。
中国は核戦力をかつてない規模で拡大させており、種類も多様化している。また、その拡大プログラムの一環として、核兵器の配備が可能なプラットフォームを陸海空すべての領域において整備し、将来の使用を見据えているようだ。
核軍拡に対する投資や公共事業も増えており、レポートでは中国は「2030年度までに1,000発以上の核弾頭を運用することになるだろう」とされている。だが、レポートで指摘されている不穏な事実はこういった統計的数字だけではない。
こうして増やされた核弾頭は直ちに運用可能なレベルで配備されており、その抑止力を背景に中国は核戦力の近代化をさらに継続していくことになる。
国防総省の想定では、中国は習近平国家主席が提唱した、世界レベルの軍事大国となるという目標を2049年までに達成することになるという。その頃には、仮にアメリカと戦争になっても対等に戦えるということだ。
国防総省のある高官は、政治メディア「ポリティコ」にこう語っている:「中国がいま行っていることは、10年前とは規模も複雑さも桁違いです」
その高官はさらにこう続けている:「中国は陸海空で核兵器を配備可能なプラットフォームに投資して拡大しているうえ、こうして拡大する核戦力を支えるためのインフラも整備しています」
レポートによると、中国の軍拡が成功するためには「新型の高速増殖炉(Fast Breeder Reactor: FBR)や再処理施設」が鍵となるという。中国はこういった施設を平和的目的のために活用すると主張しているが、レポートいわく「核軍拡用のプルトニウムを生産」することもできるのだ。
また、2022年には固形燃料式ミサイル用のサイロ用地も3つ整備されている。これらのサイロには最大300の大陸間弾道ミサイル用サイロを設置可能で、すべて建設されれば中国はかつてない規模の即応能力を獲得することになる。
2023年10月18日には、アメリカのある防衛官僚がこうコメントしている:「これらの動きは当然ながら多大な懸念をもたらしています。中国が核戦力を拡大させるにしても、もっと透明性を高めてほしいものです」
CNNによると、その防衛官僚はまた、米国としては中国と「戦略的安定及びリスク減少」について論じる「機運が高まってきている」とも述べたという。だが、現時点ではそのような対話が実現するかは不透明だ。
近年、中国は国際関係において以前よりも積極的な姿勢を見せており、世界における中国のプレゼンスを上げ、軍事大国となることを目指している。
防衛総省のレポートによると、中国の軍拡は核戦力だけに留まらないのだという。たとえば、潜水艦や水上艦も30隻ほど増加している。
防衛費も7.1%増額されており、こうして増やされた予算を使ってさらなる核軍拡に進む可能性がある。
2024年7月の時点では中国は核戦力において米露に大きく劣っており、それはいまも変わらない。米国科学者連盟が発表したデータによるとアメリカは5,748発、ロシアは5,580発の核弾頭を保有しており、それに対して中国は500発に留まっている。アメリカの超党派組織「軍備管理協会」が伝えている。
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国防総省のレポートでは、いまのペースで核軍拡や近代化が続いた場合、中国は2035年までに保有核弾頭を1,500発まで増やす可能性があるともされている。
国防総省の統合抑止責任者ジョン・プラム氏は、2023年にブルッキングス協会でのイベントでこう語っている:「中国は非常に積極的に核軍拡と近代化を進めています。その速度と規模はまさに息をのむほどのものです」