本来なら任期切れのゼレンスキー大統領、国民はどうみている?
キーウ国際社会学研究所が6月17日に発表した最近の世論調査結果によると、ウクライナ国民の大半は、戒厳令が解除されるまでゼレンスキー大統領がその職務を続けるべきだと考えているようだ。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に
ゼレンスキー大統領の任期は本来なら5月20日までだった。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻に対応するため、ウクライナでは現在、戒厳令が敷かれており、例外的な状況になっているのだ。
『エコノミスト』誌が今年5月に伝えたところによれば、「ウクライナ憲法は複雑だ。大統領の任期は第103条によって5年と規定されているが、第108条には新大統領が就任するまで、それまでの大統領が権力を行使すると記されている」とのこと。
また、「以前からの法律(憲法規定ではない)によって戒厳令下での選挙が禁じられているが、ウクライナではロシアが2022年2月に侵攻を開始して以来、戒厳令が敷かれている」のだ。
戦時下のウクライナで任期終了を迎えたゼレンスキー大統領(および、そのアドバイザーたち)は難しい判断を迫られることとなったが、昨年11月には選挙を延期することで問題を回避する方針をあらかじめ示していた。
『ニューズウィーク』誌によれば、ゼレンスキー大統領は昨年11月の演説の中で「今、誰もが国を守ることを考えるべきです。議論や課題をめぐる対立や混乱を避け、一致団結すべきなのです」と述べたという。
ゼレンスキー大統領はさらに、「勝たない限り、国がなくなってしまいます。しかし、私たちは勝利を掴めるはずです」とコメント。これに対し、ロシアはもちろんのこと、一部のゼレンスキー支持者たちも批判の声を挙げた。
プーチン大統領は6月7日、ウクライナと和平交渉を行う可能性についてベラルーシのルカシェンコ大統領と議論した際、ゼレンスキー政権の正当性は「期限切れ」だと主張。
プーチン大統領は「誰と交渉するというのでしょう? 現在の国家元首(ゼレンスキー大統領のこと)の正当性は期限切れだとわかっているのに」と述べて、ウクライナを牽制したが、世論調査の結果を見る限り、ウクライナ国民の大部分はこの主張に同意しないだろう。
キーウ国際社会学研究所の世論調査結果によれば、回答者の70%が戒厳令解除までゼレンスキー大統領が続投することを希望。これに反対した回答者は22%に留まったという。
『キーウ・インデペンデント』紙の編集者、カテリーナ・ホドゥノワ氏いわく:「居住地域にもよりますが、ウクライナ人の65%から74%が、戒厳令解除までゼレンスキー大統領が職務を続けるべきだということに同意しているわけです」
同紙はさらに「つまり、ウクライナ人の大半は大統領の正当性に疑問を抱いていないことが示されたと言えます」と結論づけている。ちなみに、ウクライナでは戒厳令が敷かれていなければ、本来、2024年3月31日に大統領選挙が行われることになっていた。
キーウ国際社会学研究所が行った世論調査では、大統領続投の是非に関する国民の意見に加え、他にも興味深いデータが得られている。たとえば、ゼレンスキー政権の政策を支持するとした回答者は56%に上ったそうだ。
逆に、ゼレンスキー政権の政策を支持しないと答えた国民は37%に留まっている。とはいえ、前回の調査結果と比べれば、支持率が急落してしまったとのこと。
また、ロシアとの交渉の中でいかなる妥協もすべきではないとした回答者は58%で、30%は妥協もやむなしとの立場だった。この点でも、自国の立場を断固貫くべきだとするウクライナ国民の割合は過去2年間で低下してきている。
さらに、ウクライナで戒厳令が続いていることについては34%が全面支持または一定の支持という立場を表明。一方、不支持は20%、断固反対が32%、無回答は14%となっている。