エチオピアとソマリアの対立が激化:原因は未承認国家ソマリランド
ロシアによるウクライナ侵攻やガザ地区をめぐる紛争が国際社会の注目を集める中、アフリカ大陸でも紛争の火種がくすぶっている。ソマリアから一方的に独立した未承認国家ソマリランドをめぐって、エチオピアとソマリアが激しく対立しているのだ。
エチオピアは「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置する内陸国で、周囲をエリトリア、ジブチ、ケニア、ソマリアに囲まれている。
BBC放送によれば、昨年10月にエチオピアのアビィ・アハメド首相が、港湾へのアクセスは同国の存立にかかわる問題だと発言。これが地域一帯の緊張を高めることになってしまった。
同放送いわく、近隣諸国はエチオピアが隣国のエリトリアから領土を奪い取ろうとしているのではないかと危機感を募らせたようだ。なお、エリトリアは1993年にエチオピアから正式に独立し、これによってエチオピアは紅海沿岸部の領土を失うこととなった。
しかし、エチオピアの狙いは別のところにあった。もうひとつの隣国、ソマリアの領内にある事実上の独立国を利用して、紅海へのアクセスを手に入れようとしていたのだ。
エチオピアは今年1月に、未承認国家ソマリランドとの間で、ソマリランド内にある港湾地帯20キロメートルを50年間にわたって租借するという覚書を交わした。
ただし、ニュースサイト「The Conversation」によれば、両国が交わした覚書の詳細な内容は公表されていないという。
そのため、第三国の当局や専門家がこの覚書について知っているのは、エチオピアとソマリランドの指導者が公に認めた内容のみである。そして、その中には、ソマリランドの沿岸部にエチオピアの軍事基地を設置することが含まれていた。
しかし、この覚書においてもっとも焦点となる部分、つまり、エチオピアが港湾租借の見返りにソマリランドを国家承認するのかどうか、という点については未だ不透明だ。ソマリランドの外相はエチオピアによる国家承認への見通しが立ったとしたが、エチオピア側はこれについて明言を避けているのだ。
いずれにせよ、ソマリアのハッサン・シェイク・モハメド大統領はこの覚書がソマリアに対する「侵略行為」にあたるとして、直ちにエチオピアとソマリランドを批判した。ニュースサイト「The Conversation」が伝えている。
その後、エチオピアとソマリアの緊張関係は数ヵ月にわたって高まり続け、ソマリアの大統領は自国民に対し、「祖国防衛に備える」よう求めるほどだった。
米国のロバート・A・ウッド国連代理大使は国連安全保障理事会の場で、両国の緊張が「国際的な安全保障上の利害」に悪影響を与えていると発言。
BBC放送をはじめとするメディア各社いわく、エチオピアは国際社会で不利な立場に立たされている、近隣諸国や西側諸国の多くがソマリアを支持する姿勢を示しているためだ。
まず、米国や欧州連合(EU)、国連はエチオピアに対し、ソマリア領の一体性を尊重し、緊張緩和を目指すよう求めた。
また、アフリカ連合も同様の立場を取っているほか、アフリカ大陸に大きな影響力を持つ中国とサウジアラビアに至っては、断固ソマリア支持のスタンスを鮮明にした。
一方、トルコは最近、ソマリアと防衛協定を締結したこともあって、紛争の調停に乗り出した。しかし、この試みは思うような成果を挙げることができず、紅海をとりまく情勢は対岸のイエメンが内戦状態にあることと相まって、ますます不安定化の一途を辿っている。