新型コロナウィルスのリスクはいまだ健在:指摘された脳卒中や心筋梗塞の危険性

新型コロナウィルスの長期的影響
「心血管イベント」のリスクが上昇
「UKバイオバンク」の膨大なデータ
2倍のリスク
3年後にもリスクが残る
入院経験者はさらに高リスク
UKバイオバンクから抽出されたデータ
25万人分のデータを分析
「驚くべき発見」
新型コロナ感染症特有のリスク
「感染症が治るとただちに消え去る」
血管が新型コロナの標的に?
「動脈壁や血管系になんらかの影響」
遺伝子的な観点と血液型による違い
他と差が出るO型
「新型コロナ感染歴を把握するのが重要」
新型コロナウィルスの長期的影響

パンデミックの時期につらい思いをした人は決して少なくないだろう。あれから4年、新型コロナウィルス感染は以前ほどは警戒されなくなった。しかし今年10月、新型コロナウイルスの後遺症について、医学界から気がかりなニュースが届いた。

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「心血管イベント」のリスクが上昇

新型コロナに感染した人は感染から3年経った後も、心筋梗塞や脳卒中といった「心血管イベント」のリスクが高止まりしているというのだ。アメリカ心臓協会が刊行する医学雑誌『動脈硬化症と血栓症と血管生物学(Arteriosclerosis, Thrombosis & Vascular Biology)』掲載論文の報告として、CNNが伝えている。

 

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「UKバイオバンク」の膨大なデータ

研究チームが使用したのは「UKバイオバンク」の膨大なデータである。UKバイオバンクは2006年にイギリスで開始したプロジェクトで、約50万人の既往歴や遺伝情報等のデータが、匿名化された上で随時蓄積・更新されている。研究チームはそのデータの中から、2020年に新型コロナ陽性となった人々のデータに注目したのだ。

2倍のリスク

この研究から明らかになったのは、2020年に新型コロナに感染した人は、感染しなかった人に比べ、心筋梗塞や脳卒中に襲われる確率が2倍も高かったということである。2020年はワクチンの開発が十分ではなく、多くの死者や感染者が出た年にあたる。

3年後にもリスクが残る

ほかにも気がかりな報告がなされている。感染から3年が過ぎても、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高止まりしたままだというのだ。

入院経験者はさらに高リスク

新型コロナで入院を経験した人の場合、そのリスクはさらに高く、感染歴のない人の3倍ほどになっていた。つまり、新型コロナの症状が重かった人ほど、心筋梗塞や脳卒中になりやすくなっていた。糖尿病や末梢動脈疾患の患者で心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることはすでに知られているが、新型コロナが重症化した場合でも同じくらいリスクが高まっていたのだ。

UKバイオバンクから抽出されたデータ

同研究がUKバイオバンクから抽出したのは、2020年に医療機関の検査によって新型コロナウイルス陽性と判定された人の群と、2020年に新型コロナに感染していない群のデータである。この二つの群のデータを比較対照することで、以上のような結論を導きだしたのだ。

25万人分のデータを分析

UKバイオバンクのデータにおいて、2020年に陽性判定が出た人は1万1,000人あまり、うち3,000人近くが入院していた。一方、非感染者数は22万2,000人となった。

「驚くべき発見」

同研究の主導者であり、クリーブランド・クリニックのラーナー研究所で心臓血管・代謝科学部門長をつとめるスタンリー・ヘイゼン博士は、CNNに対して次のように語っている。「心筋梗塞や脳卒中のリスクが弱まる兆しがないのです。これは驚くべき発見です」

新型コロナ感染症特有のリスク

この発見について、心臓学専門医でミネソタ州ロチェスターのメイヨー・クリニックに所属するパトリシア・J・M・ベスト博士も、CNNに驚きのコメントを寄せている。それによれば、心血管系のこのようなリスクは新型コロナ感染症に特有のもので、たとえばインフルエンザではそういったことは起こらないという。

「感染症が治るとただちに消え去る」

「以前から、感染症が心臓発作のリスクを高めるということは知られていました。インフルエンザあるいはその他の感染症にかかった場合には、それが細菌性のものであれウイルス性のものであれ、心筋梗塞のリスクが高まるのです。しかし、そのようなリスクはおおかたの場合、感染症が治るとただちに消え去ります」

血管が新型コロナの標的に?

新型コロナが心血管にもたらす後遺症がいつまで続くかという問題は、いま世界中の研究者たちが取り組んでいる未知のテーマのひとつである。これまでの研究で分かっているのは、ウイルスが血管壁を覆っている細胞に感染するということだ。また、血管の内膜に形成される粥状物質(血栓のもと)にもウイルスが見つかっている。

「動脈壁や血管系になんらかの影響」

同研究に携わった南カリフォルニア大学ケック医学校の生化学・分子遺伝学教授のHooman Allayee博士は、今回の発見を踏まえて次のように示唆している。「新型コロナが動脈壁や血管系になんらかの影響を及ぼし、それが持続的なダメージとなって時間の経過とともに(心筋梗塞や脳卒中といった形で)現れているのかもしれません」

遺伝子的な観点と血液型による違い

同研究ではさらに、遺伝的に心臓病になりやすい人や、新型コロナにかかりやすい遺伝子変化を持つ人について、新型コロナ入院後に心筋梗塞や脳卒中に襲われるケースが他の人よりも多かったかどうかも調べた。その結果、とくに関連性は見られなかった。ただ、血液型に関して言えば、新型コロナへの感染しやすさや、感染した場合の症状の程度について、はっきりとした関連が認められたという。

他と差が出るO型

A型、B型、AB型の人に比べ、O型の人は心血管疾患のリスクが低いことがかねてより知られていたが、O型の人は新型コロナで入院した場合でも、その他の血液型の人に比べると心臓発作や脳卒中のリスクはあまり上昇しなかった。O型の人はそのことから新型コロナウイルスには強いといえるが、しかし感染しないわけではないと前出のヘイゼン博士はCNNに語っている。血液型によってそのような違いが生じるメカニズムについて、今のところ専門家たちの間でも原因は明らかになっていない。

「新型コロナ感染歴を把握するのが重要」

研究チームは同論文で、論文の読者として想定されるすべての医師にこう呼びかけている。すなわち、新型コロナに関するこの新しい情報を知り、患者たちの新型コロナ感染歴を把握しておくことが重要である。そして、患者に新型コロナ感染歴がある場合には、心血管系のリスクにことさら注意を払う必要がある。

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