呼吸器系だけではない:新型コロナウイルスが人間の脳に与えるダメージとは
2020年から数年にわたり、世界を席巻した新型コロナウイルス。こうしたウイルスは通常、呼吸器系にダメージを与えるものだが、『ネイチャー』誌に発表された研究によれば、脳にも長期的な影響を及ぼすことが分かってきたという。
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新型コロナウイルスが脳にダメージを及ぼすらしいことはすでに知られていた:感染中の嗅覚喪失や、後遺症として現れる倦怠感やブレインフォグがその例だ。そして、ついにオックスフォード大学の研究チームが脳への影響を立証した。
研究手法は単純明快:以前にMRIスキャンを受けたことがある800人の被験者に対し、新型コロナウイルス感染後にもう一度、MRIを受けてもらったのだ。その結果、脳にいくつかの重大な変化が起きていることが突き止められた。
オックスフォード大学が行ったこの研究は2022年3月『ネイチャー』誌に「新型コロナウイルスと脳の構造変化の関連性(SARS-CoV-2 is associated with changes in brain structure)」というタイトルで発表された。
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研究者たちは、新型コロナウイルスを克服した人の脳では「灰白質の厚さが顕著に減少している」ことを突き止めたのだ。
『ネイチャー』誌の記事によれば、脳内で最もダメージを受けやすいのは嗅覚系(眼窩前頭皮質と海馬傍回)に関連する領域だという。しかし、新型コロナウイルスの後遺症は嗅覚の喪失に留まらない。
研究者はまた、嗅覚野に「組織がダメージを受けていることを示す大きな変化」があることに加え、脳全体が萎縮していることを発見した。
さらに懸念すべきことに、神経変性疾患の患者に対して行うのと同様の検査を実施した結果、「より重大な認知機能低下」が起きていると判明したのだ。
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また、同研究によって、もうひとつ重要な発見がなされた:高齢の患者ほど、脳に大きなダメージを受けやすいということだ。
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研究によれば、被験者が失った脳の質量は平均0.3%だという。ただし、中には2%に至るような極端なケースもあるという。
しかし、オックスフォード大学の研究チームいわく、こういった脳のダメージが永続的なものなのか、リハビリで時間とともに回復するのか判断するのは時期尚早だという。
また、新型コロナウイルス感染症の重症度と脳ダメージの程度に相関性があるのかについても判然としていない。つまり、軽症や無症状のケースであっても、重症患者と同じようなダメージを受けている可能性があるということだ。
『ネイチャー』誌に掲載された研究では、脳のダメージは「嗅覚経路を介した変性の拡大や神経の炎症、嗅覚障害にともなう知覚刺激の減少」の結果として生じる可能性が強く示唆されている。
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一言でいえば、新型コロナウイルスは嗅覚にダメージを与えるばかりか、脳の一部を機能不全にしてしまうのだ。そして、たとえ嗅覚は回復しても、脳の萎縮は残るという。
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これは、神経学的な症状を伴う新型コロナ後遺症は、ウイルスがヒトの脳に残すダメージに起因するという仮説を支持するものだ。
先行研究によって以前から、新型コロナウイルスの死亡患者の脳組織には呼吸器感染症としては珍しく、ウイルスの痕跡が残っていることが知られていた。さらに、心臓および腎臓にもウイルスの痕跡が残るとされるが、これも呼吸器感染症としては異例だ。
今回の研究およびその他の研究が示すのは、新型コロナウイルスの危険性は体内で拡散する性質にあるということだ。また、軽症のケースなどでは、患者が重大性に気づくのを妨げてしまうこともある。余程症状がひどくならない限り、実際のダメージが明らかにならないのだ。
これらの研究は新型コロナウイルスのリスクについて警鐘を鳴らすものだ。ワクチン接種やその他の措置で世界的流行は収まりを見せているとはいえ、警戒するにこしたことはない。このウイルスが人体に及ぼすダメージの本当の大きさはまだわかっていないのだ。
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