トランプ支持派の過激な主張:政治的正当性があれば「暴力」もあり
米国で行われた調査によって、「政治的暴力」を積極的に認める立場をとる人々の存在が明らかになった。その多くが、大統領に返り咲きを狙うトランプ氏の支持者だという。
学術誌『PLOS ONE』上で公開された調査によれば、トランプ元大統領が掲げるスローガン「MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)」に共鳴する共和党支持者は、それ以外のグループに比べて政治的暴力を肯定する人の割合が高かったという。
このアンケートは市場調査会社イプソスが2022年5月から2022年6月にかけて実施したもので、米国社会を反映するように抽出された8,620人が対象者となった。このときすでにトランプ氏は大統領選への出馬を口にしていた。
ニュースサイト「PsyPost」によれば、アンケートでは回答者の人種に加え、民主主義や社会問題に対する考え、政治的暴力の行使に関する意見などが尋ねられたという。
さらに、自衛権や民主主義の擁護に関する質問がなされ、回答者はその傾向に基づいて4つのグループに分類されたとのこと。
その内訳は「MAGA派の共和党支持者」「熱心な共和党支持者」「その他の共和党支持者」「共和党支持者でない人々」となっている。「MAGA派の共和党支持者」というのは、2016年の大統領選でトランプ元大統領に投票し、2020年に同氏が落選した際には選挙結果に強く異議を唱えた人々のことだ。
MAGA派の共和党支持者たちは政治的な目標を追求する上で暴力の行使は正当化され得るかという質問に対し58%が「イエス」と回答、その他のグループよりも圧倒的に高い割合を示したのだ。
一方、同じ質問に「イエス」と回答した熱心な共和党支持者は38.3%、その他の共和党支持者は31.5%、共和党支持者以外の人々は25.1%となっている。
しかし、MAGA派の共和党支持者を特徴づける信念は政治的暴力の肯定だけではない。このグループでは、米国の民主主義を維持するためには強力なリーダーが不可欠だと回答した人の割合がおよそ3分の1に達したのだ。
さらに、MAGA派の共和党支持者は19.2%が、武装した市民による投票所の巡回を実施すべきだと回答したほか、米国の政治制度に関する陰謀論「Qアノン」を強く信じる、あるいは信じて疑わないと答えた人も26.7%に上っている。
また、MAGA派の共和党支持者たちの間では、米国における白人はアフリカ系米国人よりも社会的に有利だと考える人の割合が非常に低かったという。一方、共和党支持者以外の人々では、62.6%がこの考えに賛同している。
そして、MAGA派の共和党支持者はその51%が、米国生まれの白人は有色人種の移民によって追いやられつつあるとする「リプレイスメント・セオリー」を強く信じる、あるいは信じて疑わないと回答。
しかし、米国の民主主義が深刻な脅威にさらされていると思うかという問いに対してはどのグループも「イエス」と回答した人の割合が高く、MAGA派の共和党支持者では90%に達した。
同様に、熱心な共和党支持者では74.4%、その他の共和党支持者でも61.7%、共和党支持者以外では70.1%が民主主義に対する脅威を感じていることが判明。ただし、何を「脅威」とみなすのかという点で、グループごとに差異があるものと見られる。
論文著者らいわく:「この調査結果が示唆するのは、MAGA派の共和党支持者が特異な少数派であり、その他の共和党支持者に比べて、人種差別的で根拠のない妄想を信じ込む人の割合が圧倒的に高いであろうということだ」
興味深いことに、MAGA派の共和党支持者は政治的目的を追求する上で暴力行使は正当化されると考える人の割合が高いにもかかわらず、自ら暴力に訴えるのは避ける傾向があるようだ。
論文著者たちによれば、「MAGA派の共和党支持者たちが政治的暴力を生みだす土壌になるかもしれないという懸念は正当化され得るだろう。しかし、自ら暴力を行使するかどうかという点については、彼らもその他の人々と比べてとりわけ積極的というわけではなく、注目に値する」とのこと。
これについて著者の1人、ゲレン・ウィンターミュート氏は「暴力に消極的だというのはよいことだが、留意しなくてはならないことがある:自ら行使する気がなくとも暴力を支持する人がいれば、積極的な人々を勢いづけてしまうかもしれないのだ」と述べている。
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