損耗が激しいロシア軍:90年代に少数生産された試験車両を実戦に投入

珍しい兵器を蔵出し
BTR-90
90年代に設計
かつては旧型が十分に存在
損耗が激しく需要が生じる
30年ものの兵器
設計は古いが現代的でもある
装甲が厚い
武装も備える
取外し可能な対戦車ミサイルランチャーも
「悪い車両ではない」
長期戦に備えるロシア
すぐに破壊されてしまう
ウクライナが動画を公開
BTR-90を初めて破壊か
ロシア軍の損耗の激しさを示す
鹵獲した場合は破壊
珍しい兵器を蔵出し

プーチン大統領によるウクライナ侵攻開始以来、激しい戦闘によってロシアは多くの戦闘車両を失ってきた。その結果、前線にはなかなか通常では利用されない車両まで駆り出されることになっている。

BTR-90

そういった珍しい車両の例としては装甲車両「BMPTテルミナートル」や第4世代主力戦車「T-14」などが挙げられるが、とりわけ目を引いたのが装輪装甲車「BTR-90」の実戦投入だった。

画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

90年代に設計

「BTR-90」は1990年代に設計され、アルザマス自動車工場が生産。ソ連崩壊後のロシア時代の遺産だが、ごく少数を試験的に生産したのみにとどまっていた。

かつては旧型が十分に存在

『フォーブス』誌のデヴィッド・アックス記者は、生産数が少数に留まったのは当時のロシアには新しい装輪装甲車の需要がなかったためとしている。旧型のBTR-80やBTR-70、そしてBTR-60などが十分な量存在したからだ。

画像:BTR-82A, Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

損耗が激しく需要が生じる

だが、ウクライナ侵攻のせいで装輪装甲車も激しい損耗を被ったためBTR-90の需要が高まり、実戦投入に至った。2023年10月にはこの珍しい車両がアウディイウカの戦場で目撃されている。

30年ものの兵器

BTR-90の実戦投入を示す動画がアップロードされたことを受けて書かれた記事で、アックス記者は「ロシア軍が30年前の試作車両を長期保管庫から引っ張り出して前線に送り込んでいる理由は、想像に難くない」と述べている。

画像:Telegram @btvt2019

設計は古いが現代的でもある

BTR-90の重量はおよそ20トンで、今回のウクライナ侵攻においてロシア軍がこれまで投入してきた装甲兵員輸送車と比べるとそれなりに現代的な設計となっている。

装甲が厚い

BTR-90は車両の運用に3名の兵員を必要とし、7名の兵士を輸送できる。軍事情報サイト『Military Today』の解説によると、旧式の輸送車よりも装甲も厚いのだという。

画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

武装も備える

BTR-90は爆発反応装甲と強力な30mm砲及び7.62mm同軸機銃を備え、現代の戦場においてもその有用性は失っていない。

画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

取外し可能な対戦車ミサイルランチャーも

さらに、武装としてはグレネードランチャーと単発式の対戦車誘導ミサイルランチャーも備えており、ミサイルランチャーは取り外して歩兵が地上から発射することも可能となっている。

画像:Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

「悪い車両ではない」

アックス記者も「BTR-90は悪い車両ではない」と書いている。だが同時に、この車両が2023年10月に実戦投入されていることは「ロシア軍需産業のひっ迫」を示しているとも述べている。

長期戦に備えるロシア

同記事では「ロシアは2025年まで、あるいはその後も続くかもしれない戦争のために、軍需産業を懸命に稼働させている」とも書かれている。しかしこの動きには時間と資金が必要なことも事実であり、前線のロシア軍はまさにいま、新しい車両を必要としているというわけだ。

すぐに破壊されてしまう

BTR-90の有用性に関するアックス記者の見立てはおそらく正しく、投入された理由も理解できる。だが、結局はこれも急場しのぎに過ぎなかったのか、投入後すぐにクラスノホリフカ付近で放棄されたBTR-90が見つかっている。

ウクライナが動画を公開

ウクライナの第110独立機械化旅団が公開した動画を『ニューズウィーク』誌のエリー・クック記者が報じており、それによると、現代的な有用性を備えていたはずのBTR-90も他の車輌とともに破壊され打ち捨てられていたということだ。

画像:第110独立機械化旅団の Telegram (@lost_warinua) より

BTR-90を初めて破壊か

『ニューズウィーク』誌では動画の正確性を独自に検証することはできなかったとされているが、仮にウクライナ側の情報が正しければ、これはBTR-90が破壊された初めての例ということになる。とはいえ、生産数の少なさを考えればそれ自体はそこまで驚くべきことではない。

ロシア軍の損耗の激しさを示す

テックニュースサイト『Technology.org』ではBTR-90についてこう書かれている:「BTR-90は非常に希少な兵員輸送車だ。それ自体が特別に貴重というわけではないが、この車両が投入されているということはロシア軍の損耗の激しさを示している」

画像:Vladimir Gorbunov, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

鹵獲した場合は破壊

同サイトでは、もしウクライナ軍がBTR-90の鹵獲に成功した場合、ロシア軍による再利用を防ぐために破壊されることになるだろうとも述べられている。

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