アルゼンチンの古代洞窟壁画、8千年以上前に描かれたものと判明

アルゼンチンで見つかった洞窟壁画
描かれた時代はいつ?
「予想していたよりも、数千年古い」
ウエヌル1号洞窟
かなり新しいものだと思われていたが……
8,200年前の壁画
壁画の年代特定は難しい
ウエヌル1号洞窟の壁画に使用されていた塗料
何が描かれているのか?
人間のシルエットや顔
さまざまなモチーフ
もっとも多く見られるモチーフは?
3,000年にわたって描かれ続けた”櫛”
年代が特定された4つの”櫛”
社会的ネットワークを構築する戦略
世代を超えて受け継がれる知識
南米最古だが世界最古ではない
最古の洞窟壁画はアジアに
アルゼンチンで見つかった洞窟壁画

アルゼンチン南部のパタゴニア地方には、2,000~3,000年前に描かれたとされる洞窟壁画があります。

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描かれた時代はいつ?

実は考古学者たちがこれまで考えていたよりも、遥かに古いことが判明しました。ところで、この不思議な壁画はどのような意図でこの場所に描かれたのでしょうか?

 

 

「予想していたよりも、数千年古い」

研究チームを率いるグアダルーペ・ロメロ・ビジャヌエバ博士は自然科学サイト「Live Science」上で、「私たちが予想していたよりも、数千年も古いものだと判明しました。驚きましたよ」と語っています。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, Guadalupe Romero Villanueva

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ウエヌル1号洞窟

壁画が描かれているのはパタゴニア砂漠の海抜1,000メートル地点にあるウエヌル1号洞窟。『スミソニアン』誌によれば、この洞窟の壁にはユニークな壁画が895点も残されていると言います。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

かなり新しいものだと思われていたが……

考古学者たちはこれらの洞窟壁画について、ここ数千年のうちに刷毛で描かれたものだと推測していました。しかし、今回『Science Advances』誌上に発表された論文によれば、実はもっと以前からそこにあったらしいのです。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V. & Ramiro Barberena

8,200年前の壁画

放射性炭素年代測定の結果、壁画のうち1点はおよそ8,200年前に人間の手によって描かれたことが判明。つまり、研究者たちがこれまで考えていたよりも、実は遥かに古かったということです。

壁画の年代特定は難しい

研究チームのメンバー、ラミロ・バルベレナ博士は「Live Science」に対し、「通常、壁画の年代特定は有機物が含まれていない限り難航します。年代を判断するための材料がまったくないのですから」とコメント。しかし、今回は幸運にも、塗料に有機物が含まれていたと言います。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

ウエヌル1号洞窟の壁画に使用されていた塗料

研究チームは洞窟壁画の一部に使用されていた黒い塗料が、周囲のサボテンを焼いてできた炭である可能性が高いと特定。これによって、壁画が描かれた年代を突き止めることができたわけです。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V. & R.B.

何が描かれているのか?

『スミソニアン』誌によれば、ウエヌル1号洞窟の壁には点や円といった幾何学的な文様が描かれているほか、赤く塗られた平行線や多角形も見られると言います。さらに、人間や動物もあちこちに描かれているとのこと。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

人間のシルエットや顔

『スミソニアン』誌いわく:「古代人は人間のシルエットや顔のほか、飛べない巨鳥レアやリャマの仲間グアナコなど動物のシルエットも描きました。壁画には白や黄色、黒の塗料が使用されています」

 

さまざまなモチーフ

ウエヌル1号洞窟の壁画は446種類のモチーフに分類されており、もっとも古いものは8,200年前、新しいものはおよそ3,000年前に描かれたと考えられています。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

もっとも多く見られるモチーフは?

中でも、数千年にわたって数百点も描かれたのが櫛のような謎の模様。今のところ、この”櫛”が何を表しているのかはわかっていません。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

3,000年にわたって描かれ続けた”櫛”

前出のラミロ・バルベレナ博士は『ニューヨーク・タイムズ』紙に対し、「年代そのものも興味深いですが、私たちにとっては、ほぼ同じモチーフがおよそ3,000年にわたって描かれ続けてきたという事実の方が重要です」と説明。

写真:Instagram @ramiro.barberena

年代が特定された4つの”櫛”

櫛のような模様のうち4つは年代が突き止められましたが、その正体はいまだ不明。研究者たちは、何らかの文化的知識を伝える意図があったのではないかと見ています。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

社会的ネットワークを構築する戦略

バルベレナ博士は「Live Science」上で「(この洞窟絵画は)点在するグループ間で社会的なネットワークを構築するために人類が生み出した戦略の一部だったのではないでしょうか。こうすることで、過酷な環境に負けない粘り強い社会を作ることができたと考えられるわけです」とコメント。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

世代を超えて受け継がれる知識

今回の論文によれば、このように「標準化された模様の表現」は「集団的記憶の維持に関連すると見られる先住民たちの知識が、完新世中期に世代を超えて伝達されていた」ことを示唆するものだと言います。

写真:Science Advances VOL. 10 NO. 07, G.R.V.

南米最古だが世界最古ではない

ウエヌル1号洞窟の壁画は南米最古のものですが、「Live Science」いわく世界最古でないとのこと。

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最古の洞窟壁画はアジアに

現時点で世界最古の洞窟絵画は、インドネシアのスラウェシ島にあるリアン・テドング洞窟に描かれた4万5,500年前のイノシシの絵だとされています。

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