多くの戦死者を出したロシアのイルクーツク州、兵士の遺体を引き取るためにクラウドファンディングを実施
ウクライナにおける戦争について、どうしても侵攻を受けるクライナの惨状に目が向けられがちだ。しかし、ロシア国内でも、僻地に暮らす一般市民は戦争のもたらす悪影響に苦しめられているようだ。
モンゴルとの国境にほど近いロシアのイルクーツク州。シベリアの一部をなすこの地域には200万人ほどが暮らしており、鉱業や林業、石油産業がおもな基幹産業となっている。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に
ウクライナ侵攻に関連して、戦場から遠く離れたイルクーツク州が話題になることはあまりない。しかし、実はこの戦争でもっとも死傷者を多くだしているのは、同州出身の兵士たちなのだ。
画像:Vasiliy Nikitin / Unsplash
『モスクワ・タイムズ』紙が2023年3月に伝えたところによれば、同年にイルクーツク州で徴兵された兵士は、ほぼ全員がウクライナのドネツク州における戦闘で戦死してしまったそうだ。
また、以前には前線に送られた部隊のメンバーが、装備や訓練の不足を嘆く様子を動画で投稿し、大きな注目を集めたこともある。
さらに、2022年11月にはイルクーツク州のイーゴリ・コブゼフ知事が、戦闘に参加する兵士たちは彼らの母親のものではなく、国家のものであると述べ、波紋を呼んだこともあった。
『ニューズウィーク』誌によれば、イルクーツク州出身の戦死者があまりにも多いことを受け、地元当局はクラウドファンディングで資金を募って遺体袋を用意し、戦死者を引き取って故郷に埋葬するという取り組みを始めたそうだ。
ウクライナ政府はロシア軍の死傷者数について、すでに60万人あまりに達したと推計している。英紙『デイリー・エクスプレス』が報じた。
一方、PBS放送によれば、死傷者の出身地にあたるシベリアや極東地域では、少数民族のコミュニティに大きな影響が広がっているという。
自由ロシア財団(Free Russia Foundation)のナタリア・アルノ氏はPBS放送に対し、プーチン政権下の軍部は貧しくほとんど教育も受けていない少数民族出身の兵士を弾除け扱いしていると告発。
アルノ氏いわく:「僻地であればあるほど、得られる情報が少なくなり、彼らの権利を擁護する人権団体も少なくなります」
そして、イルクーツク州の惨状が実は氷山の一角に過ぎず、同じようなケースがロシア各地で多発している可能性もあるのだ。