戦争犯罪:ロシアがウクライナの子ども達を収容所で再教育
米国務省は、イエール大学人同研究所の「紛争監視団」と共同で、35ページにおよぶ報告書を発表した。この新たな報告書が真実なら、ロシアはウクライナの子ども達に対して戦争犯罪を犯していたことになる。
報告書によれば、ロシア軍は強制的な養子縁組と軍事訓練のために、少なくとも6000人のウクライナの子ども達をロシアの収容所や施設に移送したという。
CNNによると、イエール大学人道研究所のナサニエル・レイモンドが2月14日に報道陣に対してこう語った:「あらゆるレベルでロシア政府が関与している」
レイモンドは「この報告書をウクライナの子ども達に発せられている差し迫ったアンバー・アラートとして捉えるべきだ」と付け加えた。
NPR(米国公共ラジオ放送)は、「ロシアによるウクライナの子どもを体系的に再教育し養子縁組するプログラム」と題するこの新しい報告書が、ウクライナの子ども達を誘拐し親ロシア的な考え方に「再教育」して祖国に戻れないようにする、ロシアの恐るべき体系的アプローチを本質的に説明していると報じた。
報告書によれば、ウクライナの子ども達が移送された収容所の75%で「ロシア中心の学校教育、文化教育、愛国心教育、あるいは軍事教育が行われていた......」ようだ。
報告書はこう続けた:「......ウクライナの子ども達をロシア政府の掲げる文化、歴史、社会観に統合させるという明白な目的を持っている」
イエール大学人道研究所のナサニエル・レイモンド所長はNPRに、「これは一つの収容所や一人の知事のもとで行われた不正ではない。偶然には起こりえない大規模な移送事業を意味している」
今回の調査で少なくとも32カ所の施設が再教育、2カ所が軍事訓練に関与し、いずれもウクライナの子ども達の教育を目的としていることが判明した。
さらにレイモンドは報道陣に、収容所の主な目的は「政治的再教育」であるようだと説明した。
しかし、「迅速な養子縁組手続きに特化した施設、そして軍の訓練施設として活用」されている施設もあるようだ。
報告書によると、養子縁組施設で見つかった最年少の子どもは生後4ヵ月で、軍事訓練収容所の最年少は14歳であった。さらなる調査が必要だが、レイモンドによれば43カ所以上の施設があると考えられている。
CNNによれば、レイモンドはチェチェン共和国とクリミアの収容所は「子どもに銃器や軍用車両の使い方を教える訓練と深い関わりがあったようだ」としている。
幸いなことに報告書は、こうした軍事訓練を受けた子ども達が戦争に送り込まれたという証拠はまだあがっていないとしている。
報告書は、多くの親がロシア軍に子どもを同行させるよう圧力をかけられたようだとしている。「多くの場合、戦時下の占領軍からの暗黙の脅威は強要されているに等しいので、両親が良く考えて同意できたかどうかは疑わしい」
当然ながら、こうした疑惑をロシアは幾度も否定してきた。『テレグラフ』紙によると、ワシントンのロシア大使館は、報告書に詳述されている主張を 「ばかげたこと」 と否定した。
しかし、NPRがこの件に関する記事で指摘したように、ロシアはウクライナの子ども達がロシアに移送されたことは否定していない。
NPRのデボラ・ラモスによれば、ロシア当局は「この収容施設は戦争で傷ついた孤児を保護するための広範な人道的プロジェクトの一部です」と説明している。
ラモスはこう付け加えた:「ロシアは、何人の子ども達がいるのか、どこに収容されているのかを明らかにしていない」
2月の初めにCNBCは、ウクライナのアンドリー・コスチン検事総長が、2022年のウクライナ侵攻開始以来、ロシア側が6万5000件以上の戦争犯罪を犯したと推定していることを報じた。
さらにCNBCは、コスチン検事総長が、1万4000人以上のウクライナの子ども達がロシアで養子縁組を強要されたことを示す文書があることを報じている。
CNBCによると、コスチン検事総長は2月上旬にワシントンのジョージタウン大学法科大学院でこう講演した:「これは、ウクライナ人のアイデンティティを切り捨てることで、人口動態の変化を狙った直接的な政策です。これらの行為はジェノサイドという犯罪の特徴です」
報告書は、現時点で「ジェノサイド」とは結論づけていない。しかし、ロシアがウクライナの子ども達に行った行為は、民間人の大量強制移送の禁止を明記している1949年のジュネーヴ条約に明らかに違反していることを指摘している。
ナサニエル・レイモンドによると、報告書はロシアが合計37人のウクライナの子ども達を家族のもとに返したとしている。しかし、残念ながら数千人以上がいまだ返還されておらず、ロシアの行為は戦争犯罪にあたる恐れがある。
CNNによると、レイモンドはこう述べている:「そもそも何千人ものウクライナの子ども達を、両親の同意なく勝手に養育しているのだ。これは法律違反であるだけでなく、一般的な良識にも反している」
ネッド・プライス報道官は、2月14日の米国務省の記者会見で、この問題に対する米国の見解を明らかにした:「ロシアによるウクライナの子どもの強制移住、再教育、養子縁組のシステムは、ウクライナのアイデンティティ、歴史、文化を否定し抑圧しようとするロシアの組織的な取り組みです」
さらにプライスはこう続けた:「ロシアの侵略戦争失敗による壊滅的な影響は、今後何世代にもわたって尾を引くことになるでしょう」