戦争は金になるって本当?:世界銀行がウクライナ侵攻後のロシアを「高所得国」に引き上げ
ロシアがウクライナ侵攻を開始した2022年から、西側諸国はロシアに対し経済制裁を実行して戦争を封じ込めようとしている。だがそういった努力にもかかわらず、ロシア経済は堅調を維持しているようだ。
ロシア経済の好況については数値でも確かめられており、最近では世界銀行がロシアの分類を「中高所得国」から「高所得国」に変更しているほどだ。
世界銀行は毎年各国の所得状況を調査・分類しており、その結果は7月1日に発表される。インド紙『エコノミック・タイムズ』が報じている。
世界銀行では、昨年度のひとりあたり国民総所得(GNI)に基づいて計算を行っている。
GNIは米ドル建てで計算され、アトラス法と呼ばれるやり方で標準化される。世界銀行のウェブサイトによるとアトラス法とは「3年間の移動平均および物価調整後の換算係数を用い、為替レートの変動を平滑化する」ものだという。
その上で、経済成長やインフレ率、人口増加率などの要素が考慮され、各国の経済成長が数値化される。
世界銀行ではひとりあたりGNIに基づいて世界各国を4つに分類している。低所得国、中低所得国、中高所得国、高所得国だ。2024-25年度における高所得国の基準はこれまでよりも上昇しており、ひとりあたりGNIが1万4,005ドル以上かどうかとなった。
世界銀行によるとロシアのひとりあたりGNIは2023年に1万4,250ドルとなり、これまでの中高所得国から高所得国入りを果たした。この変化の主要因となったのはウクライナにおける戦争だというのが世銀の見方だ。
世銀はこう発表している:「ロシアにおける経済活動は2023年における軍事関連活動の増加に大きく影響された」
また、世銀によるとロシアでは貿易取引が6.8%増、金融関連が8.7%増、建設業が6.6%増となっており、これも高所得国入りに貢献したとみられている。
世銀はこう述べている:「こういった要素により、ロシアのGDPは名目で10.9%、実質で3.6%増加しており、アトラス法を用いて算出したひとりあたりGNIは11.2%増加した」
『エコノミック・タイムズ』紙も指摘するように、世界銀行のレポートからはいまやウクライナでの戦争は政治的理由だけでなく、経済的理由からも遂行されているということがうかがえる。ウクライナ侵攻はロシア経済を成長させているのだ。
たしかに西側諸国からの経済制裁によってロシアでは以前ほど自由に西側産品を享受できなくなったかもしれないが、そういった品物の多くは地元産の製品で置き換えられている。たとえばマクドナルドのハンバーガーやコカコーラなどがそうだ。日常生活という面から見ると、ロシア国民の生活は制裁によって大きく変化したとはいえない。
実際、政府が兵器購入や志願兵の給与などに多額を費やした結果、市民の日々の生活はむしろ改善しつつある。
ちなみに、世界銀行の分類が変わったのはロシアだけではない。ブルガリアとパラオもそれぞれひとりあたりGNIが1万4,460ドルと1万4,250ドルとなり、高所得国入りを果たしている。
にわかには信じがたいかもしれないが、実はウクライナでの戦争はウクライナ経済にも好影響を与えているようだ。世界銀行によるとウクライナも経済成長を遂げており、中低所得国から中高所得国にランクを上げている。