常温常圧での超伝導? 世間を賑わした新物質「LK-99」とは

LK-99
画期的な新物資?
どんな物質?
超伝導
特定の環境では実現済み
常温常圧が特徴
常温
常圧
利便性が飛躍的に向上
ネットで話題に
研究者からは異論も
期待を煽る表現
否定的な専門家
報告は二本のプレプリントのみ
決定的なテストが行われていない
抵抗減少にも不振な点が
一般的ではない組成
検証の結果、否定される
似た事例は前にも
『ネイチャー』誌が論文を撤回した事例も
どうしてこれほど話題に?
社会が大きく変わる
ぜひ実現を
LK-99

超伝導物質「LK-99」が世間を賑わしている。韓国の研究者が発見したという新たな物質が、本当なら画期的だとしてインターネット上で世界中の注目を浴びているのだ。

画期的な新物資?

この発見を信じる人たちに言わせると、LK-99は画期的な新物質でエネルギー伝送のあり方を根本から変えてしまうのだという。

Image: Hyun-Tak Kim, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

どんな物質?

LK-99は硫酸鉛とリン化銅からなる物質だ。見た目はただの灰色の石のようだが、開発した研究者らによると、非常に高い効率でエネルギーを伝えることができるのだという。

超伝導

超伝導とは、電気を通す物質がある種の条件を満たしたときに獲得し得る性質で、電気抵抗がゼロになるほか、磁場を押し返すようにもなる。通常は非常な低温もしくは高圧が条件となる。

特定の環境では実現済み

すでにいくつかの物質がこの種の性質を持ち得ることが知られており、低温や高圧の環境を作ることでMRIや量子コンピュータなどの技術で実際に活用されている。

常温常圧が特徴

だが、LK-99は低温も高圧も必要なく、常温常圧で超伝導性を獲得するとされた。それこそが世界の注目を浴びた理由だ。

常温

発見者によると、LK-99は室温環境で超伝導になるという。これはつまり、低温環境を用意することなく超伝導性を活用できるということだ。

常圧

さらに、圧力も通常のままで超伝導となるのだという。現時点では、多くの超伝導物質が高圧を条件としている。

利便性が飛躍的に向上

言い換えれば、発見者の主張が正しければ、LK-99は冷却装置も加圧環境も必要なく、非常に利用しやすい超伝導物質だということになるわけだ。

ネットで話題に

こういった特徴が注目を浴び、特にX(旧Twitter)などでセンセーションを呼んだ。この騒ぎを受けて、専門家や愛好家が再現を試みることもあった。

研究者からは異論も

だが、世間の熱狂を横に、騒ぎが始まった直後から、専門家からはLK-99の性質について異論も多く提出された。

期待を煽る表現

『The Verge』によると、開発者らはLK-99を「人類の新時代の夜明けを伝える歴史的発見」と呼んでいるが、これは科学界につきものの誇張された表現と捉えるべきだという。

否定的な専門家

『ニューヨーク・タイムズ』紙はメリーランド大学物性物理学研究所のサンカー・ダス・サルマ博士の言葉を引用し、熱狂するのは時期尚早だという見解を伝えている。

報告は二本のプレプリントのみ

LK-99の発見は二本のプレプリント(他の研究者による査読を経ていない論文)でしか報じられておらず、しかもその二本は同じ著者が書いているにもかかわらず、内容に一致しない点があるのだという。

決定的なテストが行われていない

論文を書いたチームは、超伝導物質を検証するときには誰もが行う温度テストも行なっていないのだという。オックスフォード大学の物性物理学専門家クリス・ガバナー教授が『The Verge』に述べている。

抵抗減少にも不振な点が

ダス・サルマ博士によると、韓国の研究チームが主張する温度では確かにLK-99の電気抵抗は下がったものの、ゼロにはならなかったのだという。『ニューヨーク・タイムズ』が伝えている。

一般的ではない組成

また、LK-99の主要な原料が伝導体として最適な物質である金属ではないという点も、他の研究者からの疑いを呼んでいる。

検証の結果、否定される

そして先日、いくつかの検証実験が行われた結果、LK-99は超伝導物質ではないと結論づけられた。特定の温度で電気抵抗が極端に下がる現象は原料の硫化銅に由来する通常の性質だったという。『ネイチャー』誌が検証の顛末を報じている。

似た事例は前にも

今回の件で研究者が驚いているのは、非専門家の間で話題が広まったということのほうだ。というのも、この種の物質はいままでも何度か存在が主張され、結局は世間に知られるまでもなく否定されてきたからだ。

『ネイチャー』誌が論文を撤回した事例も

たとえば2020年のロチェスター大学の研究チームの場合がそうだ。著名研究誌『ネイチャー』に発表されたが、同誌の編集者がデータに問題があると指摘、結局論文は撤回された。

どうしてこれほど話題に?

だが、この種の物質に期待してしまうのもしかたない面もある。というのも、もし本当に常温常圧での超伝導が実現したら、既存の送電システムやコンピュータの設計、さらには電車のあり方まで大きく変わってしまうだろうからだ。

社会が大きく変わる

発電機で作った電気はその多くが送電中の抵抗で消えてしまっている。超伝導物質があればその悩みも解決するが、いまは限られた環境でしか実現していない。常温常圧での超電導があれば、すべてが根本から変わるのだ。

ぜひ実現を

送電効率はわれわれの生活の根幹に関わってくる。次の「LK-99」にはぜひとも本当であってほしいものだ。

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