軍事品の製造ペースを上げるプーチン政権:国防費は政府支出全体の約30%に
国際世論に支援疲れが広がる中、ウクライナは武器弾薬を同盟国から安定的に入手すべく外交努力を続けている。一方、ロシアは戦争の長期化を見据え、兵器の増産をすすめている。
ロシアはこの2年半で軍需産業の刷新を進めており、開戦時に専門家が予想していたよりも遥かに多く、武器弾薬を生産できるようになっているのだ。
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ロシアが兵器増産に力を入れていることは、同国政府による軍需産業への投資額からも明らかだ。『ガーディアン』紙によれば、ロシアでは国防費が国内総生産(GDP)に占める割合が7.5%に達したと見られているのだ。
また、ロイター通信が2023年10月に伝えたところによれば、2024年の国家予算では国防費の総額が1,090億ドルに上り、政府支出全体の29.4%を占めるという。
ウェブサイト「Defense News」によれば、ロシアのアントン・シルアノフ財務相はこれについて「この予算配分はわれわれの戦勝を確かなものとすることに重点を置いたものです。国防軍や防衛産業、武器弾薬、戦闘機など、前線に必要なもの、勝利に不可欠なものはすべて予算に含まれています」と述べたとのこと。
西側諸国による制裁下で武器弾薬の生産体制を維持するため、ロシア当局はサプライチェーンの再構築に着手。ロシア国内の工場は現在、フル稼働しているという情報もある。
たとえば、ロシア国営のハイテク複合企業「ロステック」を率いるCEOのセルゲイ・チェメゾフ氏は今年1月に、自国のニーズを満たすため同社の工場をフル稼働させているとロシア国営タス通信に明かした。
『モスクワ・タイムズ』紙によれば、チェメゾフ氏は「政府契約を履行するため、ロステックの工場はほぼ24時間体制で稼働しています。従業員たちも負担の増加について理解を示し、自己犠牲の精神を発揮しています」とコメント。
プーチン大統領の会見録によれば、同大統領は2023年11月に軍需企業のトップや政府関係者を一堂に集め、質の高い軍事装備品を生産するよう求めたとされる。
その結果、ロシアでは政府の支出する国防費が経済を支えるという事態になってしまった。『ガーディアン』紙いわく、プーチン大統領は軍需産業の振興によって52万人分の新たな雇用が創出され、合計350万人の暮らしを支えていると得意げだ。
一方、エストニア国防省政策企画局のマルク・リーシク次官は「ロシアの限界がどこにあるのか、まだ見えていません」と発言。
同次官いわく:「一言でいえば、国家予算の3分の1が軍需産業とウクライナ侵攻に充てられています…… しかし、この状況が実社会にいつ影響を及ぼすようになるのかはわかりません。したがって、(戦争が)いつ終わるのか予想するのは容易ではありません」
ロシアの継戦能力を見積もる上で重要な指標とされているのが砲弾の製造ペースだ。『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材に応じたある西側当局者によれば、ロシアの砲弾製造ペースは2023年9月時点で年間200万発程度と見られていたようだ。
同紙はこの数字について、ウクライナ侵攻以前に西側情報機関が考えていた製造力の2倍であり、今後数年間でさらに増強される見込みだと指摘。
また、『ガーディアン』紙によれば、専門家たちはロシアの砲弾製造ペースについて、今後1~2年で年間400万発に達する可能性があると見ており、ウクライナにとって不利な状況を生むことになるだろう。
前出のリーシク次官は『ガーディアン』紙に対し、ロシアの兵器製造力について「私たちの予想を遥かに上回るものです」とコメント。西側諸国が支援をためらい続ければ、ウクライナが難しい状況に追い込まれるのは間違いない。
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こうした状況を前に、米国は今年4月、ついにウクライナへの追加軍事支援予算を成立させ、10億ドル相当の支援を行うことを発表した。ロイター通信は支援には地対空ミサイルや対戦車ミサイルが含まれると伝えた。
そして今月、バイデン米大統領は任期中最後となるドイツ訪問を行い、ベルリンで英独仏首脳と会談を行った。この中で各国首脳はウクライナ支援継続について合意したと各国メディアが伝えている。