原因不明の急性肝炎、新型コロナウイルスとの関連性は?
最近、重症の小児性急性肝炎が欧米各国で報告されている。イスラエルの科学者チームによる最新の研究では、子供たちが発症している急性肝炎と新型コロナウイルスの後遺症との関連性が推測されている。
しかし、米放送局NBCのニュース番組「トゥデイショー」によれば、研究者たちは、新型コロナウイルスが謎の急性肝炎の要因であるとするには時期尚早であるとしている。
世界保健機関は36カ国で実施した調査結果を発表、2022年6月時点で謎の急性肝炎は少なくとも700例が報告されている。
世界保健機関は4月、小児に原因不明の重症急性肝炎が起こる例が複数の国で報告されたとして、警告を発している。
しかし、とくに懸念されていることはこの肝炎がきわめて深刻であり、患者に対し肝移植が必要になる場合があるということだ。
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この原因不明の肝炎の影響を最も受けやすいのは誰だろう?それは、生後1ヶ月から16歳までの子供たちだ。
6月の「フォーブス」誌によれば、イギリスだけで250件以上の症例が報告されている。感染者数が多いほかの国はスペイン、イスラエル、アメリカ、カナダ、デンマーク、アイルランド、そして日本などだ。
世界保健機関は、発症例の10%で肝移植が必要とされていると警告を発している。これは通常の肝炎とは異なるようなのだ。
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この肝炎が新型コロナウイルスのワクチンと何らかの関係があるのではないかという噂に対し、世界保健機関はこれを否定している。
こうした噂が否定される際の根拠の一つは、一般的に大人と比べて小児のワクチン接種率は低い、というものである。
世界保健機構と科学者たちはまだ原因を解明できずにいるが、一部の専門家は、新型のアデノウイルスが新種の肝炎を生み出した可能性について言及を行っている。
これまでに、多くの感染者からF41と呼ばれるアデノウイルスの亜型が見つかっている。このアデノウイルスの亜型は以前にも重篤な症状を引き起こしたことがあり、医師たちはこの発見に困惑を隠せずにいる。
アデノウイルスの新しい亜型が急増した、あるいは以前から存在するアデノウイルスが強い反応を示したという可能性もある。また、パンデミックによる自粛期間を通じさまざまなウイルスから隔離された結果、大人はもちろん子供の免疫力が低下したという見方もある。
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BBCの報道によれば、英国の国家健康安全保障局は、自粛により成長期の子供たちがウイルスと接触する機会が全般的に減り、それによりアデノウイルスが影響を及ぼすようになったという懸念を発表している。
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最も多くの症例が報告されている国のひとつであるイスラエルでは、新型コロナウイルスとこの攻撃的な新型肝炎との間に関連性があるのではないかとする医療関係者もいる。
小児科医のヤエル・モゼール=グラスバーグ(Yael Mozer-Glassberg)氏はイスラエルの「ハアレツ」誌に対し、「我々が確認した全症例に共通していたのは、感染発覚の約3ヶ月半前にコロナウイルスに感染していたことです」と述べている。
これまでのところ、新型コロナウイルスと小児肝炎の関連性ははっきりとは証明されていない。しかし、コロナウイルスが肺だけではなく心臓や脳などに後遺症を残すことは忘れてはならない。
大切なのは、肝炎の兆候が現れた場合に備え、子どもたちから目を離さないようにすることだ。では、どんな症状があるのだろう?
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全身の倦怠感、嘔吐、下痢、そして何より、皮膚が黄色くなる黄疸がよく知られている。とくに黄疸は、肝臓に何か異常があるときにみられる症状だ。いずれかの症状が見られた場合は医師の診察を受ける方がいいだろう。
イギリスの医療システムは、子供たちに起こる肝炎は、すべてのケースに当てはまるわけではないものの、胃腸に急性の異変をきたすことがあると指摘。子供たちの体調異常に気づいたら、注意すべき重要な点の一つといえる。
肝炎への感染は、主に経口、そして排せつ物などから発生する。感染を予防するためには、手洗いなどで衛生を保つことが大切だ。
この記事が書かれている時点で、こうした変種の肝炎に関する死亡例の報告は1件だけにとどまっている。また、肝移植が必要になる場合もあるが、通常、肝炎は移植に至る前の投薬治療等で回復できることが多い。
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現在も、原因不明の小児肝炎の患者が世界各国で数を増している。各国の症例の間に明確な関連性はまだ特定されていないが、いずれにせよ予防と用心をするに越したことはない。