富裕層が選ぶ移住先は?
富裕層の動きを追跡している「ヘンリー・グローバル・シチズン・リポート」によると、2023年には予測値で12万人の富裕層が別の国に移住したという。
移住する大富豪の数は、2024年には12万8,000人に達すると予想されている。
この動向は世界情勢との関連から大まかに理解できるだろう。移住を決める富裕層は、ロシアやウクライナといった戦争を行っている国や、西側諸国との緊張関係が高まりつつある中国などに見切りをつける場合が多いのだ。
米シンクタンク「移民政策研究所(Migration Policy Institute)」は英国国防省のデータを元に、2022年にロシアを離れた富裕層の数はとくに多く、その数は1万5,000人にのぼったと指摘した。
そのほか富裕層が流出している上位10か国には、中国、インド、ブラジル、メキシコ、そして英国といった意外な国も入っている。
香港の新聞『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』が英国のケースを大きく取り上げている。英国はEU離脱とともに富裕層の流出が始まり、歯止めがかからない状態だ。
ブレクジット以前の英国は、新たな居住先を求める富裕層にとって人気のある国の一つだった。現在はその流れが反対になっているのである。
イスラエルへの流入も鈍っている。2022年には1,100人の純増で富裕層の移住先トップ5に入っていた同国は、2023年には600人の流入にとどまりトップ10から漏れた。イスラエルとハマスの戦闘はここにどのように絡んでくるのだろうか?
富裕層と聞けば、ニューヨークをはじめとするアメリカの大都市に住んでいるイメージがあるかもしれない。しかし、「ブルームバーグ」が指摘するように、アメリカへの富裕層の流入はコロナ禍以前の約80パーセントに縮小している。
では、移住先として富裕層に最も選ばれている国はいったいどこだろう?
富裕層は移住先として、その手続きの簡便さもさることながら、彼らの生活をより安泰なものにしてくれるような法制度の敷かれた国を好んで選ぶのだと、ウェブサイト「Visual Capitalist」は論じている。
スイスはおそらくそういった観点から選ばれているのだろう。スイスへの富裕層の流入は今年1,800人(純増)で世界第5位になっている。
移住先として4番目にランクインしているのは、やや減っているとは言っても、やはりアメリカ合衆国だ。2023年には予測値で2,100人の富裕層が流入している。
差し引きすると3,200人の富豪が2023年にシンガポールに引っ越してきたことになる。シンガポールは税率が低いことで知られている。
アラブ首長国連邦が富裕層の移住先として今年第2位となっている。4,500人の富豪が流入したとされ、『フォーブス』誌によればそのかなりの部分がロシア系という。
第1位はオーストラリア。2023年には5,200人の富裕層が流入した。『ガーディアン』紙によると、中国、インド、英国からの移住が目立っている。
ちなみに日本からは富裕層が離れつつある。2022年には100人、2023年には予測値で300人の富裕層が国外に移住した。