学校における子供たちの携帯電話の使用を禁止したらどうなる?:欧州からの実例報告
子どもたちが携帯電話でメッセージを受信してから再び集中するまでには、平均して約20分の時間を要するという。これは、ユネスコが発行している2023年のグローバルエデュケーションモニタリングレポートの報告である。このような統計を考えれば、携帯電話を全面禁止する学校が増えているのも不思議ではない。
4年前に校内での携帯電話の使用を禁止した、オランダのカルヴァン中学校のヤン・バッカー校長は英紙『ガーディアン』に、「時代遅れの学校と言われた時期がありました」と語った。
写真:Screenshot from Calvijn College website.
スマートフォンなどの使用により運動場に行かず教室に残るようになった生徒たちを見た学校側は、生徒らからの反対を押し切り携帯電話の使用を禁止。今ではこの取り組みは、むしろ時代を先取りした措置とみられている。
写真:Screenshot from Calvijn College website.
「生徒たちは失っていたものを取り戻しました。携帯電話を使う代わりに一緒に遊んだり、会話をしたりするようになりました。授業の中断も大幅に減りました」と同校の校長は語っている。
写真:Screenshot from Calvijn College website.
カルヴァン中学校に刺激を受けたオランダの他の高校も、これに倣う準備を進めている。近隣のヨーロッパ諸国を見てみると、フランスでは200校が携帯電話の禁止を実験的に実施しており、スペインでもカタルーニャを含む9つの地域で、学校での使用を禁じている。
アメリカでは今夏、カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムが教室でのスマートフォンの禁止を呼びかけ、議員らと協力してこの案を実現すると述べた。ニューヨーク州知事のキャシー・ホークルも、同様の政策を推進している。
オランダのラドバウド大学研究チームは、携帯電話の禁止にどれぐらい効果があるか確かめるために、数百人の生徒と保護者、そして数十人の教師を対象に調査を実施した。
調査対象となった生徒の約20%は、スマートフォンがない方が集中しやすいと答え、多くの教師が生徒の集中力が高まったと回答した。
それに加え、画面越しではない直接的なコミュニケーションが増え、ネット上でのいじめが大幅に減ったと、生徒たちは語っている。
イギリスのUTCプリマス校では、5年前から校内での携帯電話の使用を禁止し、この政策は功を奏しているという。
写真:Screenshot from UTC Plymouth website.
同校のジョー・ウェア校長によると、生徒たちの成績は上がり、コミュニケーションスキルも向上。その結果、就職先でも活躍しているという。
写真:Screenshot from UTC Plymouth website.
「社交の場で携帯電話や電子機器を使っていると、生徒たちはアイコンタクトを身につける機会を失ってしまいます」と同校長は英「BBC」に語っている。
写真:Screenshot from UTC Plymouth website.
エクセター大学で心理学を専門とするヘイゼル・マイクロフト博士は同放送局に対し、子供たちは携帯電話を通じて「常にドーパミンを放出している」と語った。
「携帯電話やショート動画が、脳の化学物質に影響を与えることが明らかになっています」と同氏は述べ、それにより集中力が低下すると説明した。
「子供から携帯電話を取り上げると、イライラしたり怒ったり、常に携帯電話をチェックしたがったりしますよね。これは、子供が携帯電話に常に依存しているということです」と同氏は語った。
2024年2月、イギリス政府は携帯電話禁止を推奨する勧告を出した。英「BBC」によると、2022年にOECDが実施した学習到達度調査では、イギリスの学校の71.8%が「校内での携帯電話の使用は基本的に認めていない」と回答。しかし、別の調査によれば、全面的な禁止にまで取り組んでいる学校はわずか16%だった。
アメリカ国立医学図書館が実施した2022年の調査によれば、イギリスでは12〜15歳の83%がスマートフォンを所有しており、12〜15歳の最大64%が3台以上のデバイスを所有しているという。