太陽光発電を宇宙で:欧州で進む「ソラリス計画」とは?

迫るエネルギー危機
天然ガス供給停止のおそれ
新たな計画
欧州委員会委員長が懸念表明
二酸化炭素排出量を減らすには
欧州宇宙機関(ESA)
実現可能?
どのような仕組み
テクノロジー
懐疑的なイーロン・マスク
宇宙に設置する意義は?
メリット
カーボンフリーを目指して
現存の技術
大規模な構造物が必要
静止軌道
エネルギー自給
実現にかかる期間は?
迫るエネルギー危機

ロシアによるウクライナ侵攻によってさらなるエネルギー危機を迎えるヨーロッパ。電気代が急騰する中、各国で記録的なインフレが発生しているのだ。しかも、冬の訪れとともに電力消費の増加が見込まれるため、各国政府や家庭、企業の間でも懸念が広がっている。

 

天然ガス供給停止のおそれ

ロシアとヨーロッパ諸国の対立は解決の兆しが見えない状態が続いている。そんな中、ロシアは欧州連合(EU)の経済制裁に対抗するため、天然ガスの供給を停止すると発表。ヨーロッパでは、寒い冬を乗り切るために必要な暖房を賄うことができない可能性が出てきている。

 

新たな計画

こういった事態に対応するため、ヨーロッパでは宇宙にクリーンエネルギー源を見出す可能性を探る動きが始まっている。その名もソラリス(SOLARIS)計画だ。写真はフランス、トゥールーズで宇宙戦略に関する会談に参加する欧州各国の閣僚たち(2022年)。

 

欧州委員会委員長が懸念表明

ドイチェ・ヴェレ放送によれば、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「エネルギー危機は深刻化しており、新たな局面を迎えている」と懸念を表明。そして「ヨーロッパが一体となって対応しなければ、家庭や企業のエネルギーコストを低減し、今冬あるいは来年冬のエネルギーを確保することはできない」と強調した。

二酸化炭素排出量を減らすには

しかし、ソラリス計画が急務となっているのは戦争だけが原因ではない。気候変動に対する懸念が深まる中、石油や石炭といった化石燃料の使用が問題視されていることも理由の一つだ。そのため、各国の当局はクリーンエネルギーの開発を推し進め、二酸化炭素排出量の削減を図っている。

写真:Unsplash/arteum ro

欧州宇宙機関(ESA)

このような中、欧州宇宙機関(ESA)は太陽エネルギーを地球にもたらすことを目的としたソラリス(SOLARIS)計画を発表した。

実現可能?

ソラリス計画の実現可能性について疑問の声も挙がっているが、NASA の元物理学者で宇宙太陽光発電の専門家でもあるジョン・マンキンス氏によれば、実現の見込みはあるという。

写真:Unsplash/NASA

どのような仕組み

『フィナンシャル・タイムズ』とのインタビューで、この方法の成功を確信していると述べたマンキンス氏。その仕組みについて「宇宙で太陽光発電を行い、地球にワイヤレス伝送するわけです」と説明を行った。

写真:Unsplash/nishaan ahmed

テクノロジー

同氏によれば、この計画で用いられる技術は次のようなものだという:「宇宙でも地上の場合と同じように太陽電池パネルで太陽光を電力に変換します。続いてこれをマイクロ波に変換し、"コヒーレント光"として地上の目的地に送ります。ここで、マイクロ波は再び電力に変換されるわけです」

懐疑的なイーロン・マスク

しかし、地上に届く太陽光だけでニーズを賄うことができるのではないかと考える人も少なくない。実際、ブラジルの科学誌『Superinteressante』によると、航空宇宙メーカー「スペースX」を率いるイーロン・マスクは「地上にソーラーパネルを設置する方がよい」と主張しているようだ。

宇宙に設置する意義は?

しかし、大気圏上層では太陽光の強度が地上のおよそ10倍あるほか、天候の影響を受けることもない。

メリット

そのため、衛星を十分に高い軌道に打ち上げれば、太陽エネルギーを常時補足して地上の受信基地に伝送することができるのだ。

カーボンフリーを目指して

欧州宇宙機関(ESA)の公式ウェブサイトによれば、同機関はすでにソラリス計画の実現に必要な技術や知識を備えているという。実現すれば、クリーンで安全なエネルギーをヨーロッパおよび全世界に供給するという、有意義な成果を挙げることになるだろう。

 

現存の技術

ソラリス計画のエネルギー伝送は、衛星軌道上から信号を地上に送る衛星放送の仕組みと基本的に同じものだ。ただし、ソラリス計画で使用される衛星は遥かに大規模なものになるという。

 

大規模な構造物が必要

つまり、巨大な構造物を備えた衛星を打ち上げ、地上に大規模な受信基地を建設しなくてはならないというわけだ。

写真:Unsplash/zbynek burival

静止軌道

欧州宇宙機関によれば、太陽光発電用の静止衛星は全長1キロメートルを超える可能性があり、地上の受信基地はその10倍の規模が必要だという。

 

エネルギー自給

こういった困難が付きまとうとはいえ、計画のリーダーたちは楽観的だ。欧州宇宙機関のジョセフ・アシュバッハー長官は、宇宙での太陽光発電がヨーロッパのカーボンニュートラルとエネルギー自給の実現に向けた第一歩になると述べている。

 

実現にかかる期間は?

基礎技術はすでにあるとはいえ、ソラリス計画はまだ構想段階だ。では、必要な技術を開発し、設備を完成させるにはどのくらい時間がかかるのだろうか?おそらく、10年以上かかると見て間違いないだろう。とはいえ、これによってクリーンで安全なエネルギーを自給できるようになるのであれば、ヨーロッパにとって待つ価値はあるはずだ。

写真:Unsplash/noah buscher

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