地雷や密輸品、病気まで探知する「ヒーローネズミ」とは?
ニオイを頼りに爆発物や麻薬を発見したり、病気を特定したりといった仕事については探知犬が有名だが、最近、新たなライバルが登場しつつある。アフリカオニネズミだ。このネズミにさまざまな探知能力を仕込むため、訓練施設を立ち上げたNGOもあるほどだ。
アフリカオニネズミはアフリカ大陸原産で、サハラ以南の地域に広く生息している。名前のとおりネズミの仲間ではあるが、ハツカネズミをはじめとする日本で身近なネズミたちとは遺伝的にすこし離れているそうだ。
むしろ、ハムスターと共通する特徴として、大きな頬袋(pouch)を持っていることから、英語では「Giant pouched rat」と呼ばれている。
アフリカオニネズミは少なくとも4つの亜種が知られており、よく人になつくため、ペットとして飼う人も少なくない。
さらに、優れた嗅覚を持つ上、訓練も容易であることから、爆発物や病気の探知といった任務を与えられるようになっているのだ。
米公共放送サービス(PBS)によれば、アフリカオニネズミを探知ネズミとして育て上げる事業を展開しているのはベルギーのNGO「APOPO」だ。同団体はタンザニアにある研究所で、10年間にわたって探知ネズミの研究を続けてきたという。
同団体はまず、紛争が終結しても地中に残り続ける地雷をアフリカオニネズミの嗅覚によって見つけ出すという事業をスタートし、大成功を収めた。
PBSによれば、カンボジアに派遣された地雷探知ネズミたちは対人地雷およそ500個、不発弾350発あまりを発見したそうだ。
ベトナム戦争とそれに続く内戦によって、カンボジア西部には大量の不発弾と地雷が残されており、住民の命を脅かす問題となっている。
この活躍によって、「APOPO」のアフリカオニネズミたちは「ヒーローネズミ」と呼ばれるようになった。しかし、ネズミたちの活躍の場は地雷撤去だけではない。『ガーディアン』紙によれば、同団体はニオイで病気を突き止めるための訓練をアフリカオニネズミに施しているそうだ。
実際、「APOPO」が拠点を置くナイジェリアやモザンビークといったアフリカ諸国では、ネズミたちが結核菌の検知において威力を発揮しているのだ。
さらに、『ガーディアン』紙によれば、「APOPO」はアフリカオニネズミが密輸される野生動物を効率的に発見することができるかどうかテストするため、新たな研究プログラムを開始したとのこと。
同紙いわく、「APOPO」は著名な自然保護活動家の名前を冠したネズミ8匹に訓練を施し、ニオイの強い物質やおとりなどが一緒に仕込まている場合でも、隠された野生動物やその角などを探知できるようにしたという。
インターポールが発表した昨年のデータによれば、野生動物密売の市場規模は200億ドルにも上ることから、ネズミたちの活躍によってこれを阻止することが期待されている。
アフリカオニネズミたちはサイの角や象牙、セザンコウのうろこのほか、希少木材をかぎ分けることができるようになったほか、訓練から8ヵ月経っても象牙以外はすべて探知できたという。
探知ネズミたちはボタン付きのベストを着用しており、密輸品を発見するとこのボタンを押して人間に知らせる仕組みになっている。もちろん、密輸品を発見したネズミにはごほうびが与えられる。