この世から姿を消した動物たち:ドードーからメキシコハイイログマまで17種
絶滅した動物というと、恐竜が暮らしていた太古の時代をイメージするかもしれない。けれども、進化や自然の摂理、あるいは人類の活動によって、近代になって姿を消してしまった動物たちも少なくないのだ。
現在、地球上で暮らす動物の実に20%が絶滅の危機に瀕している。そこで、今回は地上からすでに姿を消してしまった動物たちについて見てゆくことにしよう。
今日私たちが目にするサイによく似ているが、毛並みが印象的なケブカサイ。ヨーロッパおよび北アジアに分布していたとされ、スペイン中部やイングランド南部、シベリア南部からモンゴルにかけての広い範囲で化石が発見されている。
最終氷期を生き延びたケブカサイだが、今度は人類の狩猟に晒されてしまうことに。さらに、氷河期が終わり温暖化したことや感染症の爆発的な拡大などが絶滅の原因だと見られているが、詳しい経緯は謎に包まれている。
恐竜を別にすれば、絶滅してしまった動物界のアイドルともいえるドードー。風変わりな姿だが大型で飛べないこの鳥は、18世紀の終わり頃に地上から姿を消してしまった。
ドードーが暮らしていたのはインド洋に浮かぶモーリシャス島。マダガスカル島の近くだ。絶滅の背景には、この鳥を食用として乱獲した人間の存在がある。さらに、人間が持ち込んだ家畜がドードーを捕食したことも、個体数減少に拍車をかけた。
フクロオオカミの名でも知られるタスマニアタイガー。オーストラリアおよびニューギニア原産で、専門家によればタスマニアデビルの遠戚にあたるという。
ユニークな縞模様を持つこの有袋類は人間による狩猟で絶滅してしまったとされるが、1960年代になっても目撃情報が報告されており、どこかで人知れず生き延びている個体がいるはずだと主張する人々もいる。しかし、その存在を裏付けるような決定的な証拠は見つかっていない。
ケブカサイの絶滅は遥か昔の出来事だが、最近ではクロサイの亜種「西アフリカ・クロサイ」が地上から姿を消してしまった。ニシクロサイとも呼ばれるこのサイについては、2011年に公式な絶滅宣言が行われている。
1930年代にはすでに西アフリカ・クロサイは禁猟の対象となっていたが、身勝手な狩猟や密猟がやむことはなく絶滅に至ってしまった。
半分ウマ、半分シマウマのような奇妙な姿をしたクアッガもまた人類による乱獲の犠牲となってしまった。アフリカ南部に暮らすこの動物の美しい模様が、密猟者たちを惹きつけてしまったのだ。
最後の1頭はアムステルダムの動物園で暮らしていたが1880年代に死亡、地上から姿を消してしまった。
写真:Frederick York (1903)、Biodiversity Heritage Libraryより
今日のヘラジカはアラスカやカナダ、ヨーロッパ北部に分布しているが、かつてはアイルランドでも暮らしていた。ギガンテウスオオツノジカと呼ばれるこのシカは、現生種のヘラジカとよく似た姿をしているが遥かに大きかったようだ。
専門家によれば、ギガンテウスオオツノジカの体高は2メートルあまり、3.5メートルを超える巨大な枝角を持っていたという。気候変動や狩猟圧が原因でおよそ7,700年前に絶滅してしまったと見られている。
写真:Hutchinson, H.N., public domain
体長8~9メートルもあったとされる海生哺乳類。重さは4~10トンにも上ったという。
ステラーカイギュウは台湾からニューギニアにかけての海域に棲息していたが、乱獲により1768年に絶滅してしまった。
写真:By Emőke Dénes - kindly granted by the author, wiki commons https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16388276
甲羅の取引あるいは食肉用として高値が付くことから狩猟のターゲットとなり、地上から姿を消してしまったピンタゾウガメ。ピンタ島で暮らす「ロンサム・ジョージ」が最後の個体だったと考えられており、2012年6月24日の死亡をもって絶滅に至ったと見られていた。ところが……
2019年、ガラパゴス諸島に位置するフェルナンディナ島でメスのピンタゾウガメが目撃されたという報告が飛び込んできたのだ。しかし、この種を復活させることができるかどうかは今のところ不明だ。
その他のトラと大きな違いはないが、インドネシアのジャワ島の固有種だったジャワトラ。
ジャワ島の山岳地帯で細々と生き延びていたジャワトラだったが、農地の拡大にともない棲息地が縮小。これによって個体数は減り続け、1994年についに姿を消してしまった。
コスタリカにあるモンテベルデ自然保護区の熱帯雲霧林で、水たまりを棲みかとするオレンジヒキガエル。最後に目撃されたのは1989年で、専門家によれば気候変動の犠牲になったとされている。
地球温暖化で、この両生類の生活や繁殖に必要な湿気が失われてしまったのだ。また、同地の生態系の一部として大気中に水蒸気を供給していた池も消滅してしまっている。
今日ではカナダの象徴ともなっているハイイログマ。しかし、かつては北米大陸の他の地域にも分布しており、メキシコでもその姿を見ることができたのだ。
1964年に公式な絶滅宣言が出されたハイイログマだが、60年代の初めにはまだ30頭あまりが生き残っていたという。絶滅に至った原因は、地元の農民たちによる狩猟だ。家畜を襲う害獣として駆除を続けた結果、ついに姿を消してしまったのだ。
写真:Wikimedia Commons
見逃されがちだが、海や川にも多くの動物が生息している。アラバマ州のモービル川に棲息し、川底の水を濾過するという役割を果たしていたアラバマランプヌマガイもそのひとつ。
この貝がアラバマ州から姿を消したのは2006年頃。原因は河川中に有害な物質が放流されたことで、地域住民の間にも健康被害が広がったという。
専門家によれば1981年に絶滅したとされるカモノハシガエル。オーストラリア原産のこのカエルは胃の中で子育てをするというかなり風変わりな習性を持っていた。さらに、潰瘍の治療法を確立する研究にも利用されていたという。
このカエルのメスはなんと受精卵を飲み込み、胃の中で孵化させるのだ。子供たちは母ガエルの胃の中で成長し、一人前のカエルになって口から出てくる。
写真:Benjamin Healley, Wikimedia Commons
アニメ映画『ブルー 初めての空へ』(2011年)を観た方ならおなじみのアオコンゴウインコ。主人公のブルーとジュエルがこの鳥なのだ。映画の中でも、アオコンゴウインコが絶滅の危機に瀕していることが触れられていたが……
ブラジルの固有種だったアオコンゴウインコはその後、野生化での絶滅が宣言されてしまうことに。原因は棲息地の森林伐採や飼育・販売目的での乱獲だという。
実は、かなり最近までカリブ海でもアザラシを目にすることができた。南アメリカ北部の海岸から中央アメリカ東部、メキシコ湾に至る海域でカリブモンクアザラシが暮らしていたのだ。
しかし、個体数は徐々に減少。ジャマイカとニカラグアにまたがるセラニャ礁に暮らすのみとなっていた1952年に同地で最後の目撃報告がなされている。絶滅の原因は、油を取るための乱獲や漁業関係者による駆除だった。
写真:New York Zoological Society
コートジボワールからガーナにかけて分布していたアカコロブスの亜種「ミスウォルドロンズ・アカコロブス」。しかし、21世紀初めには絶滅してしまったと見られている。
この種のアカコロブスは木々を伝って高所から降りずに移動して暮らしていた。ところが、棲息地の森林伐採によって群れが減少した上、捕食者の脅威にも晒されることに。さらに、近親交配を繰り返したことで種としても弱体化が進み、地上から姿を消すに至ってしまった。
地球上ではまだ数種類のエミューが暮らしている。しかし、キング島(オーストラリア)の固有種だったクロエミューを私たちが目にすることはもうない。
この島に人々の入植がはじまると個体数を減らし始め、19世紀にはついに絶滅してしまった。