地球をとりまく謎の電場が実測される:NASAの報告
NASAの観測ロケットを使った研究により、地球の周囲にはこれまで知られていなかった「電場」が存在することが明らかになった。
CNN放送によれば、この電場は大気圏の外側およそ250キロメートルの位置にあり、地球の周囲で発生する天文現象を理解する上で重要な意味を持つという。
この電場は正負の極性をもっており、電子やイオンなど電荷をもつ粒子に作用する。
研究者たちはこの電場について、地球が大気を保つ上で重要な役割を果たしているものと見ている。
地球には電場以外にも重力場と磁場があり、前者は大気を地球に繋ぎ止め、後者は大気が太陽風によって吹き飛ばされないよう防ぐ役割を果たしている。
ドイチェ・ヴェレ放送によれば、この研究を率いたのはNASAゴダード宇宙飛行センターに所属するグリン・コリンソン博士で、その成果はサイエンス誌『ネイチャー』に掲載されたという。
地球の南北極からイオンが流出する現象は以前から知られており、「極風(Polar wind)」と呼ばれていたが、そのメカニズムは謎に包まれていた。
コリンソン博士はBBC放送に対し、「宇宙船は南北極の上空を飛行するたびに、超音速で飛ぶ粒子の流れの影響を受けていました」と説明。
同博士はさらに「けれども、以前は(観測に)必要な技術がなかったため、これを実測することはできませんでした」と付け加えた。
しかし、2022年5月にノルウェー領スヴールバル諸島から宇宙船「エンデュランス」が打ち上げられ、計器を利用した観測が可能となったのだ。
その結果、極風の付近で0.55ボルトの電位差が観測されることとなった。
0.55ボルトというと非常に小さいように思えるかもしれないが、コリンソン博士いわく「極風の流出をちょうど説明することができる大きさ」とのこと。
ドイチェ・ヴェレ放送によれば、この電場は正負の極性をもつため、両極性電場と呼ばれているという。そもそも、地球の付近を漂うイオンは比較的重いため地球に引き込まれやすが、軽い電子は宇宙空間に飛散する傾向にある。
しかし、コリンソン博士によれば、両極性電場が「天を持ち上げる」ような働きをするため、大気のバランスが保たれるのだという。
同博士はさらに、地球以外の惑星であっても大気があるならば、同様の両極性電場を持っているはずだとした。
コリンソン博士いわく:「ようやく実測されたことで、(両極性電場が)地球をはじめとする惑星の形成に、どのような形で寄与したのか研究できるようになりました」